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第2-3章

 ――一戦目終盤

「革命です!」

「えっ、このタイミングで」

 真希だけが声を漏らした。どうやら強いカードだけを残していたみたいだな。

「そして8切りで9で上がりです! 一番です! 大富豪です!」

「俺の番だな。9だからダイヤの4で縛りだ」

 二人ともパスをした。

「Qのスリーカードだ! どうだ!」

 また二人ともパスだった。

「なら2で上がりだ。二番目だから富豪か」

 ここで姉妹の一騎打ちになった。

「私の番だね、お姉ぇ」

「いいから、早く出しなさいよ」

「2だから10で縛り」

「パスよ」

「じゃあ、Kのツーペア」

「・・・パスよ」

「じゃあ、8切りで1で上がり。残念貧民だ。お姉ぇおめでとう、大貧民」

「そりゃどもありがとう」

 ふてぶてしく答える。

 こんな感じで何度か続けた。

 流深ちゃんは始めから大富豪で、真希も始めから大貧民、俺と真央ちゃんは入れ替わり立ち代りだった。

 そして何度目かの対戦中にインターホンが鳴り響いた。

「あ、来た! 大富豪は終了ね」

 真希がカードを投げ捨て外へと向かう。

「あ、お姉ぇ負けてるからてズルイ」

 出前が届いた事と真希が放棄した事によって大富豪は終了した。

「流深ちゃん大富豪強いね」

「はい、ボクは強いです!」

「それに比べて真希は弱かったね」

「お姉ぇは今回惨敗でした」

 空笑いしながら真央ちゃんが答えてくれた。

「お待たせさまー」

 真希が両手でピザの入った箱を重ねて二枚もち、その上にフライドチキンのバーレルを乗せて入って来た。

「ピザとフライドチキン両方売ってる出前あるんだ」

 創真が疑問を唱えた。

「違うわよ、タイミングよく二つのお店の人が来ただけね」

「あーそうなんだ」

 感心して答える。

 よく見てみればピザとフライドチキンのパッケージが違っていた。

「それじゃ、パーティールームに行きましょう!」

 真希が元気よく歩き出す。

「行くです!」「いきましょう!」

 続いて流深ちゃんと真央ちゃんも歩きだす。

「あ、俺いくって。て、お前らトランプくらい片付けろって」

 散らばっていたトランプを纏めもとの入れ物に戻し、後を追う。

「創真、ドア開けて」

 追いつくやいなや命令された。

「はいはい」

 真希の両手が塞がっているので仕方がなく開ける。

 部屋の中にはダンボールが沢山積まれており、壁に沿った隅っこに階段があった。その階段を下りた先に広い部屋があった。

「おー結構広いんだな」

 創真が率直な感想を述べた。

「はい、広いですよ!」

 流深ちゃんが答える。

「いいから退いてー邪魔だから」

 真希に言われて避ける。

「ふう~重かった」

 持っていた食べ物を部屋の真ん中にあるテーブルの上に置いた。

「そういえば思ったんだけどさぁ」

 真希が創真に疑問を投げかける。

「何だ?」

「こういう重たいものって普通、男であるアンタが持つべきなんじゃないの」

 俺の事を思いっきり睨んでくる。

