第1-2章
そして、飛んだ何かが戻ってきた感覚がして目を開いた。
「わぁっ!」
かなり驚いた、さっきまで部屋の中で椅子に座ってたのに、いつの間にか何処かの公園にいた。
「創真、五月蠅いって」
「あ、ごめん」
先に来ていたのであろう真希が耳を塞ぐ。
「まさか、そんなに驚くとは思ってなかったよ」
笑いながら言う。
「始めてだったもんで」
頭に手を当てながら言う。
「さぁ、談笑はここまでよ! 早く始めましょう」
「え、でも、友達を殴るのは・・・」
「いいのそんなことは、どうせ怪我しないんだし。それに、創真がやる気ないなら・・・」
無言になって右側の近くにあった木の方を向いて勢よく、右腕を上から下へと縦に振った。
すると・・・
木の枝や葉が綺麗に切断されていた。
「一方的に痛めつけるから☆」
今までの中で一番の笑顔だった。
(ヤバイ、これは本気でやらないと駄目だ。適当に負けたら、これが終わった後、さっきの攻撃をされそうだ)
冷や汗が止まらなかった。
「そ、そういえばこれって、勝敗はどうやってつけるの?」
簡単に勝敗が付きますように! 心の中で必死に祈っていた。
「簡単よ、相手を気絶させるなりとりあえず戦闘不能にすればいいの。後は・・・」
(後は何! とりあえずその方法は余り取りたくない)
「ギブアップもありだけど、認めないから」
(ああ、そうですよね、そう言うと思ってました)
俺の中での真希の性格認識の、明るくてだいぶ強引な性格に、ドSと言うのも追記しとこう。
「じゃあ、覚悟は出来た? いくよ!」
真剣な声色で言った。
(しょうがない、やるしかないのか)
「よし、こい!」
俺が言った直後、真希が手のひらを俺に向けてきた。
(真希の能力は風――空気砲のようなものか!)
そう考えて、勢いよく左に転がるようにしてかわす。
(ビンゴ!)
かわした直後さっきまでいた所に物凄い勢いで風が通り抜けた後の残風を感じた。
「初めてにしてはやるじゃない!」
初手を避けられたのが悔しそうに見えた。
「まあ、勘だったがな」
笑って見せた。
「次は外さないよ」
言い放って、右手を右から左へ、左手を左から右へと払った。
(これはさっき木を切ったのと同じ能力、左右に逃げるには間に合わない、なら!)
体を横向きにし、風の刃に上下を挟まれるように跳び、風の速さに合わせ体を空中で一回転させてかわした。
「どうだ!」
「――!」
かなり驚いた顔をしていた。
「今度はこっちの番だ!」
徐にポケットに右手を入れた。
「さっきの手品の続きだ!」
ポケットから手を抜くと、先程、手品で使った物干し竿が出てきた。
「武器は無しとか言わないよな」
「使ってもいいけど、そんなの簡単に切り裂けるのよ」
先刻同様右手を左から右に払って風の刃を飛ばす。
「甘い!」
物干し竿を下から上へと振り、風の刃を弾き飛ばす。
「側面叩けば大丈夫みたいだな」
「ばれちゃった」
悔しそうだが、楽しそうにも見えた。
「ならこれで、どう!」
今度は縦に風の刃を三発ほど飛ばしてきた。
「何度やっても同じだ!」
一発目の右側を弾き、二発目は左側、三発目の右側を弾いた時に視界の隅で捕らえた。
正面からだけではなく、右側からも一発風の刃が飛ばされていた事に。
三発目を弾いた勢いのままに、体を素早く左回転させ、竿の先端が軸に若干遅れながら、弧を描く。
(間に合え!)
弾いた手ごたえを感じた。が
カラ――ン、
金属が地面に落ちた音がした。
物干し竿の先端が鋭くとがっていた。
「マジですか」
顔が青ざめた。
なぜなら、物干竿が切り落とされていたからだ。
「ッチ、後少しだったのに」
(そこ、普通に舌打ちするんですか! 末恐ろしいわ!)
(とりあえず、頭を切り替えよう。うん)
「こ、こんどはこっちから行くぜ!」
真希に向かって勢いよく駆ける。
距離を詰められるまいと、風の刃を幾度と飛ばしてくる。
風はどうやら直線上にしか飛ばせないようなので、すべて鼻先を掠めるか否か、と言うタイミングで体を捻りかわす。
残り二、三歩で真希の目の前っと思った刹那。
創真が真希の後ろに回りこんでいた。
「えっ!」
真希が思わず声を漏らす。
だが時すでに遅し、創真が真希の脚へと回し蹴りをかます。
真希の体が後ろに倒れている間に、創真が低い低背の状態まま真希の背中へ向け蹴りを放ったその刹那、突風が吹き創真を吹き飛ばし、真希の体制を立て直した。
「創真! やるじゃない」
「やるだろう」
得意げに返す。
「こんな強い相手、トーナメントでも中々いないわよ。」
真希が楽しそうな顔をしていた。
「ん? なんだ、トーナメントって」
「この戦いが終わったら教えてあげるわよっ」
言い切ったと思いきや、いきなり創真の後ろから突風が吹き、真希の方へと飛ばす。
飛んでくる創真に向けて、真希が蹴りを放った、が、蹴りを掴まれ、風の勢いを利用し、脚を掴んだまま真希とすれ違い、半円を描くように勢いを利用して真希を投げた。
地面に着く寸前、手を地面に着け回転受身を取るかのように回り、すぐさま体制を立て直す。
(迂闊に技を出すと逆に利用されるわね、どうしたら良いのかしら)
「どうだ? 降参するか?」
創真がおちょくるように言う。
(このまま調子に乗せるのも癪だしどうするか・・・)
そこには一つの考えが浮かんでいた。
「創真! 次で決めるよ」
「いいよ、かかって来な」
真希は手を上に掲げ、そして、勢いよくおろす。
(直下空塊!)
「えっ?」
物凄い量の空気の塊が創真を襲った。
中心から外に向けて円を描いて風が吹き抜ける。
「ふう、終わったぁ」
風になびいている髪を押さえている。
地面は外から中心へと向かうにつれて陥没していっていた。
足元には、直撃を受けて伸びている創真がいた。
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