4話 ~本書~ 最悪の目覚めと機械の国
諦めるのはまだ早いんじゃないか
~ダールドノース砦~〔カイside〕
カイ「うぅ」
胸のうえに重さを感じて俺は意識を取り戻した
なんて言うか胸のあたりがすごく痛い
けどなんだか温かい感じもする
現状を把握するためにあたりを見渡す
カイ「な…」
近くにはハルカが倒れていた…
助けられなかったのか?
よく見ていると肌の血色は悪いが生きていることが確認できた
胸のあたりが痛い上に妙にスースーすると思って見下ろすと
服が裂けていた
カイ「なんだこれ」
少し離れたところにはとがった岩が血だらけになっていた
もしかしてあそこに落ちた?
まさかな…
ってな感じで現状把握が済んだ頃
隣で気絶していたハルカがどうやら目覚めたようだ
カイ「起きたか?体調悪そうなところ悪いが…あれ、お前の知り合いか?」
ちょっと遠くの方多くの武装した人がこちらに向かって歩いてきている
考えたくなかったけどどう考えても目的は俺かこの子、ハルカのどちらかだろうな
ハルカ「…ふぇ?」
カイ「あれだあれ、よく見ろ」
と言いながらハルカの顔に触れて向きを変える
そうやってやっと気付いたのか驚いたような顔に変わる
ハルカ「機甲兵士!?なんで!?」
そう叫んだハルカの顔色はますます悪くなっていく
カイ「機甲兵士?」
そう聞き返した俺の言葉を聞いたのか聞いてないのか
いきなり立ち上がってふらつきながら反対側へ歩き出した
ハルカ「に、にげなきゃ…」
ハルカは呟く
俺はそれを追いかけながら声をかけつつ肩を貸す
カイ「とりあえず敵だな、逃げるぞ」
俺たちの足取りはとても遅いもので
後ろの兵士たちはどんどん近づいてくる
だけど少しでもすすむ
カイ「この先、もう少し進めば崩れそうな岩が少し上にある」
ハルカ「え?」
カイ「お前、あれ落とせ…ないか?」
俺は指を岩を指さす
それをみてハルカは確信をもったようにうなずく
ハルカ「1分あれば…」
カイ「まかせろ」
そう言って俺はハルカから手を放し兵士たちの方を見る
改めてみてすごい数だな
ざっと20~30ぐらいか?
カイ「この程度なら…1分ならなんとかなるか…?」
呟くように言ってハルカに一言言う
カイ「お前は先に行って準備しろ、合図があれば俺もそっちに行く」
ハルカ「え?あれを止めるの?1分も。無理だよ!」
カイ「やってみなきゃわからないだろ?」
ハルカ「でも…」
カイ「今ある最善の策だ、生存率も高い」
ハルカ「う、うん」
カイ「頼む、やってくれ」
そう言い残して俺は兵士の方へ走り出す
体が少し痛むがそんなのは無視する
兵士達はそんな俺をみて立ち止り臨戦態勢を整え始める
カイ「俺に戦う意思は無いんだけどさ」
そう言ってはみるが…近づいてくる
カイ「やっぱりあいつか?」
そう聞きながら半ば確信しつつ一歩前へ出る
先頭に居た剣士の間合いに入る
その瞬間剣士は剣を振り抜く
カイ「先にやったのはお前らだからな」
そう言い訳をして俺は剣をしゃがんでかわす
しゃがんだ状態から体をばねのようにして伸ばしつつ剣士の顎あたりから拳を振り上げる
カイ「やっぱかてぇ…」
殴った衝撃は相当手に帰ってきたが相手にもダメージはあったらしく兵士の兜が飛んで行った
その中は…
カイ「何も無い…だから機甲兵団か」
頭を失った兵士は倒れる
その兵士の持っていた剣を奪い他の兵士に威嚇をしてみるが…
カイ「機械なら意味もないか」
3体の兵士がこちらに突っ込んでくる
右の方の兵士の頭に剣を投げて突き刺す
その兵士の方へ向かって走って刺さった剣を蹴りながら持っている剣を奪う
そして近い方の兵士が振りおろしてきていた剣に向けて剣をふるう
剣と剣が打ち合った音があたりに響く
その時ハルカの声が聞こえる
ハルカ「カイ!準備できたよ」
もう一人の兵士に剣を投げつつ後退して岩の落下予測地点を超えてハルカの方へ走る
俺を残っている兵士たちが走って追いかけてくる
カイ「いまだ!!」
そうハルカに合図をする
ハルカ「炎よ燃え上がれ、そして貫け《フレイムランス》」
空中に形成される魔法陣
そこから炎が流れ出す
そしてそれは槍の形を形成して岩へと飛んでいく
その炎の槍は岩を支えていた部分にあたり岩が転がり落ちてくる
そしてその下に居た兵士たちのうえに落ちる
カイ「まだ残ったか…」
20近い数はつぶれたか岩で道をふさがれたかでこちらには居ないが
3体ほどどうやら傷つきながらも生き残ったようだ
その3体はこちらを警戒しているものの少しずつ近づいてくる
槍をもった兵士が二人
銃をもった兵士が一人
銃があるのが厄介だな、どの程度の性能のものか
そう考えている時
銃を持った兵士がその銃口をハルカに向けた
カイ「危ない!」
そう言いながら俺はハルカを押し倒す
打ち出された弾丸はハルカが立っていた位置を通り抜けて後ろの壁に着弾する
そして爆発した
カイ「まじかよ…」
通常の銃と同等の速度で撃ち出される榴弾か…
俺は立ち上がって銃を持つ兵士に向かって走り出したが槍を持つ兵士に邪魔され近付けない
カイ「くそ、邪魔だ!」
そうしている間に銃を持つ兵士は銃口をこちらに向けた
槍をもった兵士もろとも吹き飛ばす気か
すぐに俺はその場から離れる
弾丸は撃ちだされ槍をもった兵士2体とも吹き飛ばす
かろうじて軽傷で済んだものの…
流石にちょっと、な
どうするか悩んでいると…
ハルカ「炎よ燃え上がれ、そして貫け《フレイムランス》」
あの岩を落とした魔法が聞こえ銃を持つ兵士に炎の槍が飛んで行った
そして兵士は吹きとんだ
その魔法を唱えたハルカをみると
ますます顔色が悪くなりまた倒れそうになっていた
俺はそこまで走っていき
カイ「大丈夫か?」
ハルカ「うん、いそがなきゃ」
そして俺たちはまた歩き出した
この場所から少しでも離れるために
~ダルカマイズン帝国、???~〔???side〕
まさか警戒に出していた兵士が全滅したなんて
どんな悪い夢だ…
とりあえず王様に報告をしないとな
しかし何がどうなっているんだ
送られてきた映像を見た限りだとスターリアの第3王女と変わった服装のぼろぼろの少年の二人
たった二人に30人もの機甲兵士がつぶされるとはな
???「報告があります!」
帝王「どうした?」
???「偵察に出していた兵士がやられました」
その言葉に続け映像を見てわかったことを報告する
帝王「ほう、さがれ」
???「はっ」
そして俺は部屋を出た
あの少年はいったい何者なのだろうか…