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イ毛メンなんて嫌すぎる!!!!

ジョリっと音を立てて皮膚が擦れる音がする。

今日も濃すぎる俺の体毛。

毎朝触って確認するが、一向に薄くなる気配はない。

「はぁ…薄くなれよ…」

ため息が耐えない。

小学6年のあたりからすね毛や●毛が生え始め、中二の頃にはシェーバーで髭を剃っていた。

現在22歳。

この体毛たちのおかげで俺はモテないのだ。



イ毛メンなんて嫌すぎる!!!


                 作;おれんじじゅ~ちゅ



毛に愛されて十年。

街を歩くと

「何あの人・・・長袖から毛がはみ出てる」

「キモいね・・・」

俺を奇妙な目で見る。

全てはこの体毛が悪いんだ!!!

そんなわけで俺は今、悩んでいる。

ひっじょーに悩んでいる。

誰か助けてくる・・・。

嘆いても仕方ないか・・・。

俺はバイト先までの道のりを歩いた。



「毛利くん・・・悪いんだけど・・・腕毛沿ってきてくれないかな・・・」

「申し訳ありません・・・」

剃ると余計増えるって分かってんだろ!

ウエイター服の袖からはみ出る腕毛。

店長は申し訳なさそうに言う。

先週、女性客から“腕毛が汚らしい”とクレーム付けられてしまったのだ。

訴えるぞ。

相手はお客様なので俺は何も言えないでいた。

ただ謝るだけ。

その日の夜泣いたのは内緒だ。

「でさ・・・頼むよ・・・」

「分かりました」

俺は渋々了承した。



「こちらの除毛剤一点で2000円です」

あぁ馬鹿!俺が何買ったか言うんじゃない!

ほら~みんな俺を見てるじゃないか・・・。

早く帰ろう・・・。

俺は早足でアパートに帰った。



じゅわ~っと音を立てて泡タイプの除毛剤を腕に塗る。

そして5分間待ち、専用のカミソリの葉がないやつで剃っていく。

不意に涙が溢れ出す。

「俺だって・・好きでこんなに毛深いわけじゃねぇんだよ・・・。

この毛さえなかったらなぁあ!!!」

鏡に向かって拳を繰り出す。

割ると後始末が面倒なので

コツン?

そのあとは黙々と全身の毛を剃り、約三時間かけて剃り上げた。



つりん☆

「よし、これで完璧♪」

全身を触って確かめてみる。

ジョリっという嫌な音はもうしない。

音がするわけではないがツルンっといい音がしそうなほどつるつるに仕上がったと自負している。

これで文句言われることはあるまい。

「神様・・・どうかこのまま体毛が生えませんように・・・」

俺は約一時間ほど祈りを捧げ、ベットに横になり眠りについた。


「毛~毛~毛~♪もじゃもじゃ~♪」

(うるさいな・・・)

変な歌が聞こえる。

「ジョリジョリ剃っちゃイ・ヤ・ヨ?」

(気持ち悪いな・・・)

「毛はトモダチさ~♪」

「うるせぇよ!!!」

耐え切れずツッコミを入れてしまった。

「お?起きたな翔ちゃん♪」

「誰だよ、あんた・・・」

アフロで全身毛だらけのオッサンがいた。

「毛神さまだZE!」

サムアップする毛神様(?)

「・・・」

シカトしよう。

「シカトしないでぇ~!!!」

泣きついてくる毛神さま。

「わかった!わかったから抱きつくな!あぁもうぉ~鼻水ふくなよ~!!!」

「ぐずっ、アリガトゴザマス…」

ようやく泣き止んだ。

「さて、真面目な話をしよう」

言葉の通り真面目な顔になる毛神さま。

「さっきお前は毛を剃っただろ!」

「それがなんだ!邪魔なんだよ!!!」

「貴様―っ!!!!」

「てぃ!」

つかみかかってきたに対し、カウンターを繰り出す俺。

「あうち!痛いお・・・」

おでこを抑えながら半泣きの毛神さま。

「どうしても嫌か?」

「嫌に決まってんだろうが!毛深いせいでな・・・俺はみんなに気持ち悪いって囲荒れ続けてんだよ!」

「そうか…。そうだよな…俺たち毛は嫌われるよな…本当にすまない…。

お前の望みはなんだ?」

「決まっている」

毛神さまの肩をがっちりつかむ。

「無駄毛のない美しい体になりたい!!!」

「…しくしく」

「いじけるんじゃないよっ!あんたが望みは?って聞いたんだろ?」

「ぐずっ、でもでも~僕ちんさみしいなぁ~」

ゲシっ!

