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第1-5章

「あー疲れた」

 リビングに入るなり座り込む。

「なんか、妙に騒がしくなかった?」

 テレビを見ていた真希が訊く。

「気のせいじゃないか?」

 答えながらテーブルへと目をやる。

 そこには、和洋折衷色々な料理が並べられていた。そして、一番、目を疑ったことは。

「黒焦げの何かがない!」

 思わず声に出してしまった。

 すると、真央ちゃんが笑いながら入ってきた。

「創真さんがいった後、お姉ぇはフライパンを私に渡したからその事態は防げました」

「ああ、やっぱり前科あったんだ」

「だからお姉ぇは禁止なんです」

「そんなことどうでもいいから早く食べましょ」

「はいはい」

 嘆息しつつも、真央ちゃんが最後に持ってきたご飯を並べる。

「それじゃあ、食べましょうか」

 真希が声を掛ける。

「「「いただきまーす」」」

(久しぶりのご飯は賑やかに、楽しく食べれそうだな)

 とりあえず、一番最初に目に付いた煮物へと箸を伸ばす。

「うわ、これ、うま!」

 そして、次々目に付いた料理へと箸を伸ばす。

「これ、全部めっちゃ美味しいよ。真央ちゃん本当に料理上手だね」

「だから、私のお墨付きって言ったでしょ」

 なぜか、真希が誇っている。

 無視して真央ちゃんに話しかける。

「これなら、絶対良いお嫁さんになれるよ」

「それじゃあ、創真さんのお嫁さんになっちゃおうかなっ」

 創真のお腹の辺りに飛びつく

「それじゃあ、お願いしようかな」

 真央ちゃんの頭を撫でる。

「創真! 私の妹に何してんのよ!」

「あれ~まさかお姉ぇ、妬いてるの?」

「べ、別にそんなんじゃないわよ」

 ご飯を黙々と食べ始めた。そしてすぐに。

「ご馳走様」

(早、もう食べ終わったのか)

「じゃあ私お風呂入ってくるから」

 真希がリビングを出て行く。必然的に真央ちゃんと二人きりになった。

「創真さんってお姉ぇこと好き?」

「んまあ、好きか嫌いかだったら、好きだよ」

「どこら辺が?」

「あの性格かな」

「なるほど、暴力を振ってくる人が好きってことは創真さん、ドM?」

「ちがうわ! 好きなのはあの親切な性格だ。てか、普段から暴力的なんだ」

 半笑いしながら訊く。

「まあね。でも特に創真さんには強めかな? さっき、思いっきり殴られてたでしょ」

「ああ、見られてたんだ」

「でも、お姉ぇに殴られても怒らないであげてね」

「なんで?」

「お姉ぇは嫌いな人には殴る以前に、関わらないようにする人なの、そんなお姉ぇが殴るのは、自分が本当に思ってる事を表現するためだと思うの。お姉ぇなりの愛情表現みたいなものだから、受け取ってあげてね」

 空笑いしながら答える。

「それじゃあ、俺も愛情表現として殴り返してみるか」

「それは、やめた方がいいよ。倍返しで来るから」

「こっちからはだめなんだ」

「うん。殴られるとイラっとするんだって」

「確かにそう言うタイプだな、あれは」

「よくわかってるね、お兄ぃ」

 屈託の無い笑顔が向けえられる。

 そして、放たれた言葉をなぞって驚く。

「お兄ぃ!?」

「お姉ぇと結婚したらそうでしょ。だから、お姉ぇのことお願いします」

 ぺこりと頭を下げ笑顔が向けられる。

「確かにそうだけど。俺たち付き合ってもいないし」

「そうならない予定もないからいいですよね。お兄ぃ?」

「まぁ、呼び方はなんでもいいけど」

(やべぇ――! 結構萌えた。お兄ぃなんて呼ばれるのは初めてだ。それに真央ちゃん結構可愛いんだよな。確か小6って言ってたけ。いや、俺が決してロリコンって訳じゃなくてな、ホント普通に可愛いんだよ。将来有望だな。うん)

