6話 ~本書~ 最初の町とアルバイト
途方もない道のりも一歩ずつ歩けばいつか辿り着くはず
~ダールドノース山脈、クリールド~〔カイside〕
ハルカも落ち着いてまた歩き始める
今度はほとんど会話もないままでもなぜか気にならなかった
そして何度か野宿をしてやっと遺跡の近くの町、クリールドへと辿り着いた
カイ「やっとついたか」
流石に現代っ子として野宿とかは結構きつかった
そうでなくても装備もろくに無い状態だったし
ハルカ「とりあえずここまで来たら…あ!」
カイ「どうした?」
ハルカ「あの祭壇に、お金置いてきちゃった…」
カイ「持ち物、無いしな」
ハルカ「どうしよう…帰れない」
カイ「一文無しでスタート俺の異世界生活…?」
なんて波乱万丈な
まぁ、もともと一人で異世界に来たら一文無しなんだろうけど
ハルカと出会えただけ運が良かったって事だろうな…
ハルカ「ご、ごめんなさい!」
カイ「いや、ハルカのせいじゃないしな」
ハルカ「でも…」
カイ「でも、じゃない。どうやって稼ぐかな?」
ハルカ「えっと…わかんない」
さてはてどうするかな
もしかしてハルカって世間知らずなのか?
カイ「とりあえず…宿屋行こうか」
ハルカ「お金、無いんだよ?」
カイ「多分大丈夫、なんとかなるって」
入口でわーわーやってようやく宿屋を探し始めた
探すっても何も無い状態じゃ無理だしなぁ
と思ってあたりを見渡すとこちらを見ていた一人の女性が居た
やっぱ目立ってたのかな…ちょっと恥ずかしい
でも声掛けてみるか
カイ「あのすいません」
女性「はい?」
カイ「このあたりに宿屋ってありません?」
女性「ああ、ありますよ」
と言いながら場所を教えてもらった
宿屋の場所がわかったのでハルカのもとに戻ろうとして気付く
ハルカが不良?みたいなのに絡まれていた
不良A「ねぇ、一人?」
不良B「ちょっと俺らといいことしない?」
ハルカ「え、え?あの…?」
なんか気が動転してるみたいで…
不良に手を掴まれた
俺は急いでハルカのもとに駆け付けて一言言う
カイ「あ、待った?」
大丈夫、親しく。なるべく彼氏っぽく…
不良A「ああ?…ち」
不良B「彼氏持ちかよつまんねー」
とか言いながらどこかへ消える
完全に姿が見えなくなったところで俺はハルカに話しかける
カイ「ハルカ?大丈夫か」
ハルカ「こ、怖かったぁ」
なんかハルカがあの時以降やけに懐いたっていうか…甘えてる?
うれしいけど…恥ずかしいな
カイ「と、とりあえず宿屋行こう、な?」
ハルカ「うん」
そのままの勢いで抱きついてきそうなハルカを制し宿屋へと向かった
しばらく歩くと教えてもらった看板が見えてきてその建物に近づいていく
カイ「先に言っておくけどお前は何も言わなくていいからな、空気読んで合わせてな」
ハルカ「ん?よくわからないけどわかった」
カイ「とりあえずお前はここで待機、な
まぁさっきみたいなことは…多分大丈夫だろ
そう何度も起きるわけないはず…
俺は宿屋へと入っていく
宿屋の女将「いらっしゃい」
カイ「あのすいません」
女将「ツインルームに何泊だい?」
カイ「そうじゃなくて」
女将「冷やかしかい?だったら帰んな」
何も言ってないのに…なんだこれ
とりあえず続けよう
カイ「山の方に家があるんです、やっとここまで来たんですけど…お金がなくて…」
と、出まかせな嘘を言う
ま、ばれなきゃ問題ない
女将「お金無いなら無理ね」
カイ「何でもしますから!働きますから!」
女将「ダメだ帰んな」
カイ「そこを何とか…」
俺は土下座をしてお願いしてみる
これぞ日本スピリッツ!
