アマンダの生誕
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あくる年の夏至の日、この世界に二人の赤子が生まれ落ちた。
一人は、王女セレスティアの身体に宿った、神の御子である。
王族の子供は、取り違えを防ぐため、その出産は公開される習わしだった。セレスティアも、伝統にならい、大勢の王族が見守る中、子を生んだ。
しかし、その御子が身体から生まれ落ちた時、王族たちは思わず息を呑んだ。
生まれ落ちた御子の身体は、あたかも全身が赤黒い血に染まっているように見えたのだ。最初、貴族たちは、御子が死産したのかと恐れた。王は赤子の姿を見ると、思わず椅子を蹴り立ち上り、呆然とした。ひとりの貴婦人などは、早とちりをして、慟哭の叫び声を上げた。しかし、産婆が焦ることなく慣れた手つきでその体を清めると、やがて彼女の身体を覆う赤いものの正体は明らかとなった。
それは決して血などではなかった。それは、赤子の背中を覆っている、赤く美しい六枚の羽根だったのだ。
羽は鮮烈な赤い輝きで、その部屋を照らした。
赤子はゆっくりと目を見開き、祖父の顔を覗き込んだ。彼女はその眩しいほど鮮やかな赤い羽根が、そわそわと動いた。そして、次の瞬間には、彼女は赤子らしく、目を細めて、大きな大きな泣き声を上げ始めた。
産婆は彼女を白い布でくるむと、彼女を抱きかかえて王のそばに寄った。
【 産婆 】「素敵な女の子ですよ」
王は、赤子を受け取り、やさしくその胸に抱いた。
そうして王が彼女の顔を覗き込んでいると、赤子の頭上に、段々と金色に輝く光の輪が現れはじめた。それこそは、かつて数多の芸術に描かれてきた、神性の証明、天使の光輪だった。それは、間違いなく彼女が神の御子である証だった。
王は貴族たちを振り返り、言った。
【 王 】「この子を、アマンダと名付けよう」
(イラスト 011 02)
王女の寝室は、いまや歓喜の叫びに満たされた。
神の御子生誕の知らせは、彼女の名前とともに、わずか一日で国中を駆け巡った。
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しかし、王女が生まれて翌日、王宮襲撃事件がおこる。
アマンダ生誕を目撃した貴族は、皆殺しに会う
アマンダが、攫われそうになる。だが、近衛長ゼノンと、フロイドの活躍により、事なきを得る
犯人の暗者は、捕縛された。そして、行方もしれぬ地下へと監禁された。
この事件により、近衛隊長のフロイドは、片腕を失った。
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フロイドが教会で寝込んでいると、王が見舞いに来た。王は言った。
「フロイドよ、お前の息子ももう生まれておろう。今は帰郷せよ」
「は」
フロイドは、年金を得て、田舎へと買帰郷した。
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