15年前の事件
「結局肝心なことは聞けなかった。具体的に何してるのか。」
私はホテルから出て横浜の駅に向かいながらそう呟いた。
「…」
「翔、さっきから何も話さないね。ホテルにいる時から。良いよ。お父さんのことでしょ?聞いてくれても。」
私は翔がホテルで聞いた私のお父さんのことでこんがらがっているのだろうと感じ、そう言った。
「…ああ。美咲のお父さんは、あの記事に書かれてた15年前の事件の犯人…なのか…?」
翔は私に気を遣っているのか、恐る恐る聞いてきた。
「そうだよ。ごめんね。今まで黙ってて…いつかは言わなきゃいけないと思ってたんだけど。なかなか言い出せなくて…」
私は深呼吸をして思い切ってそう答えた。
「ううん。そうだったんだ…」
翔は言葉に詰まっている様子だった。
「だからさ、元々私長崎に住んでた訳じゃなくて、引っ越してきたんだよね。物心つく前に。それで、引っ越してきた人なんてあの町には私たちしかいなくて、お父さんがあれ…だから、すぐ広まっちゃって、孤立してたんだよね。学校でもいつも1人だったでしょ、私。」
「言われれば、俺以外と話してるとこ見たことないな。そういうことだったんだ。」
「うん…何も伝えずに東京まで連れてきてごめんね。本当に。」
私は俯いて本当に申し訳なく思った。
「関わりたくなかったら言ってね。」
私はそう言い、横目で翔のことをチラッと見ると、
「そんなことは思ってない。確かに驚いたし、動揺したけど、それはお父さんのことで、美咲は美咲だから。」
そう言って私の目をまっすぐに見ていた。
「翔…」
私は翔のその言葉に涙が止まらなかった。今までずっと1人で抱え込んでいたから、誰かに優しく接してもらえたことが嬉しくて、今までの辛い感情が一気に溢れ出た。
「泣くなよ。美咲は何にも悪くないんだから。それに、さっき美咲のお兄ちゃんが話してた感じだと、お父さん、もしかしたら、誤認逮捕なんじゃないか?」
「え…?ごにん…?何それ?」
私は言葉に詰まりながら、聞き慣れない言葉に思わず聞き返した。
「誤認。つまり間違って逮捕したってこと。美咲のお母さんが15年前の事件は解決してないって言ってたらしいし、お兄ちゃんが調べてるのは、その事件の真相なんじゃない?」
「えっ。間違えて逮捕した…?そんな事があるの、?」
私は翔の言っている事が信じられず、困惑した。
「いや、単なる憶測だよ?さっきの話聞いてた感じだとそう思ったってだけ。」
翔は単なる憶測だと言ったが、私にはそれ以上にそう思い当たる節があった。
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