異世界転職!?女神と出会った社畜の運命
・初めての異世界に降り立つ主人公の、まったり旅が始まります。
・まったり進行(今後どうなるかはわかりません)+少しコメディ要素あり(?)
初めての投稿なので、温かく見守っていただけると嬉しいです。
※このお話は10話前後で完結を目指しています。
反響が良かったら続きも書きますが。
「……休みてぇ」
昼休憩中、朝コンビニで買った冷めた唐揚げをつまみながら、俺――藤本茂夫はