第1-3章
また、意識と言うか、なんていえば良いのかわからない感覚が飛ばされた。
どうやら意識が戻ったようだ。
「あー楽しかった」
満面の笑顔で真希が、ヘルメットとゴーグル外して立ち上がった。
創真もヘルメットとゴーグルを外して一言叫ぶ。
「殺す気か―――――!」
こんなに大きな声は出したことが無いと言うくらいの声を出した。
だが、当の本人は「ん、なにが?」っと、見当がついていなかった。
「あんなもんくらったら、普通死ぬわ!」
「そんなことないから、大丈夫、大丈夫」
「いや、でもめっちゃ痛かったし!」
「最初に痛みはあるって言ったじゃん」
「言ってなかっただろ!」
俺に向けて指を指して一言。
「聞いていなかったアンタが悪い」
「絶対にそんなこと言ってな――」
「それにしても、創真強いわねぇ」
俺の言葉を無視いて話し始めた。
「初めてって言った割には強すぎる」
「確かに強いな」
いつの間にか恵理奈さんがいた。
「それによく真希の攻撃を完璧に見切ったな」
「ああ、確かに。アンタ、もしかして風使いなの?」
訊かれたので「違う」と答えた。
「じゃあ、なんでわかったの?」
「実は俺、目がめっちゃ良くてな、それで何となく見えるんだよ」
「えっ、すごっ」
真希が目を見開いて驚いていた。
「そんな、すごいのか?」
「すごいことだよ! だって、風使い以外普通、私の攻撃わからないのよ」
「そうなんだ。でも、俺じゃなくても避けれると思うよ」
「どうやってよ?」
「能力を使う時ってイメージするのが重要だろ」
「んまあ、そうだけど」
「それで真希は攻撃する時、いつも手で刃をイメージするように、腕を振ってたじゃん。だから、その先を辿って行けば攻撃が来る場所もわかるってこと」
「ふ~ん。じゃあ横から放ったやつは? あれは見えてないと避けれないと思うけど?」
「それはさ、真希の目が右から左へと動いていたからだな」
「なんでそれだけでわかるのよ?」
「普通、戦闘中に余所見しないしだろ。それに、生えてた草の上が切れながらこっちに来てたからだな」
「よく見てるわね。それじゃあもう一つ」
素直に関心した後、何かを訊く。
「私の後ろに回りこむ直前、消えなかった?」
「ん、いや、消えてないけど」
「絶対消えてた!」
物凄い剣幕で迫ってくる。
「き、気合で頑張った」
勢いに押されつつ答える。
「んまぁ、それで納得しといてあげるわ」
「じゃあ今度は俺からの質問な」
「いいよ、何?」
「トーナメントってのは、何なんだ?」
「それわね、この仮想戦闘器を使った大会よ。最初は学校代表と、一般参加の地域代表を決めて、次は地区、次はエリア代表を決めて、最後は各エリア代表たちによる決勝リーグがあるの」
「ふ~ん。結構大きい大会なんだな。真希は参加したのか?」
「したわよ。私は個人戦で地区まで行ったけど、飽きちゃって途中で辞退したの。恵理奈さんと流深はタッグ戦で地区まで行ったけど、私と一緒に辞退したの」
(つまりは、楽しめる相手がいなかったことか)
いきなり真希が話を変える。
「そういえば、創真の能力ってなんなの?」
「え、俺の能力?」
「うん、そう」
「なんなんだろうな。調べたことないから、わからないんだよ」
「え、何で? だって学校の能力検査で必ず調べるじゃない」
本当に不思議そうな顔をしていた。
「俺、学校って行ったことないんだよね」
頭を掻きながら、寂しげに笑う。
「あ、そういえば・・・」
創真が施設にいたということを思い出していた。
「でも、施設って言っても学校くらいはいけるでしょ」
「まぁ、普通の施設とかなら学校にも行けていたのかもな・・・」
「そんな、どんな所なのよ! 場所教えなさい! 文句言いに乗り込んでやる」
本当に今にも乗り込みに行きそうな勢いだった。
「無理だし、やめた方がいいよ」
「なんでよ! 学校も行かせないとか、どう考えてもおかしいでしょ」
俺なんかの為に本気になってくれていた。
こんなことは初めてだった。
「その気持ちだけで十分だよ。ありがとう」
何なんだろうこの気持ち。
人に心配してもらう、と言うことが初めてだから、モヤモヤしてるのか? なぜか目頭が痛くなってきた。
「本当に、ありがとう」
目の辺りに突然熱いものが込みい上げ、なぜか涙が出てきた。見られたくないので顔を伏せた。
「どうしたの! 創真?」
「なんでも、ないよ」
「だって泣いてるじゃない」
