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冬の悪魔







―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――




「ならば、問おう」

悪魔が言う

「神がこの世に存在しないのなら……


闇を恐れない人間もいる


なぜこの世界に魔法がある?なざ悪魔たちが存在する?

「しらねーよ」


サウザーはそう言って、指を蹴飛ばす

「つーか誰だテメエは」


冥王は、ニヤリと笑う。



「いいぞ、お前

「今まさに、神の託宣が述べる五人の使徒のひとりだと確信した。お前には、私と共にロードランまで来てもらおう」




「そして神がこの戦いの未来図をどう描いているか、おおよその構造も把握した」


「だがここにない指たちが、いずれお前を絡め取るだろう」



トグマ!無事か


ああ、ただ


「こいつを治療するために体のなかに入った」



ホセは助けられなかった。


「心配するな、俺はこれで味方だ」




「アンブロゴス……誰が悪魔の頭領だって?」

「これはこれは、リリス様、リリス様。ひひひ。ひひひ。ひひひ……」


情けない声が響き、みな顔を上げて見る


「リリス様、どうぞお慈悲を……」

「神を詐称したかと思えば今度は命乞いか。相変わらずとことん情けないやつ……」

「リリス様ぁアッ!どうぞお慈悲を!お慈悲を!どうかこの鎖を解いてください!そしてかつての昔を思い出してください……わたくしめ、いついかなる時もあなたの忠実な下僕にございました。ゼクターのクソに閉じ込められて五千年、片時もあなたへの忠信を忘れたことなどございませぬ!わたくしめを、開放してください!さすればあなたの忠犬として、片時も離れず仕えましょう。そうだ、かつてのようにわたくしめを軍師などにしてはいかがでしょうか。いや、リリス様ほどのお方であれば、もはや軍師の席など埋まっておいででしょう。でしたら兵隊長でもかまいません。それも叶わぬなら一兵卒にでも。いや人夫でも小間使いでもかまいません。はたまたガキの使いにでも。いや犬でも猫でも鼠でも……」

「アンブロゴス、貴様には救い主が来るまでここで大人しくしてもらおう」

「げ……」


「リリス様、それはつまり、いつまで待てばよいのでございますか」

「十年だ」

「十年……」


悪魔とは主せぬほど落胆した声を出した。ふと顔を上げると、リリスの目線に気づき、慌てて作り笑いをする。


「あ、いやいやいやいや!リリス様のありがたき御言葉、まさに頂戴いたしました。ヘヘヘ、しかしね、わたくしも闇の悪魔の名を頂く身でございますから、この暗がりに閉じ込められたときには随分強がってみたのせすが、どうもここは、黴臭くてかないませんね。見てください、歯なんかこんなに黴だらけになっちゃってね!尋ね人もおらずやることもなく、たまにやって来るのは汚い鼠だけ。こうなってくるとどうも人恋しくてたまりません。あれだけ嫌った地上に舞い戻って、爽やかな大地の木々の匂いをかぎたくてたまりません。なあに外が昼でもこのさいかまいやせんわ。わたくしも久しぶりにね……」


アンブロゴスは上目遣いで



「陽の光を浴びとうございまして」

「……はっはっは!」


リリスは高らかに哄笑した。彼女はアンブロゴスに背を向けると、カツンカツンと杖を突きながら部屋を去っていった。

仲間たちも彼女に続いた。アンジェラが振り返っていった。


「お兄様、行きましょう」


サウザーも、彼女に続いて部屋を出ようとしたその時、


「サウザー、待て!お前に渡したいものがあるのだ」


サウザーは、胡乱げな様子で遠目にアンブロゴスの手が開かれるのを見ていた。すると、手の中に、何かが握られている

サウザーは、ゆっくりと手に近づいていった。そして、彼が持っている、その指輪を取り上げた。

それは、サウザーの薬指にかかる、指輪と同じものだっった。


「これは」

「見覚えがあろう。エレノアの指輪だ。さっきエレノアを助けたといったが、それは本当の出来事なんだ。」


サウザーは顔を上げる。


「俺はエレノアを不憫に思ったんだ。俺も闇に生まれたものの宿命として、理由もなく疎まれ、蔑まれ、迫害されてきた。エレノアが首を閉めつける縄を手でかきむしりながら、空に向かって必死に手を伸ばしているのを見て、俺は思わず彼女を助けてしまった」


アンブロゴスは続けた。


「エレノアは、救いを求めてロードランへ向かった。追いかけろ。エレノアを愛しているなら」

「……お前に愛がわかるのか」

「俺が愛を知らぬと思うか?」


サウザーは悪魔の全身をまじまじと見た。二人は目が合うと、同時に声を出して笑った。


ひとしきり笑うと、サウザーは踵を返し、扉へと歩来始めた。ふと、サウザーが振り返った時、アンブロゴスは死者のように目を閉じていた。そうして、サウザーが扉をくぐると、扉はひとりでに音を立てて閉じた。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



