9話 ~本書~ 刀の過去と繋がる想い
良いことがあると悪いこともあるのかもしれない
~ダールドノース山脈、クリールド~〔カイside〕
時間は昼過ぎになった
俺たちは今ガイアさんの作った昼食を食べていた
カイ「さっきの刀なんですけど」
ガイア「あれがどうかしたか?」
思い切って気になってたことを聞いてみる
カイ「あの刀…何処で?」
ガイア「あれは…そうだな、30年ぐらい前か…」
カイ「それで?」
ガイア「ある知り合いに渡されたんだよ」
カイ「どんな人ですか?」
ガイア「そうだな…あれはまだ俺が学生だった時だな」
『異世界30年前』
~スターリア王国 スターリア学園~〔ガイアside〕
俺がこの学園に入学して6年が経つ
6年制のこの学園、楽しいことも辛いこともあったな
今日は卒業式。
ちょっとしたことで知り合った、女の子が目の前に立っていた
こいつと知り合ったのもなんだろうな
偶然なんだが…
丁度1年ぐらい前
初めて会った時、泣いてたんだ
その日は雨が降っていた
俺はその少女が気になって。問いかけたんだ
ガイア「なんで泣いてるんだ?悲しいことでもあったか?」
そう聞くのは良かったけどその子はますます泣きだしちまって
うろたえたもんだな
ガイア「い、いや。そうだよな聞いた俺がバカだった。俺、不器用だからさ、ゆるしてくれ。」
そういって頭下げて…
???「いや…すいません。あなたは悪くないです…」
ガイア「俺でよければ、話聞くからさ。あっち行こうぜ」
雨に打たれたままなのもあれだったし近くのベンチに行った
俺もびちゃびちゃだし少女もびちゃびちゃ
拭くもの無いかと鞄をあさってたんだが
???「好きな人が居たんです」
いきなり少女はそう言い始めた
ガイア「そうか…」
???「その人…居なくなっちゃったんです」
ガイア「そいつ、もう帰ってこないのか?」
???「帰ってくるかも知れないし来ないかもしれません…」
少し泣きやんだか…って思ってたがまた泣き始めた少女
ガイア「想いは伝えたのか?」
???「伝えれないですよ…その人は別に好きな人がいたみたいですし!」
そう言いながら少女は立ち上がって叫ぶ
ガイア「そうか…俺もさ、好きな人いてさ」
???「………」
ガイア「想い伝える前に病気で死んじまったんだよな」
???「先輩も失恋してたんですね…」
ガイア「そうだな、でも俺のは子供の時のはなしだ」
そう言って俺は笑いかける
???「私はさっき…です」
ガイア「だからさ…その、なんて言っていいかわからねぇけどさ」
???「……?」
ガイア「泣くな、元気出せ。過去ばっかみてても前にはすすめねぇからな」
???「なんです…それ」
少女が少し笑ったような気がした
よく見てみるとこの子には不釣り合いな物をずっと持ってたみたいだ
ガイア「それ…なんだ?」
???「これですか…?彼の忘れもの…です」
せっかく元気になりかけてたのに、失敗したな
あーでもそっか、それにしても見たことない形状の…武器か?
これでも武器には詳しいほうなんだけどな
ガイア「ちょっと見せてもらっても良いか?」
???「いいですよ」
そう言って少女はそれを渡してくる
受けとってよく見ると鞘にしまわれてるようだ
剣みたいななにかなのか
持ち手に手をかけて抜いてみる
ガイア「これ…折れてる」
その剣?は中ほどで折れていた
先端の部分は鞘をさかさまにすると鞘から出てきた
???「それ、私を守るために折れちゃったみたいなんです」
ガイア「付けることぐらいなら出来ても…直せるかは分かんないな」
って呟く
それを聞いた少女は俺に近づいてくる
???「それ、直せるんですか?」
ガイア「これが、何でどうやって使うかわからないと無理だな」
???「そうですか…」
俺は剣みたいなものを鞘にしまい少女に返す
その時鐘の音が響く
ガイア「やべ、授業始まっちまった…あー」
???「私もです…」
ガイア「サボりすぎで注意されてるんだよな…」
???「私のせいで…すいません」
ガイア「別にいいんだけどさ、俺はこれから行くとこあるけどさ。俺でよければいつでも話きくからさ」
???「そう言えば先輩、名前なんて言うんですか?」
そこから立ち去ろうとした時そんなこと聞かれる
そう言えば名乗って無かったな
ガイア「ガイア・グランド。5年の技術科だ」
リール「私は、リール・スルーズです。一年生です」
ガイア「じゃあまたな」
って言って俺は自分の教室に戻る
遅れてるは…まぁいつものことだしな
それから1年ぐらいリールはたまに俺の元に来た
リールとちょくちょく会話していると子供のころ死んだあいつの面影がどこかあるきもした
そして俺は卒業…ってなった時、
リールはあの時と同じように泣いていた
ガイア「泣くなって…」
リール「は、はい…でも…」
あの日と同じようにリールはあの剣を持っている
あの人違うのは天気が晴れてるってことぐらいか
ガイア「別に死に別れるわけじゃねぇんだから」
リール「そ、そうですよね」
ガイア「それじゃあな」
って言って俺は学園を去ろうと背を向ける
リール「待ってください!」
そう言われたから振り返る
リール「これ、受け取ってください」
そう言ってあの剣を渡される
ガイア「これ、お前にとっても大事なものだろ?」
リール「直してください」
ガイア「どれくらいかかるかもわからないぞ」
リール「いいんです。これはけじめです。もし、その剣使える人がいたらあげちゃってください」
ガイア「本当に、良いのか?」
念をおして俺は問いかける
リール「はい」
その時リールの目はとても生き生きしていた
だから俺もそれにこたえるために剣を受け取る
ガイア「ああ、必ず直す。そして渡す、これを使える人に」
リール「よろしくお願いします」
リールは少し涙目だったけど
笑って俺を送り出してくれた
だから俺も心残り無く卒業出来たって訳だ
『異世界』
~ダールドノース山脈、クリールド~〔カイside〕
ガイア「そんなことがあったんだよな」
ハルカ「リール・スルーズ…」
ガイア「なんだ譲ちゃん、リールの事しってんのか?ってそんなわけねぇか」
ガイアさんはそう言って笑う
カイ「ほんとにいいんですか、そんなに大切なもの」
ガイア「俺が渡すって言ってんだ、うけとれねぇのか?」
そう顔を近づけられて言われると…怖いってか断りにくいってか
カイ「大切にします」
ガイア「おう、よろしくな」
ガイアさんの昔話を聞いていたらとっくに昼の時間も過ぎていた
カイ「じゃあそろそろ整理の続き始めます」
ガイア「そうか、頼むぞ」
ハルカ「リール…でも…まさかね…」
カイ「ハルカ?いくぞ」
なにか呟いているハルカに声をかけて整理をしに行く
この後あんなことが起こるなんてまだ俺はわからなかった