「アハハ、何のことかしら。一体全体なんのとだか、さっぱりわからないなぁ」

「あっそう、創真一回、上向いてみて」

「ん? わかった」

 言われた通りに上を向いてみる。

「特に何もないじゃ――  うっ」

 いきなり腹に鈍痛が走った。

「い、いきなりなにするんだよ」

「さあ、一体全体なんのことだか、さっぱりわからないなぁ」

「そ、そうですか」

 まったく同じ言葉を言われたのでこれ以上返す事ができなかった。

「全く、二人ともそんなにいちゃいちゃしちゃって」

 真央ちゃんが楽しそうにこっちを見ていた。

「だから、あーもう言いや、何度も否定するのも面倒だから」

 投槍に返す。

「できれば、助けて欲しかったよ、真央ちゃん」

「嫌ですよ。そうした方が楽しそうでしたし」

 屈託のない笑顔で答えられた。

「私は、恵理奈さん迎えに行ってくるわね」

「はーい、行ってらっしゃい、お姉ぇ」

「んじゃあ、その間に俺たちは、これ並べとくか」

「そうしましょうか」

 真央ちゃんが頷く。

「ボクも手伝います!」

 皆で手分けして紙皿や紙コップなどを並べる。

「恵理奈さん連れてきたよー」

「待っていたです!」

「丁度並べ終えたところですよ」

 真希の後に流深ちゃん真央ちゃんが続いた。

「それじゃあ、始めるから皆席に着いてー」

 真希が促す。そして、全員が席に着く。

 机の一番奥に恵理奈さん、入り口から右側の奥から真希、隣に創真、左側に奥から流深ちゃん、隣に真央ちゃんが座る。

「それじゃあ、創真の合格を祝してかんぱーい」

 真希が紙コップを高く掲げる。

『かんぱーい』

 皆も続いて紙コップを掲げる。そして、全員注がれていたオレンジジュースを飲み干す。

 そして、一つ驚いた事を真希に小声で訊いてみる。

「恵理奈さんってこういうのに意外と乗ってくれるんだな」

「そうよ、みんなは恵理奈さんはこういうの乗らないって思うみたいだけど、案外そういうことはないのよ。まぁ私たちと居る時だけだけどね」

「お前らなんか言ったか?」

 恵理奈さんが半目でこっちを睨む。

「「いえ、なにも」」

 見事にハモった。

「ボクはピザを貰うです!」

 流深ちゃんが勢いよくピザに手を伸ばす。

 流深ちゃんはあれで食べれるのか? と思った。そりゃそうだろう、手の先には明らかに余っている白衣の裾があるからだ。

 だが、そんな疑問はすぐさま解決された。白衣が垂れ下がったままで器用にフォークを使ってピザを食べていた。垂れた袖を汚すことなく。

「あれ、凄いな」

 真希に訊いてみる。

「あれって、なによ?」

「あれって流深ちゃんの食べ方」

「ん、あ、本当だ凄いね」

 どうやら今まで気づいていなかったようだ。

「そんなこと、どうでもいいから、これを、食べなさいっ」

 真希が俺の口に無理矢理フライドチキンを突っ込んできた。

「ひぎがりごんなもほふっこんで、っへこへふまっ(いきなりこんなもん突っ込んでってこれ、美味っ)」

「そうでしょう」

 笑顔でこっちを見てきた。

(笑顔で返した事よりさっきの言葉を理解してくれた事の方が凄いな)