「どうしたの? ボーっとしてるけど?」

 自分の世界に入っていた創真のことをつつく。

「ん? いや、なんでもないよ」

(危ない危ない。完璧に自分の世界に入り込んでしまうところだった)

 そして、その後も他愛もない話をし続ける。

 と、そこに風呂から上がった真希が髪を拭きながら入ってくる。

「次、どっち入るの?」

 もう、結構時間が経っていたのか、話に耽っていて気づかなかった。

「お兄ぃ先に入ちゃって下さい。私、食器を洗ってますから」

 ちょっと真希の前でお兄ぃは、と言おうと思ったが真希が無反応だったので止める事にした。

「あっ、俺そういえば寝巻きとか無いんだった」

「そうなの、んじゃあちょっと待ってて」

 真希が部屋を出て何処かへと向かう。

 階段を上る足音が聞こえたので、二階の何処かの部屋だろう。

 今度は下る足音が聞こえて、真希がリビングに戻ってきた。

「はいこれ」

 一着の服が差し出される。

「これ、ですか?」

 差し出された物はどう見ても、女性物のパジャマだった。

「そう。ってのは冗談でこれね」

 今度は男性用の寝巻きが渡された。

「はい、真央」

 さっきのパジャマが真央ちゃんへと渡される。

(よかった、本当に着させられるかと思った)

「ありがと、お姉ぇ」

「じゃあ、俺は風呂に入ってくるわ」

 手を振りながらリビングを出て行く。

「じゃあ、私は食器を洗うから」

 真央ちゃんがキッチンへと向かう。

 必然的に真希が一人でリビングに一人で取り残された。

「ちょっと、なんか置いていかれるの嫌なんだけどー」

 真央に付いてキッチンに行く。

「よし、私が手伝ってあげるわよ」

 真希が張り切る。

「えー」

 真央があからさまに嫌そうな声を漏らす。

「何よ、その嫌そうな態度?」

「だってお姉ぇっ絶対食器落とすでしょ」

「そんなことないから大丈夫」

 笑顔で親指をグッと立てる。

「その笑顔の自身はどこからくるんですか」

 呆れ気味に突っ込む。

「よし、それじゃあ」

 早速、お皿を手に取る。が、やはり落とした。

「あっぶない!」

 急いで風を起こし、食器を中に浮かす。

「・・・・・・」

「何、そのやっぱり見たいな視線は」

 肩に手を当て諭すように一言。

「お姉ぇせめて一枚位は洗おうよ」

 そして、もう一言。

「邪魔だからあっちでテレビでも見てて」

 真希をリビングへ行くように促す。

「はい」

 真希がショボンとした、重い足取りでリビングへと歩き出す。

 そして、リビングに着くなりテレビを見始める。

 そのまま会話がないまま、時間が流れ、真央が食器を洗い終え、リビングに赴く。タイミングよく創真が、お風呂から上がってきた。

「いや~久しぶりの風呂は気持ちよかったぁ」

 髪を拭きながら、さっぱりしたと言う感じの顔をしていた。

「それはよかったね」

 何故か真希が不機嫌気味に返す。

 事情を把握するために真央ちゃんに耳打ちで「何があったの?」と、訊く。

「さっき、食器洗うのを手伝ってくれようとして、お皿を落としかけてたから、向こう行ってて行ったからかな」

「そんくらいで」

 呆れつつ笑うが、らしいと思った。

「では、私お風呂に入ってきます」

「はい、行ってらっしゃい」

 さて、真希に話しかけてみるか。

「真希?」

「何」

「今日泊めてくれて本当にありがとうな」

「まだ、そんなこと気にしてたの。友達なんだからそんなこと気にしなくていいよ」

「真希にとっては、そんなことなのかも知れないけど、俺にとっては大きな事なんだよ。泊めてくれたことだけじゃない、今日一日あったこと全てに感謝したい。こんな風に普通な感じの生活をしたかった。そして、真希は叶えてくれた。だから、ありがとう」

「べ、別に感謝なんかどうでもいいから」

 照れているようにも見えた。

「それに、私は叶えてあげてなんていないよ。強いて言うなら、きっかけを作ってあげられたに過ぎないから。それに、感謝するとしても早すぎるわよ。たった一日でそんなに感謝されちゃこれから学校生活が始まったらどうするの? こっちが疲れるから止めなさい」