「面白かったでしょう。闇の悪魔なんて大層な名前で呼ばれてるけど、あれでひょうきんなのよね」


イブが道すがら話しかけた。トグマは。


「ああ、確かに、あいつが陽の光を見たいと言ったときは俺も笑ったぜ」

「トグマよ、お前はあの戯言を真に受けたのか?」

「えっ。ええと……」


リリスにそう言われて、トグマは口ごもった。リリスは続けた。


「悪魔にはそれぞれに性格がある。だがそれは人間を騙すために紡ぎ上げた偽りの仮面だ。ほとんどの人間は、闇を恐れている……しかし強靭な精神の持ち主はそうではない。トグマ、お前もそういう強靭な精神を持つ者の一人だ……アンブロゴスはそういう人間の懐に入り込むために、ひょうきん者の仮面を作り上げた。そして悪魔がひょうきん者の一面をちらりと垣間見せると、強靭な精神の持ち主たちは、ふらりと簡単になびいてしまう……なぜな彼らは、神を実直に信じ、そして人間性を愛しているからだ。彼らは、人間性を強く愛するが故に、悪魔の見せる人間性の仮面に簡単に騙されてしまう。こうして闇に立ち向かう強者たちは、背中を刺されて殺された」


リリスは続けた。


「いまこの中にアンブロゴスを軽んじているものがいるとすれば、それはやつにまんまと騙されたということだ。やつは世界最強の悪魔の一人だ。やつが殺した人間の数は、有に億を超えているだろう」

「億……」


リリスは続けた。


「わたしはエレノアが何者なのか知らない。だがアンブロゴスが目を掛けるけるほどだ、よほど深い闇を持っていたに違いない……彼女を処刑した王の判断は、もしかすると正しかったのかもしれない」


リリスは横目でサウザーの顔を覗いたが、彼は無表情のままだった。リリスは続けた。


「アンブロゴスがエレノアを生かした理由を教えてやろう。悪魔というのは、死ねば消える。しかし人間の根源的恐怖から生まれた大悪魔たちは、いずれ蘇る。では、どこへ蘇るのか……火の悪魔は最も熱い火の中へ。森の悪魔はもっとも深い森の中へ。剣の悪魔は最強の剣士のもとへ。そして闇の悪魔は、もっとも暗い闇の中へ……やつがエレノアを生かしたのは、いずれ死んだときに彼女の体に転生するつもりだったのだろう」


リリスは続けた。


「アンブロゴスの本来の計画はこうだったろう。まずサウザーが王を継げる年齢になるまで時を待つ。そして時が来たら、サウザーをあの穴蔵へ誘い、口先八丁で自分を殺させ、エレノアの中に転生する。サウザーは闇の魔剣で、王を殺す。そして、新たな王となったサウザーの前に、やつはエレノアとして現れるのだ……お前たちは番となって、世界を支配し、そして滅ぼしただろう」


リリスは続けた。


「だがその計画は狂った。お前は王を殺してからやつの前に来た。おそらくひと目見て、お前を御すことは難しいと悟った……だからやつは計画を変えたのだ。お前を支配することは叶わなくても、せめて自らの転生は果たそうと……だから神の名を騙り、善神悪神がどうたらと戯言をぬかした。だがお前の心は微動だにしなかったな。なぜならあのときすでに、お前は神を信じていなかったからだ」


リリスは続けた。


「神を信じる者を悪魔が拐かすことはできない。しかしまた、神を信じない者も悪魔が拐かすことはできない。悪魔が拐かすことができるのは、神を信じるか信じないか、迷っている者たちだけだ。エレノアが死んですぐに、お前は神を捨てた。それでもお前の父親への憎しみを利用すれば、あるいはお前を操ることはできたのかもしれない。しかし手をこまねいているうちに冬の悪魔がやって来て、すべての計画は崩れ去った。迷っていたのはアンブロゴスの方だったのだ……」


リリスは続けた。


「サウザー、悪魔を倒すための有効な方法を教えてやろう。それは、やつらを出し抜くことだ。やつらの思考の先を行き、想像だにしない力で蹴散らせ。お前の心の闇はアンブロゴスの想定よりはるかに大きかった。その闇の深さは、お前に神を捨てさせるほどだった。そしてお前が神を捨てたがゆえに、悪魔の誘いをはねつけることができた」


リリスは続けた。


「悪魔を殺すのは光ではない。想像だにしない破壊的な力だ。バベルより高い洪水だ。巨人も迷う深い森だ。かまいたちも断つ真空だ。冬の雪より冷たい風だ……」



―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


彼らは洞窟から出た

彼らは洞窟から出た。

一面に、雪景色が広がっていた。

街は、白い死装束のように雪に覆われていた。



―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


彼らはアズガルドの城まで来た





「サウザー、お前はこの光景を見てなにか感じるか」

「……別になにも」


「そうか。それはまだ感じていないだけだ、お前は」


サウザーは首を振った。


「そうか。街まで降りてみよう」





「お前は言っていたな。エレノアに石を投げつけた民草というゴミは死んだと。だが全ての人間がそうしたわけではなかったろう。エレノアにも親はいたはずだ。彼らはエレノアの処刑の報せに涙を流したのではないのか?あるいは学友はどうだ。