「痛い…イジメヨクナイ!!!」

「うるさいよ!お前ら毛のせいで俺はいじめられたこともあるっつの!」

「…わかった。我々は去ろう。じゃあな」

毛達は去って行った。

毛の化身達は手足がないのでジャンプしながら移動している。

キモいな…。

そんな彼らの後姿を俺は見えなくなるまで見送った。





毛毛毛毛毛毛毛毛!!!

目覚ましが鳴る。

毎朝ながら不快になる目覚ましだ。

なぜいつまでもこんなものを使っているのかというと、単純に人からのもらい物だからだ。

「ふぁあ~」

起きてすぐ身体を触っていく。

すべすべ~。

すべすべ?つるんつるんじゃなくて?

除毛坐位を使った後はつるつるのはず…。

そこで自分の身体の変化に気づく。

割と小柄だった自分よりもさらに一回り小柄な女の子が鏡に映っていた。

「お?」

ポーズをとってみる。

鏡の中の少女も同じポーズをとる。

「ありま…」

どうやらこの女の子は俺のようだ。

てかいなくなる=女の子するって微妙におかしくないか?

まぁ巷で噂な女装とやらに興味があったからちょっとうれしいようなそうでないような?

「ちっぱい…」

おそらくAAしかないだろうと思われる。

掌で覆い隠せてしまう。

これからはこの“ちっぱい”の時代だよね♪うん…。

「お、女の子の身体ってどうなってんだろ…」

ごくり。

あちこちをまさぐってみる。

「あん♪」

えっち~ぞ、俺。

やばい…戻ってこれなくなりそう…。





しばらくおまちください…。





「はぁ…はぁ…」

つい調子に乗って最後までやってしまった…。

はずかすぃ~♪

「お楽しみですな、毛毛毛♪」

なんだよその笑い方!

「ちーっす!」

毛神さまがコーヒーを飲みながら現れた。

「あ、あんたいなくなったはずじゃ!?」

「いや~一応神さまだからね?アフターケアっつーの?

様子を見とかないといけないわけよ。んで、女の子の身体どう?

オタノシミダッタヨウデスネ♪」

「う、うるさいなぁ~!俺の勝手だろ!」

「ばっちり記録シマスタ♪」

ドヤ顔でいう毛神さま。

えぇいうっとぉしい!

「出てけよ!」

「はいはい。わかったわよ~」

なんでオカマ口調?

「とにかく、困ったことがあったら電話ちょうだいな。これあげるから」

胸毛を一本霧視って呪文を唱える。

すれと毛はみるみる姿を変えて、やがて携帯電話のような形になった。

形はやっぱり毛を模しているけれど…。

「ちゃららら~“毛~体”♪」

「字おかしくね!?」

どうみても下から読めば体毛って読めるだろ!!!

「いらねぇよそんもん」

「遠慮スンナって♪」

「いらねぇったら!」

「いやいやマジで遠慮スンナって!これマジスゲーから!神補正かかってっから!

神の力使いたい放題だって!毛に関してだけだけど…」

「役に立たんわ!」

毛神さまに投げ返す。

「もっとけって!神の加護あるから!さっき言った毛に関してのみってのは嘘だから!

翔ちゃんに運気いっぱいいくから!」

「いらね」

「さっきの動画うpしますよ?」

「ああもう!わかったよ!もっときゃいいんだろ?もらってやるからヤメレ!」

「はいな☆」

にこにこする毛神さま。

もらってしまった…。

満足したのか俺が疱疹状苔の間に毛神さまはいなくなっていた。

これからどうしよ…。



あれから一週間が過ぎた。

その間にいろいろなことがあった。

まずはバイトだ。

「いや~あのもじゃもじゃな翔之助くんがこんなかわいくなるなんてね~♪」

店長は大喜びだ。


大学。

「毛利~かわいくなっちまったな~」

「男の時もルックスはわるくなかったんだよな~」

「だな~。あの毛さえなかったらって感じだったよな」

「「「ははは」」」


実家。

「あら~かわいくなっちゃって~♪

やっぱり毛がない方がいいわね~」

「兄ちゃんが姉ちゃんになったのか…毛…ない…やっほ~い♪」

母さんや弟まで喜んでいた。

ここまでくるとちょっと今までの俺はなんだったんだ?ってなるが、毛があるよりは遥かにいいだろう。




さて…俺は毛という存在を捨て去り、男すらも捨てたわけだが…恋愛対象はどうなるんだ?