「うん、そうだな」

 空笑いをしながら答える。

「そうだ」

 いきなり真希が言い出した。

「学校行くの決まったとして、その後何処に泊まる気?」

「あっ」

 そういえばそうだ、まだ決まってなかった。

「行くあては?」

「ないです」

「じゃあ、ずっとウチに泊まってく?」

「それは流石にご両親に迷惑じゃ・・・」

「大丈夫よ、親いないし」

 え、なんか訊いちゃいけないこと聞いた気が・・・

「ごめん」

「何で謝るの?」

「だってご両親のこと・・・」

「ん、ああ、ちょっと言い回しが悪かったわね。正確には家には帰ってこないの」

「どういうこと?」

「私の親はどっちも最先端区域で働いてて帰ってこないの」

 亡くなってるとかじゃないのかぁ、と心の中で安堵する。

「凄い方なんだな」

「まあね」

 誇らしげに答える。

「いつ向こうにいったの?」

「確か私が八歳位の時だからもう七年も会ってないのか」

「そうなんだ・・・」

 だからさっき誇らしげにしていたのだけれど淋しげにも見えたのか。

 このままだと、どんどん暗い方に行きそうなので話しを変える。

「これからは俺もここで暮らすわけだし、楽しくやっていこうな」

「そうね」

 そして、テレビを見ながら駄弁り始める。

 駄弁っていたら、最後にお風呂にはいった真央ちゃんが戻ってきた。

「真央、話しあるから来て」

「何? お姉ぇ」

「創真が此処で暮らすことになったから」

「え? ・・・!」

 呆然してから少しして、いきなり目を輝かす。

「ということは同棲! 結婚間近! うん、お姉ぇ仲人は私に任せてね!」

「違うわ! それに、仲人頼むなら恵理奈さんにするわ!」

 大声で即効で否定する。

「わかった、恵理奈さんに仲人頼みに行ってくるね!」

 今にも飛び出して行きそうな所を真希が急いで止める。

「行くなー! それに私たちまだ15だから結婚できないし」

「なら先に式だけでも挙げよう!」

 携帯を取り出し何処かへ電話を掛けようとした時に、真希が携帯を奪う。

「だから、式も挙げないし、今後もそんな予定はない!」

「もぅ~ツンデレなんだから」

 真希の事をツンツンつついている。

「いつデレた!」

「そんなに恥ずかしがらないでいいのに」

 こんなやり取りを俺はずっとにこやかに眺めていた。そして、申し訳なさそうに話し掛ける。

「あの~いつその会話終わるんですか?」

「元はと言えばアンタが全部悪いんだから!」

「えっ!? 俺がいつ何をした!?」

「いいから、アンタのせいなの!」

「はいはい、そういう事でいいですよ」

 呆れ気味に嘆息する。

(まったく持って意味のわからない理不尽な事で責められたのか。はぁー)

「それよりもう寝たいんですけど」

「もうそんな時間? んじゃあ寝ますか」

「で、俺は何処で寝ればいいでしょうか?」

「外とお風呂とトイレの何処がいい?」

「まさかのその三択!? せめて普通の部屋で寝させて貰えませんか?」

「う~ん、同じ階で寝たら忍び込んで来そうだし・・・」

「するか!」

 とりあえず、全力で否定する。てか、真希の中では俺は、そういう認識なんですか。

「じゃあ、此処で寝る? そのソファー、ベットにもなるから」

「まあそういうことならいいよ」

「じゃあ私たちは上で寝るから。おやすみ~」

 真希が部屋から出て行く。

「おやすみなさい」

 真央ちゃんも続いて出て行く。

「おやすみ~」

 最後に俺が答える。

 そして今日という一日が終わろうとする。

 今日は今までの人生の中で一番楽しい日だったな。振り返り評する。

 でもこの程度で満足していちゃ駄目なんだろうな。

 学校に行けるようになればもっと楽しいはずだ。そのためにも明日は頑張らないとな。

 明日のためにも早く寝るか。うん、寝よ。

 そして、夜の静寂を感じながら眠りの世界へと赴く。


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