「ああ、全てお前の言う通りだ」


サウザーの脳裏に、あの日の記憶がよみがえる。

学生の処刑に、教員たちは声を上げて反対した。司教もまた、嘆願した。

だが、王は頑として決断を変えなかった。

あの時からだった――父を憎みはじめたのは。そして、夜ごと、闇の声が枕元に囁くようになったのは。


声は震え、涙が滲んでいた。


「あのときは、


この国が滅べばいいと思った


サウザーの頬を涙が伝った


「……俺が父を殺さなければ、結果は違っていたのか?」

「違わないだろうな。氷点下百度の吹雪の中では、人間は息をするだけで即死する。軍隊の指揮など無意味だったろう。大悪魔を屠るのは、軍隊ではない。圧倒的な英雄の力だ」


雪景色の向こうから、一人の男が、雪原を歩いてくる。


「サウザー、君の仇だ」


そして、どかっと悪魔の首を投げつける。

凍りついた女の生首だ。


リリスが言った。



「俺が闇の扉を開いたからこいつはやってきたのか?」

「ああそうだ。こいつは悪魔はアンブロゴスの封印が解かれることを、いつも待ち望んでいた」



「この女が、冬の悪魔レイガーだ。こいつはかつてどんな悪魔よりも多くの文明を滅ぼしてきた」


リリスは続けた。


「レイガーは、人々が考えるよりもはるかに強大な悪魔だ。この悪魔は双子だ。一人は北の世界に、もう一人は南の世界にいる。たとえ北のレイガーを殺しても、南のレイガーは生きたままだ。ふたりのレイガーを同時に殺しても、北と南を合わせれば、冬は半年おきにやってくるのだ。そして冬が来れば冬の寒さが新たなるレイガーを生むだろう。つまり、レイガーをふたり同時に殺したとしても、こいつは半年の間姿を消すだけで、あまり意味はない」


リリスが続けた。


「今ロキが地下で闇の悪魔に虹の天穹という封印を施している。封印は悪魔の魂を閉じ込め転生することを阻止できる。かつて我々は世界の全ての悪魔を封じるつもりでいた。そしてその計画を、”黎明計画”と呼んでいた……」


リリスが続けた。


「だが封印術にも弱点はある。一つは封印には破られる可能性がつきものということ。そしてもう一つは、悪魔を封じる際には、魂の全てを封印の中に閉じ込めなければならないことだ……」


リリスが続けた。


「仮に我々が北のレイガーを封じても、その瞬間に南のレイガーは姿を消して、己の魂を分けた半身を作る。半身は、赤道をまたいで北へ向かう。我々はこれを『渡り』と読んでいるが、その渡りがいつどこで行われるのか、結局見つけ出すことはできなかった。冬の悪魔が赤道を渡るときは、暑さでかなり脆弱になっているに違いない。しかしこの星の赤道は80万マイルある。その全てを余す所なく監視するなど、不可能だ……結局、我々はレイガーを滅ぼすことも封印することもできなかった。レイガーは、救い主の光によって改心させるほかない」


「北のレイガーを改心させると、南のレイガーも改心するのか」

「そうだ。2つのレイガーはつながっている。救い主の光を拒絶できる悪魔など、いない」


リリスが続けた。


「サウザー、この剣をお前に託す」


「この剣を恐れるか」

「……」


闇の剣を渡そうとする。いつの間にか、その紫色の爪は、布でぐるぐるに包まれていた。サウザーが受け取るか迷ていると、リリスは屈み、レイガーの頭をスイカのように串刺しにして、掲げる


「サウザー、この首を見よ。この悪魔は、”冬の雪よりも冷たい風”によって、凍らされた」


リリスは続けた。


「ここよりはるか北の大地に、レーニアという名の世界で一番高い山がある。その山の頂上は標高8万フィートにもなり、そこでは激しい嵐が四六時中吹き荒れ、その寒さは零下200度になる。あらゆる水分は一瞬で氷付き、人間は一秒とて生きることはできない。その場所に、人間はいまだかつて訪れたことはない。その場所を訪れたことがあるのは、世界でもごく僅かな悪魔だけだ。そこは世界で最も冷たい場所であり、レイガーの隠れ家でもある」


リリスは続けた。


「しかしそれは、冷たさのもつ限界ではない。物質の冷たさの限度は零下二百七十三度だ。いまや、人間はすでにその温度を扱うことができる。最も激しい冬の寒さを、人間はすでに超越しているのだ。それもまた、悪魔が想像だにしなかった、破壊的な力のひとつだ」


リリスは続けた。


「サウザーよ、私はこう考える。神を否定することも、悪魔の想像を超えた破壊的な力だと。なぜなら人間は、そもそも神を信じるように創られたからだ。雲より高く連なる霊峰や、無限に広がる大海原を見て、人は人知を超えたなにかを感じる。この世界は、巨大な何かによって彫刻された。そしてそれは、決して人間の理解の及ぶものではないと。朝焼けの光が闇を払い、神が作り出した自然を照らし出す時、人は己の小ささをさえ祝福するだろう」


リリスは続けた。


「だが無神論者は、その祝福を拒絶した。そして、孤独な灰の世界に入った。そこでは、全ての出来事は現象でしかない。たとえどれほどの厄災が襲いかかり人々を苦しめても、それは自然の延長でしかない。厄災が過ぎれば、また人々は機械のように動き始める。精密な機械の噛み合いの中で、神も、悪魔も、生の意味さえ、すり潰され、粉々に砕かれ、死んでいく。原型を止めないほど砕かれたそれらの名は、もはや本の中でしか知ることはできない。未来の無神論者たちがそれらを読んでも、阿呆の妄想としか思わないだろう。だから、無神論者たちが力を持ちはじめとき、悪魔たちはすぐさま戦いを挑んだのだ」


リリスは続けた。


「言うまでもなく、無神論者たちにも愛する家族や友人たちがいた。彼らの多くが国家のために命を投げうった。それは誰にも否定できない美しい死だった。だがそもそも彼らが殉ずることを選んだ国家は、本当に灰色だっただろうか。彼らの胸には範とする伝説の英雄はいなかっただろうか。彼らの国にも誇るべき歴史があった。そしてその歴史を紡いだ英雄たちがいた。英雄を生んだ民族がいて、民族を生んだ律法があった。そして民族に律法を与えた、原初の神々がいたのだ」


