火災の原因
翔と別れてお家に帰ると祖父母が玄関で待っていた。
「おかえり。遅かったね。」
そんなに遅くはないし、高校生なら普通寄り道するもんだけど、私は今までしてこなかったし、友達もいないから、心配してくれたのだろう。
「ただいま。すぐご飯作るね。」
玄関で靴を脱ぎ、着替えずそのまま台所へ向かった。
「今日はカレーにしようと思うんだ。暑いと食べたくなっちゃうんだよね。」
私はそう言いながら、買い物袋からにんじんやらじゃがいもやらを取り出した。
夕食を済ませて、テレビを観ていると、あるニュースが目に止まった。
ーただいま入ったニュースです。本日、東京都△区で4人家族が住む住宅が火災により全焼しました。消防によると、火災は激しく、この住宅に住む4人全員が死亡したことが確認されています。
アナウンサーが台本を見ながらそう言うと、炎に包まれた一軒家を必死に消火する映像が流れた。家全体が燃え上がり、全焼だった。だが、見るからに大きいしきっと裕福な家庭だったんだろうと思わせるほどだった。亡くなったのは、この家に住む30代の父母、11歳と7歳の兄妹。テレビに映し出された家族の写真はいかにも幸せで仲のいい家族に見えた。
ーなお、火元は現在調査中であり、詳しい原因は分かっていません。引き続き、情報が入り次第お伝えします。
アナウンサーが続けてそう言うと、私はドキッとした。火元が分かっていない、?どうして?どうして火事になってしまったの、?そう思うと段々呼吸が荒くなり、視界がぼやけ、揺らぎ始めた。そして次第に意識が遠のいていった。
「美咲!美咲!」
私を呼ぶ声に気付き、朦朧とする意識の中、目を開くとこちらを心配そうに覗く祖父母の姿があった。
「よかった。気づいた。急に倒れるから心配したじゃない。」
どうやらあのまま私はリビングで倒れ込み寝てしまったようだ。額には尋常じゃないほどの汗をかいて。無理はない。あんなニュースを見てしまったんだから。
「大丈夫。多分軽い熱中症だろうから。休んでれば良くなるよ。心配かけてごめんね。」
微笑を浮かべながらそう言った。これ以上祖父母にまで迷惑をかけるわけにはいかない。ここは熱中症ということにしよう。
私はそのまま自分の部屋に行き、さっきのニュースについて調べた。なぜなら、東京で今大変なことが起こっているのを知っていたから。1番の理由はもっと別にあるのだけど。気になって仕方がなかったから。