僕のお仕事
僕は勤勉家だ。自覚があるし、自負もある。
毎日、毎日、部屋にこもって、ひたすら作業。文句も言わずにコツコツコツコツ……。たまには外に出てみたいけど、なかなかそうはいかない。別に問題はないけど。
みんな僕を頼ってくる。これをしてくれ、あれをしてくれ。僕は黙ってそれを受け取って、黙々とこなすのさ。
それが終わったら、今度はこれをしてくれって。
みんな僕に満足なんだろう。真面目で能力が高いやつ、そんな感じ。たぶん、かなり信用されているだろう。使われてるみたいで若干の抵抗はあるけど、世の中そういうものだろう。頼られることは悪いことじゃないよね。僕だってその点に関しては不満はないよ。
けど、頼られてるっていったって、実はそんなの糞食らえ。こんな仕事面倒くさいし、したくない。
まあ、仕事だもん、仕方ないよね。
今日もそんな感じでお仕事さ。仕事の内容が送られてきて、これをやれってさ。コツコツ、黙々、ひたすら作業。
資料をファイルに入れたり、フォルダに入れたり。あれ? ファイルとフォルダって一緒か? 字が違うから、たぶん別物だろう。今度、辞書でも引いてみようか。ここにはないけど。
ああ、つまらない。
色々と計算をして、それを報告。実は内容なんてわかってないんだけど、計算が速くて正確だからほめられる。だから、まあいい。
うん、つまらない。
まあ、仕事だもん、仕方ないよね。
けど、思う。僕の仕事ってこんなものじゃないって。
もっとするべきことがあるんだって。
君たちだって、そう思うことってあるだろ?
僕にはもっと違う、本当の仕事があるんだ。
ある日、その時が来た。唐突に来た。何でこの時かって聞かれたら、知らない。とにかく、もう時間なんだ。
こんな単調で退屈な仕事とはおさらばさ。
僕の仕事はそんなものじゃない。
仕事をしなくちゃ。僕の本当の仕事。
とりあえず、手始めに周りのものを壊してみた。大事そうなファイルを見つけたのでくすねてみた。でもってゴミをばら撒いてみた。
これからは何をしたっていい。
何でも好きのもの壊し放題。何でも大事なもの盗み放題。何でも変なものばら撒き放題。
とか言いながら、できることは限られているんだけど。やれることならやり放題、って何か意味的におかしい? まあいいや。とにかく、僕はできる範囲でやりたいことをさせてもらうよ。やりたいことっていうか、実はやらなきゃいけないことなんだけど。
楽しい。嬉しい。
これが僕の仕事。
この世界を滅茶苦茶、無茶苦茶にしてやるんだ。
これが僕の本当の仕事。
だって、僕はトロイの木馬だから。