リリスは続けた。


「いまこの世界において、原初の神々は砂塵に塗れ、偽の神だと誹りを受けている。だが彼らは、精霊たちのように、今も人間を導いている。そして彼らの子孫たちは、今も世界中でたくましく生きている。サウザー、私はお前の顔にも民族を見る。唇の薄い冷酷な顔立ちは、お前の先祖が冬と長いあいだ闘ってきた証拠だ。しかし竜のような深い鼻梁は高貴さも見える。それはお前の王国の長い歴史を示している。そして、お前の双眸には炎のような強い光がある。お前の内に、熱い魂が宿っているからだ。アズガルドを生んだ原初の神は、煮えたぎる鉄と炎をもって、この氷の地に永遠に続く王国を打ち立てようとしたに違いない」


リリスは続けた。


「最初の戦争に破れたのち、無神論者たちはその原因を己の内に探し求めた。そうして彼らは、原初の神々に行き着いた。無神論者たちは、民族を超克した新たなる国家を生もうとした。やがて神も律法も民族もない国が生まれた。しかし、民族のないこの国家は、ついに英雄を産むことはなかった。そして英雄のない国を率いるものはおらず、そもそもこの国には命を賭す価値もなかった。やがて戦争が始まり、悪魔の一撃がこの超国家を紙のように粉砕すると、彼らは互いに言い争いを始めた。そのうちに誰かが言いはじめたのだ、お前よりも俺の方が、より純粋な無神論者だと。こうして灰の国家に灰の悪魔が現れ、すべては滅び去った。無神論者たちは離散した。彼らは暗がりに逃げ惑い、夜の闇に膝を抱え震えた。彼らはわずかな燃えさしを見つけると、並んで手を組み、神に祈り始めた。こうして一度神を否定した者たちは、もはや神を否定することをやめた」


リリスは続けた。


「容易いことではないのだ、この残酷な世界で神を否定し続けることは。今や悪魔たちは無神論者の存在を知り、夜な夜な暗い双眸を開き彼らを探し回っている。そしてわずかでも神を否定する人がいれば、その人の前に現れる。こうして多くの無神論者たちが、神を否定したと同時に、闇の世界に攫われていった」


リリスは続けた。


「だが無神論者たちの中にひとり、この悪魔をはねつける者がいた。その者は錬金術師だった。彼女の言葉は十字架の光のように悪魔たちを退けた。錬金術師は仲間を集め学堂を作った。この学堂には、神を信じる者たちも集まった。そして光が差さないときは言葉で、言葉が届かぬときは光で、悪魔たちを退け続けた。ここに、神を信じないこともまた、悪魔を超えた力となったのだ。光を視ない生もまた、人間性であると証立てられた」


リリスは続けた。


「だがこの学堂は長くは続かなかった。ある日、この学堂を民衆たちが取り囲んだ。それは、そもそも陰険な悪魔の謀だった。民衆たちは叫んだ。この学堂は、異端であると。悪魔と対話し、神を貶める術を探っていると。無論、学堂はそのことを否定した。錬金術師は、悪魔たちにそうするように、学堂の扉を開き民衆たちを招き入れた。そして、彼らを教え導こうとした。だが、彼女の言葉は聞き届けられることはなかった。民衆は衛兵を殺し、学堂の内側から火を放った。神学者たちは連れ去られ、無神論者たちは虐殺された。こうして一夜にしてこの学堂は崩れ去った。錬金術師は、焼けただれた仲間たちの死体を見て、激しく泣いた。彼女は後悔の嵐に飲まれ、際限なき自己否定の稲妻に己を晒した。彼女は激しい涙の雨に打ちひしがれながら、燃え盛った。だがやがて嵐が過ぎ去ったとき、彼女は瓦礫の中から再び立ち上がった。一部始終を見ていた私は、彼女の眼の前に降り立ち、その瞳を覗き込んだ。そしてわたしは、あっと叫んだ」


リリスは続けた。


「そのとき、この錬金術師はもう、超人となっていたのだ」


リリスは続けた。


「超人となれ、サウザー。超人となるのだ。光なき灰の世界に闇が忍び寄ることもない。サウザー、お前があらゆる神を否定し続けるならば、闇さえもお前に手を掛けることはできぬ」


サウザーはうなずき、アンブロゴスの指を受け取った。

世界は白い雪に覆われていた。この地にはもう、なにも残されてはいない。こうして彼らはひとり、また一人と歩き出した。アズガルドを去り、南に向かって歩き始めた。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


悪魔たちにとって、無神論者の世界とはどんな世界だろうか。









寒空の下で、その死蝋のような指は冷たくなっていた。サウザーは強く握り込んだ。なまめかしく動き出すのではないかと。しかし、この指は、再び動き出すようなことはなかった。