「自分でもわからないんだ」
「そう・・・」
真希が創真の肩に手を置いて顔を覗きこんできた。
「ねぇ、創真」
優しい声だった。
「辛いこととかあったら相談しなさい。必ず私はあなたと一緒に悩んであげるから。苦しんであげるから。その悩みが解決するまで私は絶対あなたに背を向けない。逃げない。だからいつでも頼りなさい。わかった?」
何も考えず素直に頷いていた。
「でもなんで、俺のことをそんなに気にかけてくれるんだ? まだ、出会ったばかりだって言うのに」
真希が諭すように言う。
「あのね、出会ってからの時間なんてものはどうでもいいの。そんなものよりも、今、自分が相手をどう思ってるかってことが重要なの。今、私は創真には辛い思いをして欲しくない。だから、辛かった、苦しかった、そんなのものが無かったって思えるくらい、楽しいこと、面白いことを作っていきたいって思ってるの」
(俺のことをここまで真剣に考えてくれるなんて)
止まりかけていた涙が、戻ってきた。
「それにね、困っている人がいたら助ける。ただそれだけのことよ。だからもう泣かない、ほらいい顔がだいな・・・しでもないけど。まあ、はい」
そこは、いい顔って言ってよ! と、思いつつも差し出されたミニタオルで顔を拭く。
「あのさあ、一言言っていい?」
「何?」
「このタオル、臭いんですけど・・・」
「えっ? ・・・あっ! アッハハハ」
何かを思い出して、急に笑い出した。
「何で笑ってるの? 笑うところ無かったでしょ!」
折角の感動的なムードが一気に晴れた。
「だってさ、それ、さっき、かー君出す時に使ってたじゃん」
爆笑しながら答えを出す。
「あーだからかって、だったら別のくれればいいじゃん!」
「だって私、タオルそれしか持ってなかったんだもん。しょうがないじゃん。それはかー君を勝手に手品に使った罰だと思いなさい。自業自得よ。うん。」
罰だったらその直後殴られた気がするんだが、まあこのことを言っても話が面倒臭くなりそうなのでやめた。
笑い涙を拭って真希が話し出す
「それじゃあ、その施設の場所を教えなさい!」
「この話の流れで、なんでそうなる!」
「もう、創真のこととか関係なく、私個人としてそこが許せないの! だから、喧嘩の押売りに行く訳」
「いや、やめた方が・・・」
「嫌、やめない。絶対に潰す。だから、場所を教えなさい!」
物凄い剣幕で迫って来た。
「んじゃあ、教えるけど、たぶんそこまで行けないと思うよ」
「いいから言いなさい」
重たい口調で言う。
「場所は、エリア35より先のどこか」
「え?」
さっきまでの勢いが嘘のように静まり返ってく。
「エリア35って、あのエリア35?」
目をパチクリさせている。
「ああ。そうだよ」
エリア35――並立空間を大きく四つに分けた際、最先端区域に当たるのが、エリア35以降である。
ここでは、様々な実験、研究が行われており、並立空間を支える科学技術の結晶である。
セキュリティーがかなり頑丈な為、侵入は不可能と言われている。
一部の者しか出入りができない為、一般人は中がどうなっているか知らない。
「エリア35にそんな児童施設みたいなのってあるんですか?」
さっきからずっと無言で二人のやり取りを見ていた恵理奈さんが答える。
「わからん。私は中に一度入れさせてもらったことがあるが、そんなものは見ていない」
「じゃあそこから逃げ出すことって出来そうですか?」
「物を破壊することに長けた、上位の能力者なら可能かもしれん」
「だとすると浸入は無理かぁ」
「だから侵入することはやめようって。それに俺はもうあそこには関わりたくないし」
「そう・・・じゃあしょうがない。諦めるわよ」
よかった。諦めてくれた。
「あそこに招待されたってことは、恵理奈さんって優秀な科学者なんですね」
「まあな」
「では、なんで向こうで研究所を持とうと思わなかったんですか? 向こうに行けば、ここよりも凄い設備を得ることができたのに」
「私はあそこのやり方が気に食わなかったからここに来た。向こうに居たら、歯車の一部で終わりそうだからな」
「そうですか」
真希が「創真」と、尋ねてきた。
「何?」
「アンタ、学校に行きたい?」
「まあ、行けることなら行きたいよ」
「よし! それじゃあ行こうか」
「え! 行けるの!?」
「ええ、たぶん。大丈夫ですよね? 恵理奈さん」
なぜ、恵理奈さんに訊くんだろうか?