男を好きになるのか?

そんなことを思いながら街を歩いていると青年とぶつかった。

「す、すみません…」

しりもちをついた俺に手を差し伸べてくる青年は俺と同い年くらいに見える。

「い、いえ…」

差し出された手をつかみながら立ち上がる。

長袖のシャツの裾からちらつく腕毛…Vネックから除く胸毛…。

「…毛」

「す、すみません!気色悪いですよね…」

顔は悪くない。むしろ超イケメン…イ毛メンである。

あれ?なんだろう…この感覚…。

「ど、どうかしました?」

「え?いや…べ、別に…」

急に体が熱くなってきた。

ドキドキする。

なんなの?

こんなことは初めてでどうしようもなくなり、ついにカバンから毛~体を取り出し電話をかける。

「はい、もしもし~。あ、祥ちゃん?やっと電話くれたね~♪」

「あのさ…急にドキドキして…」

「ふむふむ…どれ…あ、今映像で出たわ。ん~とね…恋…デスネ♪」

「こここ濃い!?」

「そのボケは今まで聞いたことないぼけ方だな~」

「うっさい!」

「とにかく、翔ちゃんは恋しちゃったわけよ」

真面目に答える毛神さま。

どうやら俺は目の前の青年に一目ぼれしてしまったようだ…。

「あの~、そろそろ俺行きますね?」

青年が立ち去ろうとする瞬間、俺は裾をつかんでいた。

「ま、待って!」




数分後、俺たちは近くの喫茶店「ふぇあり~」でお茶をしていた。

「えっと…」

青年は困った表情でこちらを見てる。

「お、お名前は?」

「俺は昴、本澤昴だよ。君は?」

「しょうこ…毛利翔子…です…」

「へぇ~翔子ちゃんね。覚えたよ。それで…何かな?」

「か、彼女とかいますか?」

何聞いちゃってんの俺―っ!!!

「いないよ。見ての通りだよ…この毛のおかげで気持ち悪がられてね…。

さみしそうに笑う昴。

「…ごめんなさい」

「いいさ…」

「「…」」

会話が続かなくなり、俺たちは10分ほど話さず携帯をいじったり外を眺めるだけだった。

「そろそろ帰るよ…」

「…はい」

「ありがとう、誘ってくれて」

笑った姿に俺はきゅんと来てしまった…。




「お悩みだね~」

アパートに着くと毛神さまがラーメンを食べながら話しかけてくる。

ってそれ俺のカップめんだろ!!!

「まぁ細かいことは置いておいてさ。昴くんのこと好きになっちゃったんでしょ?」

「…」

「今まで苦しめてきた分、翔ちゃんは幸せになる権利はあるよ?」

「珍しく目時目じゃん…」

「我が子同然の子を心配しちゃいけないのかい?」

「そ、それは…」

「なら、もっと彼を知って見極めれば?」

確かにその通りだ…。

「わかったよ…」

「ほ~い。じゃあがんばってねん♪」

毛神さまを見送りながら俺は自分がどうしたいのか考えた。

「彼を…昴くんを探そう」




俺の名前は本澤昴。

体毛に悩む大学生だ。

体毛のせいで彼女ができたことなど一度もない。

というか女の子とまともにしゃべったことなどない…。

だがそんな俺にもさっき転機が訪れた。

ただぶつかっただけの女の子にお茶に誘われたのだ。

正直うれしい。

うれしすぎるぅううううう!!!

取り乱した・・・・。

彼女は俺の毛を見ても何も言わなかった。

初めて気持ち悪いといわなかった娘だ。

小柄で…名前は確か…毛利翔子って言ってたっけ。

毛…オエェェェ…。

いやいや失礼だぞ~俺~たまたまだ!うん…。

翔子ちゃんか…。

どこにいるんだろう…。

明日探してみようかな…。

明日に備えて今日は早く寝ることにした。





「モジャモジャ~♪

毛達は君を見つめてる~♪」

(うわぁ…)

「お毛毛はトモダチさ~♪」

「うるさい!」

思わず殴ってしまった。

「きゃっ!殴ったね?●父にも殴られたことないのに!!」

「おいぃぃ!!!」

そこにはアフロのオッサンがいた。

「誰あんた?」

「毛神さまです」

「毛神さま?」

めっちゃ怪しい…。

「アヤシクナイヨ」

読唇術だと!?