ベルトに刺すと、


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――





だが無神論者たちの中にひとり、この悪魔をはねつける者がいた。そのものは錬金術師であり、名はカリオストロといった。彼女の言葉は十字架の光のように悪魔たちを退けた。

カリオストロは仲間を集め学堂を作った。この学堂には、神を信じる者たちも集まった。そして光が差さないときは言葉で、言葉が届かぬときは光で、悪魔たちを退け続けた。

ここに、神を信じないこともまた、悪魔を超えた力となったのだ。光を視ない生もまた、人間性であると証立てられた。


だがこの学堂は長くは続かなかった。ある日、この学堂を民衆たちが取り囲んだのだ。それは、陰険な悪魔の謀だった。

民衆たちは叫んだ。この学堂は、異端であると。悪魔と対話し、神を貶める術を探っていると。


無論、学堂はそのことを否定した。

カリオストロは、悪魔たちにそうするように、学堂の扉を開き民衆たちを招き入れた。そして、彼らを教え導こうとした。

だが、彼女の言葉は聞き届けられることはなかった。

民衆は衛兵を殺し、学堂の内側から火を放った。神学者たちは連れ去られ、無神論者たちは虐殺された。こうして一夜にしてこの学堂は崩れ去った。

カリオストロは、焼けただれた仲間たちの死体を見て、激しく泣いた。

彼女は後悔の嵐に飲まれ、際限なき自己否定の稲妻に己を晒した。彼女は激しい涙の雨に打ちひしがれながら、燃え盛った。だがやがて嵐が過ぎ去ったとき、彼女は瓦礫の中から再び立ち上がった。一部始終を見ていた私は、彼女の眼の前に立ち、その瞳を覗き込んだ。そしてわたしは、あっと叫んだのだ」


「そのとき、カリオストロは超人となっていた」







耳年増


おしゃべりりす


説教の悪魔


五千年間生き遅れ






総統がいうには、







”アイル”は、そう返事をすると、歩き出した。友たちも、彼に続き、歩き出した。



その時、悪魔の指がお前を絡め取るだろう。










「お前が高らかな声で神を否定するとき、悪魔が空から舞い降りるだろう。悪魔たちは、そこに無神論者が立っていると思い、血の滴る刃を握りお前の眼前に立つ。だがそこいるのは超人だ。お前の双眸は悪魔の四肢を凍りつかせ、お前が突き出した刃は心臓を貫く。悪魔はこれを避けることができず、刃を交わすこともできない。なぜなら自らを乗り越えるものを、乗り越えられるものなどなにもないのだから」





「いまお前は自らを乗り越え、闇の恐怖を乗り越えた。超人への一歩を、踏み出したのだ」




「お前が高らかな声で神を否定するとき、悪魔が空から舞い降りるだろう。悪魔たちは、そこに無神論者が立っていると思い、血の滴る刃を握りお前の眼前に立つ。だがそこいるのは超人だ。お前の双眸は悪魔の四肢を凍りつかせ、お前が突き出した刃は心臓を貫く。悪魔はこれを避けることができず、刃を交わすこともできない。なぜなら自らを乗り越える超人を、乗り越えられるものなどなにもないのだから」












「いまお前は自らを乗り越え、闇の恐怖を乗り越えた。超人への一歩を踏み出したのだ」









だが無神論者たちの中にひとり、この悪魔をはねつける者がいた。彼女は錬金術師だった。彼女の言葉は十字架の光のように悪魔たちを退けた。

この錬金術師は仲間を集め学堂を作った。この学堂には、神を信じる者たちも集まった。そして光が差さないときは言葉で、言葉が届かぬときは光で、悪魔たちを退け続けた。

ここに、神を信じないこともまた、悪魔を超えた力となったのだ。光を視ない生もまた、人間性であると証立てられた。


だがこの学堂は長くは続かなかった。ある日、この学堂を民衆たちが取り囲んだのだ。それは、陰険な悪魔の謀だった。

民衆たちは叫んだ。この学堂は、異端であると。悪魔と対話し、神を貶める術を探っていると。


無論、学堂はそのことを否定した。

錬金術師は、悪魔たちにそうするように、学堂の扉を開き民衆たちを招き入れた。そして、彼らを教え導こうとした。

だが、彼女の言葉は聞き届けられることはなかった。

民衆は衛兵を殺し、学堂の内側から火を放った。神学者たちは連れ去られ、無神論者たちは虐殺された。こうして一夜にしてこの学堂は崩れ去った。

錬金術師は、焼けただれた仲間たちの死体を見て、激しく泣いた。

彼女は後悔の嵐に飲まれ、際限なき自己否定の稲妻に己を晒した。彼女は激しい涙の雨に打ちひしがれながら、燃え盛った。だがやがて嵐が過ぎ去ったとき、彼女は瓦礫の中から再び立ち上がった。一部始終を見ていた私は、彼女の眼の前に立ち、その瞳を覗き込んだ。そしてわたしは、あっと叫んだのだ。」


「このとき、この錬金術師カリオストロは、超人となっていたのだ」


「超人となれ、サウザー。超人となるのだ。光なき灰の世界に闇が忍び寄ることはない。サウザー、お前があらゆる神を否定し続けるならば、闇さえもお前に手を掛けることはできぬ」













これにはアンブロゴスの魂が残っているんだろ?」

「ああ、残っているとも。アンブロゴスの闇の力、その残穢が……。アンブロゴスの持つ闇は、どんな悪魔のそれよりも深く、暗い。その闇は、悪魔の背後から襲いかかる破壊的な一撃となろう。この闇の手綱を握ることができるのは、神を捨ててなお、さらに自らを洗い続けるもの……つまり、超人のみ」

「超人……」











無論、学堂はそのことを否定した。

錬金術師は、悪魔たちにそうするように、学堂の扉を開き兵士たちを招き入れた。そして、彼らを教え導こうとした。

だが、彼女の言葉は聞き届けられることはなかった。

兵士は衛兵を殺し、学堂の内側から火を放った。神学者たちは連れ去られ、無神論者は殺戮された。こうして一夜にして学堂は崩れ去った。

錬金術師は、焼けただれた仲間たちの死体を見て、激しく泣いた。

彼女は後悔の嵐に飲まれ、際限なき自己否定の雷に自らを晒した。彼女は激しい涙の雨に撃たれながら、燃え盛った。だがやがて嵐が過ぎ去った後、彼女は瓦礫の中から再び立ち上がった。私は彼女の眼の前に立ち、その瞳を覗き込んだ。そしてあっと叫んだ。」