「問題ないだろう」
「それじゃあお願いします」
恵理奈さんが携帯を取り出して何処かへ掛けだした。
唖然として二人のやり取りを見ていた俺に、真希が説明する。
「恵理奈さんのお姉さんは、私の通ってる学校の理事長もやってるから、編入するくらいは簡単に出来ると思うよ」
「そうなんだ。それっていろんな会社を経営しているって言う人と同じなの?」
「そうよ」
「すごいなそれ。ってことは私立か?」
「そうね、でもいいところよ」
そんなこんなで恵理奈さんが戻ってきた。
「大丈夫だそうだ」
「お、よかったじゃん」
(マジか、学校行けるのか)
「ちゃんと、編入試験さえ受ければ問題ないそうだ」
「あーそうなんだ」
真希がお気の毒様っと言いたげな視線をおくってくる。
「創真、アンタ勉強できるの?」
「んんまぁ、それなりには」
「結構難しいから大変かもよ。私なんか合格ギリギリだったし」
「正確にはコネを使って補欠合格にしただがな」
恵理奈さんが正す。
「まぁそうなんですけどね」
頭を掻きながら微笑む。
「そうなんだ」
俺は苦笑いをする。
「そういえば、編入試験っていつなんですか」
恵理奈さんに尋ねる。
「明日だ」
「え!? 明日てすか」
「そうだ、問題あるか」
「いえ、ないです」
「それと、適当に偽造書類を作るから別の苗字を決めろ」
「何でですか」
「桜空と言う苗字はそんなに多くないからな。カモフラージュだ」
「別に何でもいいですよ」
「それじゃあ」
いきなり真希が割り込んできた。
「面倒くさいし、もう、佐藤とか田中でいいんじゃない?」
「そういう決め方は全国の佐藤さん田中さんに失礼だろ!」
「あ、そう。じゃあ、アンタが勝手に決めなさい」
「う~んじゃあ、平井とかは?」
「まあ、別に悪くないんじゃない? じゃあ平井に決定!」
「わかった。平井でいいのだな。それで書類を作っとく」
「はい、お願いします」
「それともう一つ、真希とは従兄弟と言う事にしておくからな」
「なぜですか?」
「その方が何かと都合がいいからだ」
「そうですか・・・」
真希も嫌そうな顔をしたが、何も言わないと言うことは賛成と言うことだろう。
「じゃあ頑張れ」
言ってどこかへいった。
「はぁ~明日かぁ~」
ため息を吐いて、肩を落とす。
「まあ、ドンマイ。何なら私が勉強教えてあげようか?」
と、肩を叩く。
「別にいいよ、真希に教わっても意味なさそうだし」
「何? 私が馬鹿だとでも言いたいの?」
「そんなこと言ってません」
睨まれたので目を逸らす。
「ただ、今から勉強しても余り意味がないと思ったので」
「本当に?」
「はい! そうです」
「ん~ならいいけど」
とりあえず、睨むのはやめてくれた。
「それじゃあ、もうそろそろ家にくる? それとも、もう一戦やる?」
「真希の家に行こう!」
即答した。
(もう一戦するのは勘弁して欲しい。あんなもん、何回も食らっていられるか! 流石に次からは避けさせてもらう)
「そう… じゃあ行こうか」
少しガッカリしていたが、行く気になったようだ。
そして、研究所の外に出た。
「う~ん」
創真が大きく伸びをした。
「なんか、久しぶりの外って感じだ」
風を気持ち良さそうに浴びている。
「久しぶりってそんなに日にち経ってないでしょ」
「そうなんだけど、こんな伸び伸びとした気持ちで外にいるのってかなり久しぶりなんだよ」
(そういえば、エリア35以降って全部建物中なんだっけ。それに、逃げて来たんだったら、ゆっくりしていられなかっただろうしね)
「よし、それじゃあ少し散歩でもしてから家に行こう」
「え、まあ、いいけど」
少し不思議そうに真希を見ていたが、気にしないことにした。
「どっか行きたい場所ある?」
「ここら辺わからないから、真希に任せるよ」
「そう、じゃあ付いて来て」
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