8話 ~本書~ 試し斬りと魔法の刀
問題を越えて何か得る事に意味があるんだね
~ダールドノース山脈、クリールド~〔カイside〕
朝を迎え俺はソファから起き上がる
野宿よりはましだけどやっぱり体が痛いな
ベッドの方を見ると安心した顔でハルカが寝ていた
カイ「なんか、可愛いな」
つい、呟いてしまう
けどまぁ、いいか。聞かれてないだろうし
大きな伸びをしてガイアさんに挨拶しに下の階へと向かう
ふと気付いたがかなり早い時間だったが下の階からは鉄を叩く音が聞こえた
階段を下りて工房に顔をだす
カイ「おはようございます」
ガイア「おう、よく寝たか?」
カイ「おかげさまで、ありがとうございます」
ガイア「こっちも片付け手伝ってもらったしな、お互いさまよ」
カイ「無理言って働かせてもらったのは…ってそれ」
俺が驚いたのは昨日見た日本刀が綺麗に研がれていた
そして近くには革でできた鞘も置かれていた
ガイア「気付いたか、それもってこっち来い」
そういってガイアさんは外へ出る
俺は鞘に刀をいれそれを持ってついていく
そこには鎧が取り付けられた案山子があった
カイ「これは?」
ガイア「案山子だ、それで斬ってみろ」
カイ「できるかわかりませんよ」
ガイア「出来るかもしれないと」
カイ「…」
ガイア「その鎧は俺が作った傑作だ。そのニホントウとやらが良いものか知るにはいいだろ?」
日本刀ってどうやって振るんだろ
傷つけることすらできないかも…
だけどそれだとな…
そもそも傑作ってなんだよ
そう思いながらも俺は初めて握るはずの刀を構える
なんでかとてもしっくりきた
カイ「ん…」
刀を鞘から引き抜き上段に構え
目を閉じて思いっきり…
振りおろした
ガイア「こりゃすげぇ…な」
カイ「え?」
目を開けるとそこには真っ二つに斬られた案山子があった
手元の刀には傷一つない
何か斬ったって感覚は無かった
カイ「うわあ、すいません!」
おれはすぐに土下座して謝った
いや冗談抜きでこれどうすんだよ
つい思いっきりやったけどまさか斬れるとも思ってないし
弁償できないぞこれ
ガイア「…がはははは!お前やるなぁ!顔あげな」
俺はおそるおそる顔をあげた
ガイア「まさか斬るとはな…鎧は気にしなくていいぞ」
カイ「でも…傑作なんですよね」
ガイア「それとそれ、お前にやる」
カイ「良いんですか?」
ガイア「使える奴が使う、それが武器にとっても一番良いだろう?」
そこまで言われたら受け取らないわけにもいかない
ありがたくもらっておこう
今後あの兵士が来ても…足止めぐらいにはなるだろ
カイ「ありがとうございます」
手に持っていた刀を鞘に入れ腰に差す
そうこうしているとハルカが起きたようで
扉を少し開けて顔をのぞかせる
ハルカ「カイ…?」
そうハルカは言いながら扉からこちらに歩いてくる
カイ「今起きたのか」
ハルカ「うん…あ、おはようございます」
寝起きは弱いのか俺に気付いてから少し間があってガイアさんに気付いて挨拶する
ガイア「朝飯作ってくらぁ、ちょっと待ってな」
そういってガイアさんは工房に戻っていく
そのあと真っ二つの案山子にハルカが気付く
ハルカ「これ…カイがやったの?」
カイ「そうみたい」
ハルカ「す、すごいね!」
カイ「まぁ…これがよく斬れるだけだろ」
実際これはすごく斬れる…鎧もろともその中の人すらも
ハルカ「それ使うところみてみたいな」
ハルカがそう呟いた
カイ「素振りでもしてみるか」
と俺は刀を抜き正眼の構えを取る
そして刀を振り下ろす
今度は目を開いたままで
目で見える速さで刀は振り下ろされる
こんなのでさっき案山子を斬ったのか…
ハルカ「え…」
振り終わった俺を見てハルカが驚いている
どうなってるんだ?
ハルカ「すごいね、見え無かったよ」
後半の方は呟くように言った
それにしても見えない…?
もう一回今度は軽く横に振ってみる
体感としてはゆっくり振りきるんだが
周りの風景をよく見ると舞散る木の葉がとてもゆっくり落ちていく
もしかして俺が速くなってるのか
そう思い今度は刀だけじゃなく体を動かそうとする
そのままのスローの世界で体はいつも通りに動く
カイ「なんだこれ…」
ハルカ「カイってすごいんだねこんなことまでできるなんて」
カイ「…?」
ハルカ「?」
俺が疑問を浮かべるとハルカも?を浮かべる感じでこちらを見る
こういのは普通なのか?
この世界の常識を俺は知らないしな、普通なんだろうな
ハルカ「でもカイって魔法使えたんだね」
カイ「魔法?俺が…?」
ハルカ「さっき使ってたのって身体強化の魔法でしょ?無詠唱ってすごいね」
カイ「そうなのか?」
ハルカ「詠唱しないで魔法使うなんて聞いたことないもん、前の世界だと普通だったの?」
カイ「そもそも俺は魔法すら知らないけどな」
ハルカ「でもさっきの…魔力反応あったから…でも魔法陣すら出なかったし…」
カイ「どう言うことだ?」
ハルカ「そうだよね、魔法知らないんだから…簡単に説明するね」
カイ「ああ、頼む」
それからハルカによる簡単な魔法の仕組みを教えられた
基本的には誰でも使えるらしい
それは簡単なものだと日常生活に使用されるものもあるみたいだ
適正があるかどうかにもよるが戦闘に使われる魔法もある
もともとは戦闘に使われていた魔法を簡略化して日常生活で使っているようだが
魔法には「形態」と「属性」がありその二つを最低でも含み
発動後の形を想像した状態で詠唱し魔法陣を形成し魔法名を言うことで発動するらしい
形態は
「攻撃」「防御」「強化」「回復」「妨害」「その他」
に分けられるらしい
属性は
「炎」「水」「雷」「風」「土」「氷」「光」「闇」
の8種類あるとのことだ
人は基本的に得意な形態と属性があり、その属性に反する属性は苦手なことが多い
それで俺が使ったのは…?
と質問したところ雷の速度強化魔法だと思うとのことで
どうして俺がいきなり魔法を使えるようになったんだ…?
やっぱり怪しいのはこの刀か…
カイ「武器を使うだけで発動する魔法とかってあるのか?」
ハルカ「一応…だけど古代武器でもないと無いよ」
カイ「つまりこの刀はもともと古代武器だったってわけか」
ハルカ「カイが魔法を使ったわけじゃないならそうなるね」
カイ「こんなにいいものもらってもよかったのかな」
ハルカ「ガイアさん、良い人だよね」
カイ「だな」
魔法について知ることが出来たしどこかで使えられたらいいな
今度暇なときにでもハルカに教えてもらうとして…
と考えているとガイアさんが外に出てきた
ガイア「お前らいつまで外に居るんだ?そろそろ中にはいってこい、飯出来たぞ」
そう言えばそうだな俺たちはいつまで外に居るのやら
カイ「はい、今行きます」
そう返事をして俺は中に戻るガイアさんに続き、ハルカと一緒に中に入る
朝ごはんを食べた後は昨日の続きということで武具の整理をして午前は終わった
ガイアさんと共に昼食を食べていると…
外の方からあわただしい足音が聞こえてきた