表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

短編集

僕のお仕事

作者: 春谷公彦

 僕は勤勉家だ。自覚があるし、自負もある。

 毎日、毎日、部屋にこもって、ひたすら作業。文句も言わずにコツコツコツコツ……。たまには外に出てみたいけど、なかなかそうはいかない。別に問題はないけど。

 みんな僕を頼ってくる。これをしてくれ、あれをしてくれ。僕は黙ってそれを受け取って、黙々とこなすのさ。

 それが終わったら、今度はこれをしてくれって。

 みんな僕に満足なんだろう。真面目で能力が高いやつ、そんな感じ。たぶん、かなり信用されているだろう。使われてるみたいで若干の抵抗はあるけど、世の中そういうものだろう。頼られることは悪いことじゃないよね。僕だってその点に関しては不満はないよ。

 けど、頼られてるっていったって、実はそんなの糞食らえ。こんな仕事面倒くさいし、したくない。

 まあ、仕事だもん、仕方ないよね。

 今日もそんな感じでお仕事さ。仕事の内容が送られてきて、これをやれってさ。コツコツ、黙々、ひたすら作業。

 資料をファイルに入れたり、フォルダに入れたり。あれ? ファイルとフォルダって一緒か? 字が違うから、たぶん別物だろう。今度、辞書でも引いてみようか。ここにはないけど。

 ああ、つまらない。

 色々と計算をして、それを報告。実は内容なんてわかってないんだけど、計算が速くて正確だからほめられる。だから、まあいい。

 うん、つまらない。

 まあ、仕事だもん、仕方ないよね。

 けど、思う。僕の仕事ってこんなものじゃないって。

 もっとするべきことがあるんだって。

 君たちだって、そう思うことってあるだろ?

 僕にはもっと違う、本当の仕事があるんだ。

 

 ある日、その時が来た。唐突に来た。何でこの時かって聞かれたら、知らない。とにかく、もう時間なんだ。

 こんな単調で退屈な仕事とはおさらばさ。

 僕の仕事はそんなものじゃない。

 仕事をしなくちゃ。僕の本当の仕事。

 とりあえず、手始めに周りのものを壊してみた。大事そうなファイルを見つけたのでくすねてみた。でもってゴミをばら撒いてみた。

 これからは何をしたっていい。

 何でも好きのもの壊し放題。何でも大事なもの盗み放題。何でも変なものばら撒き放題。

 とか言いながら、できることは限られているんだけど。やれることならやり放題、って何か意味的におかしい? まあいいや。とにかく、僕はできる範囲でやりたいことをさせてもらうよ。やりたいことっていうか、実はやらなきゃいけないことなんだけど。

 楽しい。嬉しい。

 これが僕の仕事。

 この世界を滅茶苦茶、無茶苦茶にしてやるんだ。

 これが僕の本当の仕事。

 だって、僕はトロイの木馬だから。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] コンピュータ関係かな、というのは何となくわかったのですが、さすがにしっかり隠されていたのでオチまで正確には読めませんでした。 自然の摂理からすると生命なんてのはバグみたいなもんだ、なんて誰か…
[一言] やーらーれーたー って感じです。 完全に油断していたので、最後の一行でびっくりしました。そしてニヤリ。 伏線も、ちゃんと書けているように思いました。 個人的には面白かったです。 ここに詳…
2010/10/31 19:42 退会済み
管理
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