7.ついに冒険、この世界の広さとは
村から出て初めての一步、それはとてつもなく新鮮で澄んだものだった。
野に吹きかける風に動物たちの喧騒、見るだけで目の保養になる緑の芝生、そのすべてが心地良い。
「改めて見るけど、本当にすごい。まるで外国にでも来たかのようだな」
「外国というか、世界すら違うけどね」
たしかにそうだ、この世界が充実しすぎていて、俺が死んだことを完全に忘れていた。
「そういえば、次は何処に行くんだっけ?地図もないしこの世界の広さってどのくらいなんだ?」
「色々と質問が飛んでくるわね、質問するならまず1つにしなさいよ」
この世界に対する疑問が多すぎてがっつきすぎてしまい、ティアに諭された。
「そうね、あまりしたくないけど致し方ない」
次の瞬間、ティアの手が輝き、紙のようなシルエットが浮かぶと、そこには地図があった。
「いやいやいや、ちょっと待て。何がどうしたらそんなことができる、だって、地図」
「神がこんなこともできないと思った?神の力を舐めるんじゃないわよ。こんなの簡単にできるんだから」
流石は神の技量、人間にできなきことを平然とやってのける。
「私達が次に行くところは……ヴィブラントの町ね。もう一つの名を中央地区って呼ばれているわ」
「中央地区か、なんかちょっとかっこいいな」
「名前も避ることながらかなり栄えてるわよ。茂夫が好きなゴブリン肉だって腐るほど売ってる」
「まじかよ!今すぐ行くしかないな」
「茂夫は本当にゴブリン肉が好きなのね……最初はあんなに嫌悪してたのに、ちょっと嬉しいわ」
ティアは何に対して嬉しいと思ったんだ。
自分が創った動物を美味しく頂いてくれたから、はたまた、俺が異世界飯の偏見を取り払ったからだろうか。
まあ何にせよ俺の頭は一瞬でまたゴブリン肉に支配され、俺は考えることを辞めた。
今すぐ行くとは言ったものの、地図を見たらその気が失せるほどに遠かった。
地図に示された大きさは、縦横共に3000kmという悍ましい数字が俺の視界に入った。
ヴィブラントの町はこの地図で見ると本当に真ん中にあった。
(流石は中央都市って言われるだけあるな)
そして俺たちの現在地は大体中央地区から大体500kmほどはありそうだ。
「ティア……?これ流石に遠すぎるんじゃないか?」
「人間にしては遠いかもね、言うて1ヶ月くらいで行けるんじゃない?」
1ヶ月で行けるなんて本当かよ、飛脚じゃんと心の中でティアに悪態をついた。
「1ヶ月風呂も入れないのかよ、寝袋はどうする、地べたで寝るのか?」
「お風呂なんて入らなくていいじゃない、寝袋はない、地面で寝る、これで解決じゃない」
「いやいやいや、生きていける云々じゃなくて、必要最低限人間の尊厳ある生活はできないってことか」
「死ななければいいのよ死ななければ、本当に異世界人は几帳面ね」
当たり前すぎて笑えてこない……が、よくよく考えればそうだな。
異世界で贅沢すること自体間違っていた。
「まあ、ごたごた言ってても仕方ないか、幸い匂いを気にしないでいいのはいいな。誰かさんが風呂に入らないせいでな」
「うるさいわね、ずっとあそこにいたんだから仕方ないじゃない。お風呂、入ったこともないんだし」
いや、入ったことないのかよ。まあ、ずっとあそこにいたら風呂に入る必要性もないってわけか。
ふと、俺が疑問に思ったことをティアに言う。
「中央地区の道中に小さい町が何個かあるから、まずはそこに行ってみるのもいいんじゃないか?」
そう言うとティアはなにか気づいたようにはっとした。
「確かに……ヴィブラントの町に執着しすぎて、他の町とか村、視界から除外してたわ」
「除外すんなよ。そうだな、まずはここから50km先くらいにあるスモール村とかに行ってみようか」
「そうね、疲れを癒やしたり、ちょっとした物資を集めるくらいならできるんじゃない?まあ、お風呂もちょっとは気になるしね」
「あの時疲れすぎて風呂はいらなかったからな。よし、ひとまずそのスモール村まで行ってみるか」
早速俺たちはスモール村を目指すべく、また足を動かした。
次回はスモール村の話にしようと思います。
楽しみにしていてください。