「よし、なら真希も食えっ」

 今度は俺が真希の口にピザを突っ込む。

「んあ、美味しいわね、流石私が注文した店だけのことはあるわ」

 何故か真希が誇る。

「真希がえばるような事していないだろう」

「私のおかげでこんな美味しいもの食べれるんでしょ?」

「そーですね」

 これ以上何を言っても無駄なのでここで話を切る事にした。

「お兄ぃジュースなくなってますよ」

 言いながら真央ちゃんがジュースを注いでくれた。

「お、ありがとう。真央ちゃんは誰さんと違って気がきくよなぁ」

「どういたしまして」

 真央ちゃんが笑顔で返す。

「誰かさんって誰のことかしら」

 その誰かさんが俺にじっととした目線を向けてくる。

「さぁ誰でしょうか。本人が一番わかっていそうですけど」

「んじゃあ、思い当たる節が一切ないから私以外の誰かね」

「お前だろうが!」

「やっぱり私の事だったのね」

 笑顔で怒った顔を俺に向けてくる。

「とりあえず、一発殴る!」

「や、止めろって! そんくらいの事で怒るなよ」

 椅子から立ち真希が居る方と反対側に後ずさりする。そこに恵理奈さんが一言。

「能力は使うなよ」

 ピザを食べながら真希に注意する。

「恵理奈さん注意だけじゃなくて止めてくださいよ!」

「自業自得だ」

 バッサリ言い捨てた。

「んじゃあ、覚悟はできたかしら?」

「いや、できないから、てか一生できないから」

 そう言いながらまた後ずさりをする。

「そんなの、知らん!」

 言い放ち俺に向かって走り出す。

「いや、知ってくださいよ!」

 真希から逃げようとしたが脚を躓かせて転んだ。

「よし、踏み潰す」

「げはっ」

 文字通り踏み潰された。

「痴話喧嘩ならよそでしてくださいねー」

 真央ちゃんがこっちをニヤニヤと見ながら茶化す。

 そんなこんなで一時間程経過した。

「あれーもう飲み物なくなっちゃったじゃない」

 真希がペットボトルを逆さまに振りながら中を覗く。

「しょうがない私が買いに行くかぁ」

「いいよ、俺がいくからさ」

「アンタ、まだここら辺の地理全然分からないでしょ? そんなのに行かせる訳にはいかないの。それに今日はアンタが主役なんだから、ここにいなさい」

「わかったよ、俺はここで待つよ」

「お姉ぇ私も行こうか?」

「いいよ、もう外くらいからさ」

「そう、わかった」

「飲み物適当でいいでしょ?」

 真希が皆に訊く。

「はいです!」「いいよ」「任せる」

 流深ちゃん、真央ちゃん、創真が答える。

「んじゃあ、行ってくるわね」

 真希が部屋から出て行く。

「真希も気を使うって事できるんだな」

「お姉ぇは結構気が利きますよ」

「ふ~ん、俺にはそんな仕草全然見せてくれないけれどなぁ」

「まだツンツンしているだけで、いずれデレてくれますよ」

「そんな日がくるのかね」

 笑いながら返す。

「もう、ご飯がほとんどないです!」

 テーブルの上に乗っているものはほとんど食べ終えられていた。

「仕方がない、お菓子でも持ってきてやろう」

 恵理奈さんが椅子から立ち上がり部屋を後にする。

「わ~い、ありがとうです!」

「その代わり、明日のおやつはなしだ」

「う~ でも背に腹は変えられないです!」

 頬を膨らませて唸っていた。

「なら、待っていろ」

 心なしか恵理奈さんの顔がいつもの無表情ではなく、少し微笑んでいたような気がした。そしてすぐに戻ってきた。

「ほら、お前たちの分だ」

 流深ちゃんの分だけではなく、俺と真央ちゃんの分も前に置かれた。

「ありがとうございます」「ありがとうです。」

 俺と真央ちゃんがお礼を言う。

「わ~い、お菓子です!」

 流深ちゃんはもう袋を開けて食べ初めていた。続いて俺と真央ちゃんも食べ始める事にした。

 そして、真希が帰って来るまで雑談をしているのであった。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「うわぁ、思ってたよりも寒いわね」

 買出しに行くために外に出た真希が率直な感想を漏らす。

「さすがに四月だからって夜はまだ肌寒いか。早く買って帰ればいいかぁ」

 誰に語るでもなくその場で一人ぼやき、歩みを進める。

 五分ほど歩き最寄のコンビニへと辿りつき、中へと入る。

「さてと、何をかおうかなぁ。あの二人は炭酸でも買っとけばいいと思うけど、恵理奈さんと創真のはどうするか」

 とりあえず1.5リットルのコーラを持っているかごの中へと入れる。

「どうしようかなぁ」

 綺麗に並べられているジュースを眺めながら考えを巡らせる。

「まぁ、なんでもいいか」

 無難なところで1.5リットルのリンゴジュースをかごの中に入れる。

「後はお菓子を適当に買っていけばいいかな」

 と、目に留まったお菓子をかごの中へと放り込む。

「よし、これで完璧っと」

 そして、レジにかごを置き、支払いを済ませコンビニを出る。

「買うものも買ったし、寒いから早く帰りますか」

 どこかいつもと違う雰囲気の夜空の下を足早に駆ける。



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