「んで何?毛をなくしてくれんの?」

「ひどい!なんでみんなそんな反応するの?僕だって…」

いじいじ…。

「だぁあああ!気持ち悪い!オッサンがいじいじすんな!」

「だって…」

「わかったよ…わかったからいじけるなよ…」

「アリガト…」

肩をがっちりつかんでくる毛神さま。

「離れろ!」

「あうち!」

つい空手チョップをしてしまった…。

「さて…昴君」

急に真面目になったな…

「君にいい知らせがある」

「な、なんだって!?」

「君は幸せになる権利を得たのだ」

「幸せ…」

幸せ…モテる…ハーレム…。

いかんいかん!!!

「俺が幸せになれるって!?」

「なれるよ。君はある女の子に一目ぼれをした。そうだろ?」

「そ、そうだ…」

「その恋…叶うと思うよ?」

「え?マジで!?」

サムアップする毛神さま。

「でも…彼女がどこにいるかわからない…」

「明日の夕方“ふぇあり~”にいってごらん」

そう言い残して毛神さまは行ってしまった。

明日の夕方…。

行ってみるしかないか…。








「いらっしゃいませ~♪」

今日もバイトだ。

女の子になってから給料が少し上がった。

その変わり、このふりふりで整復を着ないといけないが…スカート短すぎない?

「すいませ~ん!」

「は~い♪」

前より楽しいと思える。

毛がなくなって気持ち悪いといわなくて済むし、女の子の身体にもなじんできた。

「最近の翔子ちゃんイキイキしてるね~」

「うんうん!男の子だった頃は…」

「そうですね~」

「ほら!お客様きたわよ!」

「は~い♪」

先輩方にも仲良くしてもらえるようになったし…もうこれ以上の幸せはないんじゃないかってくらいに幸せだ。

ただ…一つ…昴くんが気になること以外は…。

そんなことを考えながら先ほど入ってきたお客様の注文を取りに行く。



「ご注文はお決まりですか?」

にっこりと笑ってみる。

「あ、はい。アイスコーヒーで…あれ?」

「「あ!!!」」

「翔子ちゃん!?」

「昴くん…」

俺たちは見つめあう。

胸の奥からこみあげてくるドキドキ。

なんなの?これが恋なの?

でもでもこの前まで俺は男だったからホモォ?

いやいや!

今は女だからいいのか?

「ご、ご注文は以上でよろしいですか?」

「あ、はい」

俺は逃げるように厨房へと戻る。

「ててててて店長ぉおおお!

きゅきゅきゅ休憩もらっていいですか!?」

勢い余って声が裏返ってしまった。

「どしたの?あ、は~ん。あの男の子としゃべりたいの?」

「そそそそそうなんです!」

「確か…昨日も彼と来てたよね?彼氏?」

「まままままままだそんなんじゃないですよ~!き、気になるだけです!!!」

「はいはい、わかりました。行っといで」

俺は店長にお礼を言い、二人分おアイスコーヒーを用意して昴君のところに向かった。



「お待たせいたしました」

「あ、はい」

コーヒーをテーブルに置き、昴君の向かいに座る。

「あ、あの…」

「はい…」

見つめあう。

「翔子ちゃん…俺…君のことが知りたいんだ!」

急に立ち上がり声を高らかにいう。

何事かと客たちは一斉にこちらを見る。

「す、すみません…」

恥ずかしがりながら椅子に座る昴kん。

「私も…あなたのことが知りたいです」

「よ、よかった…」

安心したのか、顔がほころぶ。

「実は…俺…毛深いんです」

「はい…」

「気持ち悪くないですか?」

真剣なまなざしで聞いてくる。

「正直…毛は嫌です…」

「そうですか…そうですよね…」

「でも…あなたはきっとつらい思いをしてきたんだなぁって思います」

「辛かったですよ…女の子にはわからないでしょうけど…」

「わかりますよ…」

「わかるわけないだろ!おまえら女に!」

今にも俺を殺しそうな勢いで怒鳴りつけてくる。

「みんなそうだ!自分勝手で、本当の俺を見てくれない!