「このひと、カリオストロは、超人となったのだ。超人となれ、サウザー。超人となるのだ。光なき灰の世界に闇が忍び寄ることはない。サウザー、お前があらゆる神を否定し続けるならば、闇さえもお前に手を伸ばすことはできぬ」







だが無神論者たちの中には、悪魔をはねつけた者たちもいた。それは強靭な精神を持つ者たちだった。彼らの言葉は十字架の光のように悪魔たちを退けた。

彼らはひとところに集まり学堂を作った。この学堂には、神を信じる者たちも集まった。そして光が差さないときは言葉で、言葉が響かぬときは光で、悪魔たちを退け続けた。

神を信じないこともまた、悪魔を超えた力となったのだ。光を視ない生もまた、人間性であると証立てられた。



だがそれも長くは続かなかった。

この学堂を悪魔たちが囲った。


人間たちだったのだ


それは陰険な悪魔の陰謀だった。


そしてついに一筋の雷がこの学堂の天上を突き破ったのだ。


仲間の死体を見て激しく泣いた。


際限なき自己否定の雷に撃たれ、激しい雨に濡れながら燃えた。だが嵐が過ぎ去った後、それでもなおその人が立ち続けるなら、私はその人を超人と呼ぶだろう」


神学者たちは連れ去られ、無神論者は殺戮された。



瓦礫の中から一人の人間が立ち上がった。私は指さして叫んだ。」



「このひと、カリオストロは超人だと。超人となれ、サウザー。超人となるのだ。光なき灰の世界に闇が忍び寄ることはない。サウザー、お前があらゆる神を否定し続けるならば、闇さえもお前に手を伸ばすことはできぬ」


サウザーは、剣を受け取った。



”アイル”は、そう返事をすると、歩き出した。友たちも、彼に続き、歩き出した。



その時、悪魔の指がお前を絡め取るだろう。



こうして彼らは、新雪の降り積もった道を東に向かって歩き始めた。



「サウザー、今日の出来事でお前の名前は悪魔たちに知られた。サウザーの名も、過去も、今ここで捨てなければならぬ。



「今日からお前は、”アイル”と名乗れ」

「ああ、わかった」








「サウザー、お前はミカエルの予言にあった五人の使徒の一人、闇の魔剣に誘われし冥者だ。私とともにロードランへ来い」

「……」


サウザーはどうすればいいか分からず、、仲間たちを振り返った。


アンジェラ

「兄様、行きましょう、ロードランに!」


ニコラスも言った。

「もともとこの国を出ようと話し合ったじゃないか。いい機会だ、出よう!」


トグマが言った

「俺もついてくぜ、サウザー。なんつったってダチだからな!海の向こうだろうが山の向こうだろうが、どんと来いだぜ」


ステラが言った。

「サウザー、行こう!エレノアを探しに!」


マリア

「私もエレノアに会いたい!話したいこともたくさんあるわ」


グレイス

「私も!」


サウザーは、リリスに向かって頷いた。リリスはも頷き返し、言った。
















「誰だアマンダってのは




「いいや

「お前は世界の美しさをしらない


「そうすればお前は信仰を取り戻すはずだ」




「ああ、お前の言う通り、私もかつては悪魔だった。





「あれが冬の悪魔だ。私が殺した」


「サウザー、ミカエル様のくださった神の託宣は知っているな」

「ああ、この国にもミカエルは来た」


「この男は、光の聖剣に選ばれし勇者、クロードだ」


「サウザー、お前の誕生日はいつだ」

「十三年前の8月1日だ。」

「そうか。それは神の御子アマンダの誕生日と同じだと知っているか?」

「いいや?」

「クロードもその日に生まれた。わたしはおそしてアマンダを助けるのだ」

















お前にその自覚はあるか」

「ない。言ったはずだ。俺は神を捨てたと」

「ではミカエルの託宣はなんだというのだ」

「知らん」

「まあ今はそれでいい。だが、ロードランに着く前にお前には信仰を取り戻してもらいたい」





「これから親父を殺す人間が神に選ばれただと?ありえない」











「余す所なく全身を覆わなければならない」





「いま、ロキが、あの闇の中で、虹の天穹という魔法で、闇の悪魔を封じている」


「根源的悪魔は、殺すのではなく封じなければならぬ。決して破られることのない檻の中に入れて……我々はこれを、黎明計画と読んでいる


「だが黎明計画から漏れ出る悪魔もいる。それがあのような冬の悪魔だ」



「サウザーよ、冬の悪魔は貴様が考えているよりも遥かに強大な悪魔だ。冬は、根源的悪魔に数えられる。」


「期間が長い。毎年必ず襲ってくる動物も。恐怖する


「お前は知らぬだろうが、冬の悪魔は二人が同時に存在する。一人は北の世界に。一人は南の世界に。冬の悪魔はを滅することはできない。あらたなる悪魔が生まれ落ちるだけだ。