だめだ、俺何してるんだろ
女将「金がほしいなら武具屋に行ってみな、手伝い探してたから」
カイ「ほんとですか!ありがとうございます!」
女将「今度はお客としてきてくれよ、待ってるからね」
カイ「はい!」
泊まる場所は確保できなかったがとりあえずお金稼ぐ手段は知ることが出来た
上手くいけば泊まる場所+仕事を手に入れれたんだが…まぁしょうがない女将さんに教えてもらった武具屋に行こう
宿屋を出てハルカと合流する
カイ「よし。武具屋に行くぞ」
ハルカ「え?」
カイ「手伝い探してるみたいだしな」
ハルカ「働くの?」
カイ「それ以外に金、稼げなくないか?」
そう言いながら俺は歩き出す
それにハルカはついてくる
カイ「また最初は俺一人で入るからな」
ハルカ「う、うん」
ちょっとさびしそうな顔をする
いやそんな顔されても…俺にどうしろと…
じゃあ一緒に入るべきか?
交渉中はあんまり見られたくないが、まぁいいか
カイ「分かった、一緒に行こうハルカが居た方がうまくいきそうな気もする」
ハルカ「いいの?」
そうこうしてるうちに武具屋にたどり着く
ドアを開けて入るとロングソードからロングボウなどの武器や鉄の兜や革の鎧が所狭しと並べられていて
奥の方には工房があるらしく鉄を打つ音が聞こえた
カイ「すいませーん」
???「ああ?客か…少し待て、今行く」
という低い声が奥から聞こえてきた
そして身長2mはありそうな巨体のその声の主は現れた
???「なにがほしい」
カイ「買い物に来たわけじゃないですけど」
???「お前冒険者だろ?何も持ってねぇじゃねぇか、だったら何しに来た」
カイ「ここで働かせてください!少しだけでもいいので!」
???「なんで俺のところに…ああ、女将さんか」
カイ「はい、何でもしますので!」
???「やる気はあるようだな、そっちの譲ちゃんも一緒か?」
ハルカ「え?…あ、はい」
???「まぁいいか、お前ら名前は?」
カイ「カイ エイサイです」
???「カイ、分かった譲ちゃんは?」
ハルカ「ハルカです…」
ガイア「ハルカ?…なわけないか、まぁいい俺はガイア・グランドだ」
ハルカの名前に何か引っかかったようだがそれを気にしないようで自己紹介をしてくれる
ガイアっていうのかこのおっさん
カイ「よろしくお願いします」
ガイア「よろしくな」
それにしてもやけにハルカが静かだな
もしかして人見知りとかするのか…
カイ「ハルカ、無理しなくても良いんだぞ?」
そう小声で話しかける
ハルカ「ううん、大丈夫」
本人が大丈夫って言うからにはそれ以上は何も言えないしな
危ないことにならないように気をつけておくか
ガイア「それじゃあ…この辺の武器片づけておいてくれ」
カイ「どういう風に?」
ガイア「買いやすいように頼む、そう言うの俺は苦手でな。終わったら奥に呼びに来てくれ」
カイ「わかりました」
最初の仕事はどうやらこの散らかった武具屋の整理らしい
このぐらいだったらハルカと一緒でも問題ないか
しかし物多いな…どうするかな
ハルカ「どうするの?」
カイ「とりあえず…全部どこかによせて掃除しようか」
ハルカ「うん、わかった」
そうして俺たちは片づけを始めた
一応俺たち逃げてるはずなんだけど…大丈夫なのか
ハルカの様子が少し気になるがとりあえずは目の前の問題を解決しよう
これ全部今日中に終わるのかな…
ハルカの方をみると大きな盾を寄せようとしている
重すぎて持てないのかバランスをくずして…
ハルカ「わわわ…」
カイ「おっと、大丈夫か?」
ハルカ「うん」
倒れそうになっているのを近づいて盾とハルカを支える
今気付いたけどこっちに来てから異常なほど筋力があがった気がする
筋力が落ちたわけでもないし便利だからいいんだけどこれが異世界補正か?
そんなのほんとうにあるのかな
ハルカはなぜか大きな武器や防具を運ぼうとする
そしてそれを俺は手助けする
こんなので大丈夫なのかな…心配になってきた
まぁとりあえず働くところ見つけれたからいいんだけどね