↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
あの日空が裂けた  作者: リンダ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
56/59

なんでやねん、世界進出

 スピンオフ

「なんでやねん、世界進出」


 ニューヨークで人気コメディアンとなった北斗とジェシカ。


 配信番組の登録者数は数千万人規模。

 英語圏だけでなく、日本、韓国、ヨーロッパでも人気が広がっていた。


 特に話題だったのが――


 “ニューヨーカーなのに大阪弁が異常にうまい女”


 ジェシカである。


「なんでやねん」

「知らんけど」

「ちゃいまんがな」

「ええねん」


 しかもイントネーションが妙に本格的。


 そのため日本では、


「なんでアメリカ人がそんな完璧やねん」

「大阪人より大阪弁うまい」

「ジェシカ、前世たぶん通天閣」


 など、SNSでも大人気になっていた。


 そんなある日。


 日本のテレビ局から正式オファーが来る。


「ぜひ一度、大阪で漫才を披露していただけませんか?」


 しかも会場は――


 難波の、あの有名劇場。


 若手から超大御所まで立つ、“笑いの聖地”。


 オファーを見た北斗は固まった。


「……いやいやいや」


 ジェシカは目を輝かせる。


「ホンモノの大阪や!!」


「お前、“本場”をテーマパークみたいに言うな」


「ちゃうねん北斗!

 うち、ついに聖地巡礼や!」


「なんのや!」


 大阪到着


 関西国際空港。


 ジェシカは到着ロビーに出た瞬間、深呼吸した。


「……空気がソースや」


「気のせいや!」


「いや絶対混じっとる!」


 空港職員が吹き出す。


 そこから二人は電車で難波へ向かう。


 車内。


 隣のおばちゃんがジェシカをチラチラ見ている。


 やがて耐えきれなくなったように話しかける。


「あんた、外国の人やんな?」


 ジェシカ、満面の笑み。


「せやで!」


 おばちゃん、固まる。


「……なんでそんな大阪弁なん」


 ジェシカ。


「ニューヨーク育ちやけど、魂は関西人や」


 北斗。


「意味わからん設定作るな」


 おばちゃん大爆笑。


「なんやこのアメリカン! おもろ!」


 そこから会話が止まらない。


「たこ焼き食べた?」


「もう毎日食うとる!」


「お好み焼き派? たこ焼き派?」


「どっちもや! 戦争やめぇ!」


「うまいこと言うやん!」


 気づけば車両の乗客まで笑っていた。


 北斗が小声で言う。


「……お前、普通に大阪のおばちゃんと渡り合っとるやん」


 ジェシカ。


「世界最強種族やからな」


「お前もだいぶ近づいとるわ!」


 難波の劇場


 本番当日。


 劇場の楽屋。


 北斗は珍しく緊張していた。


「……ヤバい」


 ジェシカが水を飲みながら言う。


「なにが?」


「ここ、化け物みたいな芸人が立ってきた場所やぞ」


「うちらも化け物やん」


「どのジャンルの!?」


 すると、楽屋の扉が開く。


 ベテラン芸人たちが挨拶に来る。


「あー! ジェシカちゃんや!」


「ホンマに大阪弁しゃべっとる!」


「生“なんでやねん”聞かせてぇや!」


 ジェシカ、即座に。


「なんでやねん!!!」


 廊下まで爆笑。


 ベテラン芸人の一人が涙を拭く。


「イントネーション完璧すぎるやろ……」


 北斗がぼそっと。


「育成失敗した気がする」


 開演


 舞台袖。


 客席は超満員。


 北斗が深呼吸する。


 ジェシカが肩を叩く。


「大丈夫や」


「お前の方が落ち着いとるやん」


 ジェシカ、少し笑う。


「昔、笑っていいかわからんかった子ども見てきたやろ」


 北斗の表情が変わる。


「……うん」


「なら、今日も同じや」


「笑ってええ空気、作ったろ」


 北斗が静かに頷く。


 舞台に出る。


 拍手。


 歓声。


 ジェシカが客席を見る。


 そして第一声。


「どーもー!!

 ニューヨークから来ました!

 大阪に魂を売ったアメリカ人でーす!!」


 爆笑。


 北斗。


「売るな!」


 ジェシカ。


「でも大阪、めっちゃ居心地ええねん」


「なんでや」


「全員ツッコミやから」


「偏見すごいな!」


 そこから二人は、


 ニューヨークと大阪の違い

 アメリカ人から見た関西

 北斗のツッコミの弱さ

 ジェシカの大阪弁暴走


 をテンポよく畳みかける。


 観客は涙を流して笑っていた。


 途中。


 ジェシカがふと真顔になる。


「でもな」


 劇場が静かになる。


「うち、昔、笑ってええかわからん時あってん」


 北斗が横を見る。


 ジェシカが続ける。


「でも、その時、笑わせてくれる人がおった」


「せやから今度は、うちらの番や思ってる」


 数秒の静寂。


 そして北斗が言う。


「……真面目モード長いねん」


 ジェシカ。


「なんでやねん!!!」


 劇場、大爆笑。


 立ち上がって笑う客までいる。


 舞台袖で見ていたベテラン芸人が呟く。


「……あいつら、“笑い”で人の空気変えよるな」


 終演後


 劇場の外。


 夜の難波。


 ネオン。


 笑い声。


 ジェシカが空を見上げる。


「北斗」


「ん?」


「うちら、ここまで来たな」


 北斗も空を見る。


「あの日は、飛行機見るのも怖かったのにな」


 ジェシカは静かに笑った。


「それでも空は青いんや」


 北斗。


「……お前、それズルいわ」


 ジェシカ。


「知らんけど」


 二人の笑い声が、難波の夜に響いていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。