サウザー、2つの命を持つ悪魔は殺すことが非常に困難だ。津波や自身であるならば、一時のあいだ殺すことは可能だ

「やつの目的は一つだ。ひとつになろうとすることだ。これを全球凍結という。そのとき、全ての人間は死ぬだろう。」



「冬の悪魔を倒すのは、救い主の光によってでしかない」






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「いま、北の冬の悪魔は打倒した。


しかし南にもまた、冬の悪魔がいる。それは


そして強大の敵を討たんと虎視眈々と狙っているだろう





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「それでもなお、お前は神を信じぬのか」

「俺が生まれる前のことだからな……」


































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学生たちは、山を超えて逃げようとする。


アイルたちは、雪原を走った。

アンジェラから流れる熱い血が、彼の背中を濡らす。血の匂いを追って、狼がやってくる


吹雪に、降り積もった雪に足を取られる

彼らは教会に逃げ込む。しかし、白狼に囲まれる。絶体絶命

どうすればいい

狼に襲われるところを、間一髪で教会に逃げ込み、扉を閉める。





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悪魔が現れる、

ステンドグラスの下に、なにかが立っているのが見える。

「サウザー……そしてトグマよ」


「なぜ悪魔が俺の名を知ってる」


「悪魔……」

「我は冥王リリスである」

「サウザー、たった今貴様の国は滅び、ヘルグの首は刎ねられた。」

もはや国を守るものは一人としておらぬ。今城には悪魔の旗印が掲げられた。

「もしお前が国を取り戻したくば、我がしもべ、剣の悪魔アスカロンと契約せよ。そしてトグマよ、貴様は、この力の悪魔ゼハートと契約するのだ」

しかし、二人は剣を抜く。

「悪魔と契約だ?死んでもお断りだ」




貴様は

お前は救い主の

いずれ悪魔の力に飲まれる。それでも闘うか

ええ

そのためには力が必要だ

優れた地が必要なのだ

わたしと契約しろ

断る 

悪魔は、殺すだけだ

お前は正しい

お前が契約すると言うまで、待つだけだ。



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鐘楼のてっぺんから、見る

国が滅ぶ


「……ここからみえるんだな」

「ああ、ここは櫓だからな。塔のてっぺんの炎をたいて、知らせるんだ」


滅んでしまった国を見て、契約する。



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なあ、俺たちを半殺しにするなり植えさせるなりして、契約したらどうなんだ」

「わたしは人質を取るようなまねはしない」


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「サウザー、俺が契約する」

「トグマ!」

「構うな」

「アインズ様、わたしはこの者でも構いません。素質があります」

トグマ。貴様の命、もらうぞ


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戦ってみせ

あっという間に、周りのイヌを殲滅する



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我々は死の王から呪を受けた。この力を、滅多なことでは使うことはできぬ。

わしはお前の中で眠る。自分の力でなんとかしろ


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俺は、アイルという名で生きる。

アンジェラと名乗れ


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お前は剣の悪魔と、トグマ、貴様は力の悪魔と契約してもらう

俺は無理だ

王が悪魔と契約することはできない

今はそれでいい




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力の帝王を語らう魔法




いつの間にか、右手に取り込まれている


トグマ、お前に選択権をやることにした。

もし俺gあ不要と感じたなら、腕ごと切り落とすがいい


ああ、わかった。


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アスカロン、二人に稽古をつけてやれ



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雪も溶けたな。では、征こうか」

雪が止んだな。では行こうか

こうして、五人は歩いていく。


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悪魔の背中に背を割れて、彼らは雪山を征く


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力がほしいか

ほしい


そうして、彼は十字架を逆さに握る。すると、闇の力がすべてを飲み込む。

そして、悪魔を斬り伏せた。







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「だがお前が闇に惹かれたのは女が

ではお前の母親を蘇らせてやろう



ではなぜお前は闇の扉を開いたのだ





「一切の興味がないな」

「神を信じるなら、ここから飛び降りろ」



「貴様にこの世界の半分をやろう

「ならば全てだ!世界の全てを貴様にやる!」




「俺に命令するな」


「神でないものにこの業が使えるか!」


「……俺はそもも、神など信じていない」


神を殺したい


だからおまえは必死に俺の腕にからみついている





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わたしの息子だ

もしやつが苛烈な性格を持っていたなら、ひょっとすると人類は滅んでいるかもしれんなあ。それは、人類にとって僥倖なことだ。全ては神の思し召しだろう。


だが生まれた時から冷たい子もいたな。彼女がそうだった。レイガーは。冬の悪魔は」





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私が悪魔の頭領なり!」


お前が夜の闇に涙して願ったものを。



「なぜならお前は悪を欲しているからだ。いや、悪とされているものを!」

わたしはもうひとりの神だ」

悪へ。

悪へ。



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エレノア


わたしは彼女を不憫に思った。

闇に生まれただけで、なぜ死ななければならないのか


指輪を見ろ


エレノアはロードランへ向かった。


お前も行け


追いかけてやれ



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「おまえは力を欲さぬと言うか。ならばなぜここに来た。貴様が死の魔剣に誘われた理由を……


「人が蘇るはずがない」

この剣でお前を刺すとどうなる?」






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地下にたどり着くと、そこには闇の悪魔がいた。彼は語りかけた。


