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第1話 今度こそ付き合い始めたんだよな?

新章開幕です


今回からは夏休み編で、一発目は遊園地にてデート!

……もう1つの小説も同じタイミングで遊園地……僕はそんなに遊園地に行きたいのだろうか?

夏休みが始まって4日が経った。

竜輝と冬菜が遊園地で遊ぼうと約束した日でもある。

竜輝は平日とはいえ夏休みで混雑しているだろうと予想していたのだが思ったよりも人は少なく入場ゲートには5分ほどで入れた。クラスメートには最低でも20分は掛かると聞いていたので拍子抜けだった。


「遊園地はもっと混んでいるこもだと思っていました」

「今日から隣駅でお祭りが始まるから少ないと思ったの。予想通りだよ」


遊び慣れていない竜輝はそもそも祭りがあることを知らなかった。

単純に冬菜は色々調べていて流石だなと思っただけだった。


入場した2人は遊び慣れない竜輝を冬菜が引っ張るかたちで遊園地を堪能していた。

今まで何度かナンパされたことのある冬菜はなるべく目立たない地味な少女を演出していたのでトラブルも起こらずに2人はアトラクションで遊んでいた。


「ジェットコースターに乗ってみない?」

「はい。初めて乗りますね」

「そうなんだ。じゃあビックリするかもね」


そもそも竜輝は幼い頃に家族で1度行ったきり遊園地に行ったことがないので大概のアトラクションが未経験に等しい。幼かったために覚えてないのだ。ジェットコースターは身長が足りなかった。


人気アトラクションにしては短い待ち時間で順番になり、2人で並んで乗り込んだ。

竜輝が無表情なためにカップルには『手を繋ぐと良いですよ』と耳打ちする女性案内員も何も言わなかった。付き合っていると思われなかったのだ。

コースターが動き始めると竜輝がそわそわし始めたので冬菜は弟のように感じた。


「不安なら手を握っててあげようか?」

「……大丈夫です」


竜輝は無表情なだけで年相応に意地っ張りな面を持っている。年上とはいえ女性に心配されて手を握られるのに無意識に反発していた。

冬菜は少し残念に思ったが仕方ないと気持ちを切り替え頂点に着くのを待った。

そして一瞬の浮遊感から一気に急降下するスリルの中で横に出していた手を強く握られるのを感じて苦笑した。




ジェットコースターを降りた2人は近くのベンチで一息ついていた。

強がってはいるが、竜輝が思った以上にダメージを負ったのだ。

ジェットコースターから降りてベンチに着くまで手を握りっぱなしだと気付いて慌てた竜輝が冬菜には微笑ましかった。


「初めてのジェットコースターはどうだった?」

「目が回りました」

「そっか。あ、飲み物買ってくるからここで待っててね」


冬菜を見送る形になった竜輝は自分が不甲斐なかった。今の場面では男がジュースを買いに行くものではないのだろうかと思ったのだ。

しかし遅かった。竜輝がモヤモヤと考えている間に冬菜は適当なジュースを買って戻ってきた。


「はい。炭酸は駄目なんだよね?」

「ありがとうございます。あ、ジュース代」

「後で良いよ。今は飲もう?」


半透明な蓋からストローが伸びたボトルを渡されて竜輝は申し訳なく思った。冬菜の優しさに甘えているようで自分に失望したが、今は冬菜に暗い顔を見せるものどうかと思い話題を変えることにした。

半透明の蓋から見える中身は紫色に見えた。


「葡萄ジュースですか?」

「飲んでみてのお楽しみ」


頭に疑問符を浮かべてストローから中身を吸った竜輝は、直ぐに咽た


「なっ、何ですかこれ?」

「期間限定の紫芋味なの。どんな味だったの?」

「……紫芋味です」


憮然とした態度で答える竜輝に冬菜はやり過ぎたと反省した。最近の冬菜は竜輝の無表情から感情を少しだけ読み取れるようになっていた。

これも師弟の絆だと冬菜は考えていたが、周囲からは流石に恋人のことは分かってるなと思われていた。

冬菜は以前に竜輝のことを鈍いと言ったが冬菜も鈍いといえた。彼女の友達は全員気付いていることだ。冬菜に告白しようとしていた人数は冬菜の予想以上に居たのだ。

そんな彼女は流石に予告も無しに妙なものを飲ませてしまった罪悪感と紫芋味のジュースへの興味からある提案した。


「ちょっと交換しない?」


そう言って差し出されるボトルを見て竜輝は少しだけ警戒している。

誰が見ても『妙な味なんじゃないだろうか?』と疑っているのが分かる表情だった。

冬菜はそれほどまでに表情豊かになった竜輝に感動したが自分の悪戯の酷さも実感した。しかし冬菜自身が飲んでいたのは普通のオレンジジュースだ。竜輝の表情を意識的に無視して紫芋味のジュースを無理矢理受け取った。


「うぅっ、変な味だね」


自分で買ったのにその反応なんだなと思った竜輝は冬菜から受け取ったボトルに口を付けた。それを冬菜が顔を赤くして見ていることに気付かずに。




(関節チューしちゃった!? でも無反応!?)


本当に興味本位で交換して、竜輝がストローに口を付けてから冬菜はようやく気付いた。

いくら竜輝がジェットコースターでダウンしているのが珍しく、妙な飲み物で普段は見せないくらいの大きな感情表現を見たからといっても無警戒だった。

冬菜としては関節チューくらいで竜輝が少しでも意識してくれれば儲けものだと待ち合わせの前には思っていたのだが綺麗サッパリ忘れていた。それくらい竜輝とのデートを楽しんでいた。

これから遊園地を出るまで無計画に竜輝を振り回して少しでも意識してもらおうと自分でも杜撰だと思う計画を立てていたのだ。

それで自分が意識していてはどうしようもないなと思ったがもう遅い。

1度意識し出して直ぐに気分を変えられるほど冬菜はサバサバしていなかった。


(そんなにサバサバしてたらこんな実験始めてないよね)


どうにか気分を切り替えた冬菜だが、顔の熱だけは切り替えられなかった。




(あ、これは普通のジュースだ)


竜輝は先程まで冬菜が口を付けていたものだということを考えもせずにストローに口を付けていた。彼が心配したのは飲み過ぎないうちに冬菜に返そうということくらいだ。

体育祭から夏休みに入るまでに竜輝は何度か冬菜と一緒に帰ったり図書室を訪れたりしていた。テスト期間には学年が違うのに一緒に勉強をしたりもした。

竜輝と冬菜の学校の図書室には防音の会議スペースのような部屋がありその中ならば話し合ってもいいとされているのだ。その部屋で2人だけで勉強しているのだから周囲からは完全に誤解されていた。

しかし、竜輝のクラスメイトは疑問に思っていた。『水曜日と土曜日は絶対に1人だけど何してんだ?』である。

冬菜も何となく聞きそびれたそれを、竜輝は話題として挙げたことはない。これが2人のデートに色々と波風を立てた。


(あれは、黒岩さんかな?)


ベンチから少し離れた所に、20代前半と思われる背の高い女性が居た。


ちょっとしたアクシデントで竜輝を意識しちゃった冬菜を余所に竜輝は大人のお姉さんに釘付け


……竜輝が誰かに釘付けって無理がある表現かもしれません

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