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第6話 何をしてるんだ?

時間は飛んで体育祭当日です

『これにて、体育祭の全プログラムが終了しました』


快晴に響き渡る放送を竜輝はボンヤリと聞いていた。

遊撃班は体育祭の間はテントの下に居られるので実は楽だと分かった。

偶に来る実行委員に従って力仕事を数回こなせば良いだけなのだから他の委員よりも優遇されてると言っていい。何よりも日陰に居られるのが良かった。

彼の隣では短パン姿の冬菜が片づけ物品の確認をしている。


「これで残りは結果発表だけだね」

「そうですね。先輩の予想は?」

「う~ん、途中経過を見る限り赤組かなぁ」

「自分の組じゃないですか」

「誰しも我が身が可愛いものなのっ」

「……正直ですね」

「良いの」


体育祭までの約1ヶ月、竜輝と冬菜はなるべく多くの時間を共有していた。理由はもちろん竜輝の矯正のためである。

周囲からは完全に付き合い始めたのだと誤解されているだろうと冬菜は思っている。同じ委員会で同じ係なのだ、誰も不思議には思わないだろう。


竜輝も少し変わった。

冬菜と長く話すようになったことで普通の会話をするようになった。

竜輝がよく会話を途切れさせてしまうのは一言足りないからだ。だが冬菜と話し続けるのに一言足りないと気付いた竜輝はそれを足した。

冬菜との会話を続けるようになって竜輝もクラスメイトの友人が増えた。今では休み時間を友人との雑談で使い切ることも多い。


しかし、冬菜の実験は全く進んでいない。


冬菜もそろそろ焦っている。まさかここまで何の進展もないままだとは思っていなかった。

体育祭の準備中は何かにつけて竜輝と同じ仕事をするように動いて話したりもした。どう見たって恋人か付き合う寸前の男女だろう距離間だったと思う。

それでも竜輝は無反応。

多少なりとも自分の容姿に自信を無くす冬菜だった。


『得点の計算が終わりました。これより結果発表に移ります』


各団が固唾を飲んで結果を待っている中、竜輝は冬菜に感謝していた。

最近ではクラスメイトと雑談するのも気に入っていた。それでも馬鹿騒ぎみたいなのは苦手だが、面白い本の話や学校行事の話は面白いものだと感じている。

会話の続かなかった自分がここまで話せるようになったのは冬菜の御陰だとお礼を言いたかった。


片付けが終わったらちゃんとお礼を言おうと決めた竜輝は結果発表に沸いている生徒たちを眺めている。

彼は赤組で徒競走やリレーなどで上位に食い込んでいる。冬菜と同じ団だったのも一緒に居られた理由の1つだ。

4位3位と発表され、残りは赤組と青組だけだ。


「でも木島君って足速かったんだね。リレーで黄組の選手抜いてるの見たよ」

「走るのは得意なんです。球技は苦手ですけど」

「そういえばハンドボール投げは壊滅的だって聞いたかも」

「学年平均の半分くらいでした」

「……本当に壊滅的な結果だね」


格好悪い話だったので竜輝は肩をすくめて結果を待つ。

録音されたドラムロールが終わり優勝は赤組だと告げられると歓声が沸いた。

勝者と敗者を分けるその光景に竜輝は遠いと感じていた。


「何で遊撃って発表のときもテントの中なんですかね?」

「ボヤカないの、裏方の宿命よ。皆と騒ぎたかった?」

「……考えてみると無理ですね」

「君が皆と騒いでるところは見てみたいけどね」

「来年までにそれくらいできるようになってると良いんですが」

「そうね。でも無理に合わせて疲れちゃうよりは良いんじゃないかな」

「……そうですね、無理はしません」

「よろしい」


これで体育祭は終了する。竜輝と冬菜の間にあった繋がりも薄れてしまうかもしれない。


「飯島先輩、片付けが終わったら時間貰えませんか?」

「え? うん、良い、よ?」

「良かった。じゃ、また後で」


実行委員の1年生男子は結果発表の後は物品の片付け、2年生女子は物品や倉庫の確認で作業が分かれているので2人はここでお別れである。

笑顔で去っていく竜輝はやはり特徴の無い男子だが冬菜はその表情が珍しいと知っている。竜輝の表情があまり変わらないのは冬菜にも直せなかったのだ。

しかし、冬菜はそれどころではない。


「飯島、このテントを畳むから早く作業に移れ」

「わっ、はいっ、行ってきます!」

「何を慌ててるんだ?」


遊撃組の3年生は頭を捻るが、直ぐにテントの片付けに勤しむのだった。




片付けの最中に、冬菜は竜輝にどこで待っていればいいのかを聞くと逆にどこにしましょうと言われてしまった。

誰も来ないだろう図書室前はどうか。テンパっている頭を総動員して導いた答えは悪くないかもしれなかった。


あの竜輝が冬菜に待ち合わせを求め、嬉しそうな顔をしていた。

それが冬菜を混乱させている。

今までそんなことは1度も無かった。本を読んでいるときですら表情がそんなに動いていないのだ。

それが満面の笑みだ。冬菜は勘違いしまくってどうしようどうしようと呟き続けている。周囲の生徒からは少し引かれている。


「飯島さん、どうしたの?」

「へっ、別に何でもないよっ」

「声、裏返ってるよ」

「ソンナマサカ」

「片言になってる」


一緒に作業していた委員から指摘されて余計にテンパっている自分はさぞ不気味だろうと自覚した冬菜はどうにか落ち着きを取り戻した。


「もしかして木島君と何かあったの?」

「あった、のかなぁ?」

「聞いてるのは私なんだけど」


もはや呆れられてしまった。


「分かんない。とりあえず明日には解決してるはずだから気にしないで」

「う~ん、なら良いけど、物品チェック欄、間違えてるよ?」

「あっ」


自分がどれだけおかしくなってたかようやく理解した冬菜だった。




(イベントの後で男子が女子に話があるっていったら、1つだよね?)


竜輝との別れ際にした約束は冬菜には告白にしか思えなかった。待ち合わせ場所を聞くのだってかなり勇気が必要だったのだ。それなのに竜輝はいつものボンヤリ顔である。

冬菜は今日ほど竜輝の無表情を羨ましいと思ったことはない。


(師匠をこれだけ動揺させて下手な告白だったら絶対に許してあげないんだからっ)


勘違いは竜輝には予想もできない形で進んでいくのだった。




(時間が空いてるみたいで良かった)


竜輝は冬菜ならば友人と遊ぶ約束をしていてもおかしくないと思っていたので時間が空いてると知って安堵していた。

冬菜は社交性もあるし顔も良いのだから引く手数多だろうと竜輝は思っている。それは事実なのだが最近は竜輝と一緒に居ることが多いので諦めている男子がほとんどだと竜輝は知らない。女子も竜輝と約束があるんじゃないかと思って誘わない日があるくらいだ。


(ともかくお礼は大事だ。しっかりと言おう)


冬菜の勘違いに気付くはずもない竜輝が、この後どうなるかはまだ分からない。


勘違いしている竜輝の明日はどっちだ!?

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