3話
「あんたが悪いんでしょ。真冬がいじめられてるのは」
「お前が悪いんだろ。俺に責任を押し付けるな」
両親の怒鳴り声が聞こえる中、俺は自分の部屋で小さくなっている。
「あんたって人は毎日毎日、遅くまで帰ってこないで。私や、真冬のことなんてどうでもいいと思ってるの?」
「そんなこと言ってないだろ!俺は、毎日お前たちを養うために働いてるのに。そんなこと言われる筋合いない」
「ならなんでこんなに酒臭いの!どうせ飲みに行ってたんでしょ」
「お前は・・・。少しは静かにしろ」
ドンッ。鈍い音がした。争う声はぴたりと止んだ。俺は母さんが父さんに殴られたんだと悟った。次の日の朝、母さんの顔を見るとあざが出来ていて・・・。
「っ。またあの時の夢だ・・・」
俺が中学校三年生のとき、親はよく喧嘩していた。今、考えてみると離婚寸前だったのかもしれない。俺は親が喧嘩しているのが嫌で仕方がなかった。それで、志望校に合格することを条件に一人暮らしをすることを認めてもらった。両親は昔ほど仲は悪くないみたいだが、それでも正月に家に帰ると、たまに喧嘩しているのを見る。一人暮らしで良かった、と改めて思う瞬間だ。それに一人暮らしをして、素敵な趣味にも出会えたし。
「ふぁぁ。眠。ん、えっ!もうこんな時間かよ」
時計を見ると針は六時を指していた。
「寝すぎた・・・。飯作んないと」
重い頭を動かしながら、俺は台所へと向かった。