7話 ~本書~ 整理と掃除と片付けと
頑張っても救われないだからって諦めていいものか
~ダールドノース山脈、クリールド~〔カイside〕
武具屋での整理を始めてから2時間ほど
半分ぐらいは終わっただろうか
しかし多いな…そこまで広い場所ってわけじゃないように見えるんだけどな…
このあたり特に魔物?っぽいのとかには遭遇してないし野生の動物とか特別多いようにも見えないし盗賊とも遭わなかったし…
そんなに大量の武器や防具が必要ってわけでもない気がするんだよな
ただ…戦争中だしな兵士向けの販売か?
戦争時に金儲けね…無いこともないだろうけど自分の国が負けたらそれはそれでよくない気もするんだけど…
てことは無償で提供しているのか
しかしこの中にはあの兵士が使ってた銃は無いな…
この世界にはまだ基本的には普及してないのか
それならいいんだけど…
銃が作られない理由は魔法があるからか…
ハルカ「これはどっちに置けばいいの?」
考え事しているとハルカがロングソードをもったまま話しかけてきた
仕事に戻るか…考えてても仕方ないしな
カイ「それは…っとこっちだな」
そう言って近くの棚を指さす
カイ「しかしまぁいろいろあるもんだな」
ハルカ「そうですね」
カイ「そんなに魔物?とかっているのか?」
ハルカ「魔物…?こっちの世界ではそうは呼ばないけどモンスターなら町の近くには居ないよ」
魔物ではなくモンスターと言うらしい
町の近くは流石に居ないか
山や街道はどうなんだろうか
カイ「山の中とかにはいるのか?」
ハルカ「街道を外れると会うかもね」
カイ「数が少ないのか?」
ハルカ「そっかあの話知らないもんね」
カイ「あの話って?」
ハルカ「ちょっとした昔話」
昔のことか
史実なのか物語なのか
ハルカ「今は仕事中だし簡単に話すけど1000年くらい前、この世界は魔王が支配していたんだって」
カイ「ふむ」
ハルカ「その頃に一人の勇者が現れて魔王を倒して世界は平和になる」
カイ「魔王が居た時代の名残でいるのがモンスターか」
ハルカ「そう言うことになるから見つけられたら基本的に国を挙げて狩ることになってるよ」
カイ「つまりモンスターもいないのか…」
ハルカ「どうして急にこんなこと?」
そう聞かれる
ま、聞かれるのはわかってたし本心を言ってみる
カイ「そうなるとこの武器とか防具って要らなくないか?」
ハルカは目をそらした
カイ「ああ、そうだよな…戦争?」
ハルカ「そうだね…町の人も武装して自衛するって言ってるんだって」
カイ「ここは国境の山なんだっけ」
ハルカ「そうだよ、だから皆おびえて生活してる」
カイ「早く終わればいいな」
ハルカ「うん…」
ああ、やっぱこの話題は避けるべきだったな…
そう考えながらふと外を見るともう日が暮れ始めていた
そう言えばこの世界に来て始めての日暮れか…?
カイ「この世界でも夕暮れは綺麗だな」
そう呟く
それをハルカは聞いていたのかこう答えた
ハルカ「私も夕暮れは好き」
カイ「明日も明後日もこうして平和な夕暮れみたいもんだね」
ハルカ「だね…」
おっとまたしんみりしてしまった
明るい話題…
考え込んでいるとガイアさんの呼ぶ声が聞こえた
ガイア「お前ら、そろそろ終わっていいぞ」
カイ「わかりました」
そう言いながらハルカの手を取ってガイアさんの方へ向かう
カイ「足元気をつけろよ」
ハルカ「…うん」
工房の奥へ行くと目立つ所に見覚えのあるものがあった
カイ「え…それ」
なんか驚いてばっかりだな
しかも普通に聞かれちゃうし
でもこれだけはな…どうしようもないだろ
ガイア「これが何か知ってるのか?」
知らないわけがない
だってこれ…刀じゃないか
それも日本刀にそっくりだ
鞘が無いのと軽く錆びてるぐらいで形はそのままだ…
カイ「日本刀…」
ガイア「これ、ニホントウって言うのか…聞いたことねぇな何処のだ?」
カイ「あ、いや名前聞いたことあるぐらいで何処のかは、わからないです」
この世界のどこに日本刀なんて作ってるところがあるんだ
そんなの知るわけないしな
俺の元居た世界の日本ってところです
って言ったら頭ダメな人だしなぁ…
あれもらえないか…
ガイア「直そうにも物がなにかわからないと直せねぇしな」
カイ「それ、錆びてるだけなので研げばまた使えますよ」
ガイア「そうか?、ひょろっとしててすぐ折れそうだけどな」
カイ「剣みたいに叩き斬るんじゃなくて斬ったり突いたりするものなんですよ」
ガイア「でもこれじゃあ鉄は斬れないだろ?」
カイ「斬れる」
なぜかそう確信して言ってしまう
とは言っても前TVで斬鉄剣とかいって鉄切ってるの見ただけなんだけど
この世界の魔法がどんなものか、わからないけど付与や強化が出来るなら…
斬れるはず
ガイア「ほう、おもしれぇ。お前これ、使えるな?」
カイ「え?」
ガイア「明日またこい…お前ら泊まるとこあるのか?」
カイ「その…無いです」
ガイア「そうか、家来い今日は泊めてやる。明日までにこれ研いでおく」
カイ「泊まっても良いんですか?」
ガイア「上の階の右の奥の部屋が空いてるから勝手に掃除して使ってろ、俺はここにいるから何かあったら降りてこい」
カイ「ありがとうございます」
よくわからないうちに泊まる宿まで決まった
そういうわけで悪い気がしないようでもないけど泊めさせてもらうことにしてその部屋にハルカと向かった
カイ「この部屋かな?」
ハルカ「多分…」
ドアを開けると…案外綺麗な部屋だった
そこには一つのベッドとソファ、テーブルがある簡素な客室だった
カイ「ベッド使っていいぞ」
そう言っておく
ハルカ「でも…」
カイ「いいよ俺こっちで、疲れてるしもう寝ようぜ」
ちょっと無理やりだけどハルカをベットに押して俺はソファに寝転がる
カイ「それじゃお休み」
ハルカ「うん…」
なんだかんだ言ってこれが初めて安心できるところで寝る
久々な感じだな…この世界来てから色々あったしなぁ
そう思いながら俺は眠りについた