「よくぞ来た、サウザー。お前をどれほど待ちわびたことか……いまやアズガルドの王となった男よ。そして、これから世界の王となる者よ――」

「世界の王、だと?」


サウザーが冷ややかに言葉を返すと、悪魔は口元に笑みを浮かべて言った。


「そうとも。お前こそ、世界を統べる器だ。右手に闇の魔剣を携え、左手にわたしの手綱を握る。そしてその足で、世界の全てを踏みつけにする……」


悪魔は肩を震わせ笑った。彼を縛る鉄の鎖が、じゃらりと音を立てた。


「サウザー、わたしを解き放て。そうすれば、世界の全てを貴様にくれてやろう」

「世界のすべて?たかが悪魔の分際で、随分大きく出たな」

「ふ、ふ、ふ。わたしは悪魔ではい――神、だ。もう一人の、な」


サウザーが眉を潜めると、悪魔は続けた。


「この世界には2つの神がいる。すなわち善神と悪神なり。善神とは、あの畜群が


奴らは己を羊と称しているが、鼠だ。小賢しい。

そして悪神とは、お前のような聡い人間が求めるものだ。

この世界を満たす真理だ。


しかしそれは、まことではない。世界の真理ではない。

ではなぜ、悪があるのか。


お前たちはこのふたつを合わせて唯一神などと読んでいるが、おかしいとはおもわぬのか……

悪魔がなぜ存在するのか。そして滅びることがないのかを

なぜ唯一の神が、悪魔をのさばらせておく?それはこの世界に究極の善と究極の悪とがあるからにほかならない。その究極の悪とは、すなわち我、悪神アンブロゴスなり」

「戯言だ。お前は闇の悪魔だ。一介の悪魔に過ぎない」


「ふ、ふ、ふ。ならばわたしの力の一端を見せるとしよう。お前のもっとも欲しがっているものを与えるとしよう」

「俺が欲しがっているもの?」

「ふ、ふ、ふ。見るがよい……」


悪魔の手が開かれると、その中には、女が寝ていた。

サウザーは息を呑んだ。


「エレノア!」

「お前は何度も来ていたな、暗い地下の牢獄に。この女に会うために……」


アンブロゴスの口元に、嗜虐的な笑みが浮かぶ。


「わたしは見ていたぞ。光も差さない暗い地下の牢獄で、この女の首が括られるのを。

この女は泣いていた。そして答えもしない神に祈った。夜には膝を抱えて眠っていた。いよいよもって処刑の日、手枷を外されることを拒んだ。恐怖に足が震え。刑場へと続く廊下で糞を漏らした。

そしてこの細い首に縄が括られ羽目板が外されるその瞬間、この女はお前の名前を叫んだ……


突如、悪魔は耳をつんざくような大音響で叫んだ。


「サウザー!サウザー!サウザー!……首吊台の真下の暗がりからそれを見ていた

女が死に、弛緩した体から垂れ落ちた

糞尿がわたしの顔にかかるのを感じながら、わたしは思ったのだ

なぜ、この女は殺されなければならなかったのだと…・・

この女が一体なんの罪をおかしたというのだと

人はこの女が悪の魔法を使ったという。



人はそれを禁忌という


だが禁忌とはなにか。


だがお前たち人は、人を殺す魔法を、白昼堂々研究しているではないか!

人を蘇らせる魔法が禁じられて、人を殺す魔法が推奨される。おかしいと思わないか……」

人を殺すことが光なのか!人を蘇らせることが、なぜ闇なのか!

人を殺す魔法と人を蘇らせる魔法と、どちらが人を殺した!」


「お前の言っていることは、まやかしだ」

「サウザー、このエレノアもまやかしか?」


エレノアは微笑みかけた。


「彼女に触ってみればいい。唇の感触を確かめればいい。乳房のぬくもりを感じればいい。お前の触れたことのない女の入口に、指を這わせてみればいい……」


しかし、サウザーはエレノアを刺した

エレノアは砂になって崩れ落ちた。


「なぜ殺した?」

「人が、蘇るはずがない」


サウザーは目を覆い涙を流した。そして言った。


「アンブロゴスよ、おかしいと思っているのはお前の方ではないのか?

俺は闇の魔剣に引き寄せられて、この扉を開いた。しかしいま、こうして魔剣を手に取りながら、すでにお前を欲していない。だからお前は、俺の腕に必死に絡みついている。なぜか……」


「俺が死の魔剣を欲した理由はほかでもない。殺したい人間がいたからだ。

だがそいつはもう死んだ。俺の腕の中で、剣で背中から心臓を貫かれて!口から血を吹き出して倒れた!

俺はそいつの息の根が止まり呼吸を留めるのを見届けた。汚え口から魂が出るまで目玉を覗き込んでやった。

そいつの王国も滅んだ。エレノアに石を投げた民草とかいうゴミも死んだ。つい今朝方のことだ……」」

「なにもかも死ねばいいと思った。全てを破壊しようと思った。だがおれは、友だけは、救いたかったんだ……」


悪魔は言った。


「サウザー、お前に不幸が降り注ぐのは、全て神のせいだ……」


悪魔は続けた。


「サウザー!わたしと共に、神を滅ぼせ!」

「断る!」

「何故だ!」

「滅ぼすも何も!」


サウザーは言った。


「俺はとうに神など捨てた。もう信じてはいない」


サウザーがそう言うと、死の魔剣は手から滑り落ちた







「だが全ての人間が石を投げたわけではなかった


「お前が王を殺さなければ、お前は闇に導かれていた。そうすれば、滅んでいたのはこの国だけではなかっただろう」


「おれにそんな力があるのか?」

「ある。


「どの道この国が滅ぶことは、避けようがなかった」





「それはまったく関係ないと言っておこう。気が晴れたか?」



ミカエルの予言曰く、だから闇の魔剣を探したんじゃないのか


「そらはありうる




この世界の北の果てに、レーニアという名の高い山がある。標高5万フィートの山頂は世界のはじめから溶けたこともない氷河で覆われている。


氷点下二百度に至るという……


だがそれがこの悪魔の限界だ。この女は、氷の悪魔ではない。 冬は生きている。こいつは全てが止まった死の世界を知らない……




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