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ヒーローにも色々、ある。
だが、多くのヒーローは子供の憧れだ!
しかし、全てヒーローがそんな憧れのヒーローとは限らない……
ここにも一人、そんなヒーローが……
わたし、仙田 雅【せんだ ただし】は何を隠そう、
悪の秘密結社から世界を護る正義の味方のヒーローだ!
だが、他の正義の味方のヒーローとは違って……
「貴方! 朝よ!…… 起きて! 会社に遅刻するわよ!……」
という声と共に毎日、目を覚ます、ごく普通の妻子のある
サラリーマンなのだ。
わたしが正義の味方のヒーローというのは周りの人を含め、
妻にも内緒のことなのだ。
今日もわたしはサラリーマンと正義の味方のヒーローを両立すべく、
重い身体を布団から這い出て、起きるのだった。
雅は重い身体を引きずりながら、キッチン前のテーブルに寝ぼけ眼で座ると
慌しく、家事をこなしている雅の妻【麗奈】が
「貴方、そんなにゆっくりして良いの? 会社に遅刻するわよ!……」
苛立ちながら、雅を叱った。
「ああぁ……」
雅は寝癖の髪をかきながら、そう言うと冷めかけている朝食を
胃の中に流し込むといつもの出勤姿に着替えると住まいである
マンションの玄関と出た。
会社に向かう道筋で雅は自分が突然、正義の味方のヒーローになった事を
ぼんやりと思い出していた。
雅が突然、ヒーローとなった日も雅はいつもと変わらず、
会社への道を歩いていた。
すると、突然、雅が歩いている周りが濃い霧に包まれたかと思うと
雅は背広に身を包んだ少年の前にいた。
その少年は雅のことを見上げるように見ながら
「今日から貴方はこの世界を 悪い者らから護る正義の味方です!」
雅に話しかけてきた。
『は?…… 近所の悪ガキの悪戯か?……』
雅がそう思いながら
「僕、良い子だから、そんなの事はよそでやろうね……」
背広の少年に言うと
「悪戯? しっけいな…… 後で後悔をしますよ!」
背広の少年は怒るとその姿を雅の前から消え去った。
それと同時に濃い霧も雅の周囲から消え去った。
『何だったんだ? 今のは?……』
雅は今、自分が体験したことを不思議に思いながらも
「まあ良いか……」
再び、会社に向かって、歩き始めると いつものバス停の近くの裏路地へと続く
細い路地に怪しく蠢く人らがいた。
『な、なんだ?……』
雅が恐る恐る、その怪しく蠢く人らを覗きこむように見るとその怪しげな人らと
雅は目が合ってしまった。
「あれ? 見つかっちゃいました?」
雅と目が合った怪しげな人らのリーダーらしき男は雅にそう言い、
他の怪しげな人らと共に雅に近付いてきた。




