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6話
「これ、めっちゃうまい!」
「ん、ありがとう」
俺は出来立てのハンバーグを井波に振る舞った。井波が家に帰りたくない理由を知りたい。いつも笑顔の井波が落ち込んでるのを見て「助けてやりたい」と素直に思った。
「なぁ、井波。お前・・・、い、家で」
「何もないよ、何も」
「家で何かあるのか?」そう聞こうと思ったら遮られた。俺の自称親友の癖になんでだよ。そんな泣きそうな顔して「何もない」って言われたって信じられるわけないだろ。何で隠そうとするんだよ・・・。
「そんな顔して何もないって言われても説得力無いんだけど・・・。俺は伊達にお前の親友やってるわけじゃねぇよ」
「っ・・・、何もないって言ってるだろ!」
初めてだ、井波が怒ったのは。そんなに言えないことなんだろうか。
「ごめん、井波。悪かった」
「いいよ」
窓の外を見ると月が輝いていた。
「親友だからって何でも言えるわけないだろ」
井波の呟きが俺に届くことはなかった。