この世は偽善者だらけだ!」

「はい、ストップ♪」

「ぐっ!」

毛神さまが昴君を押さえつけていた。

「あ。あんたは…」

「ダメだよ昴くん?翔ちゃんに乱暴したら」

「けどよ…」

「ダメ!」

からがるとお左位つける。

「この子は傷つけちゃだめだ!この子はこう見えてこの前まで男の子だったんだ」

「え!?」

毛神さまは俺の男の葫芦の写真を見せる。

「ご、剛毛…」

「嫌…毛…」

「はいはい、翔ちゃんも落ち着いて」

「これがこの子だって?」

「そうだよ」

「し、信じられるわけないだろ!!

「本当ですよ・・・」

鳩が豆鉄砲をくらったような表情を浮かべる。

「どうしても信じられないなら・・・見せてあげよう!

我が眷属たち!」

毛神さまがたからかに叫ぶとどこからともなく毛たちが現れた。

そして、毛の一本が俺の前によってくる。

「我が主・・・お久しぶりです」

「あぁ・・・」

どうやらこの毛がリーダー各のようだ。

「初めまして、素晴さん。我が主・・・毛利翔之介の毛です」

「どうか・・・俺たちの主・・・現お嬢のことを信じてやってください・・・。

お嬢は先日まで我々が苦しめて来ました。

辛い思いをさせてきました。

我々を再び剃ったあの日も、泣いていました。

“毛なんていらない”そう言っていました。

お嬢は優しい子だ。どうか・・・」

「なんなんだよ!じゃあ俺は似た境遇のこの子に暴力を振るっちまったのか?最低だ・・・

なぁ毛神さま、俺の毛とも話をさせてくれ」

「わかった」

毛神さまが召喚すると直ぐに昴の毛が一本抜け、動き出した。

「お初にお目にかかります、昴さま」

「お、おう・・・」

「あの毛が行っていることは事実です。

あの子はかつて男だった。

そして…剛毛の持ち主だった。

昴さまのように苦労されてきました。

そんな彼女があなた様の悲しみうや苦しみがわからないわけがありません」

「あの・・・元男で剛毛の持ち主だったなんて気持ち悪いですよね・・・」

「そっか・・・君も辛かったんだね・・・」

そっと俺を抱きしめる。

「昴くん・・・私は・・・俺は君を見捨てないよ・・・」

俺は彼の手に自分の手を重ねそっと唇にキスをした。

「二人とも・・・よかったね・・・。さて・・・もう二人に毛はいらないね・・・」

毛たちが消えようとした瞬間・・・

「待ってくれ!俺が受け止める!翔子の分も!」

「いや・・・君たちには我々が迷惑かけた分のお詫びをしないといけない。我々は去るべきだ」

「今まで気持ち悪いって言われ続けたけど・・・もう違う!翔子がいる!」

「だめだ・・・君たちは幸せになるんだ。さぁ時間だ・・・」

だんだんと昴の体毛たちが抜けていく。

俺たちはただ見送ることしかできなかった。

不意に涙が溢れた。

「ありがとう・・・毛たち・・・ごめんね・・・」

そっと俺は呟いた。

おそらく昴にも聞こえていない。





月日は経ち、翔子と昴の娘・・・真美は彼氏を両親に紹介していた。

「柴田佳祐です」

佳祐が挨拶をする。

彼もまた剛毛の持ち主だった。

「毛・・・ね」

「毛・・・だな」

「毛・・・です」

「すみません・・・」

「「「「・・・・」」」」

沈黙が続く。

「あの・・・」

「え?ああいいんじゃない?ね?パパ?」

「そうだな・・・毛だろうとなんだってこい!」

翔子と昴は佳祐を温かく迎えた。




「あの二人の娘の真見ちゃんは佳祐くんを拒まなかったか・・・。

いい子に育ったな・・・。

翔ちゃんと昴くんの娘だから当然か・・・。

真見ちゃんと佳祐くんに幸あれ」

毛神は次の悩めるイ毛メンの元へ向かった。





●あとがき●

皆様、お久しぶりです。おれんじじゅ~ちゅです。

3月以来の投降です。

今回は毛を題材に書いてみたわけですが、実は私自身が結構毛深くて悩んでいるのです。

最近いろんなところで毛蟹だのなんだの言われるので自虐ネタを混ぜてみました。

皆さんはどうでしょう?毛深くて“勘弁してくれ”なんてことはないでしょうか?

私も何度か剃ったりしました。

おかげでひどくなりましたけどね・・・。

今作も読んでいただきありがとうございました。


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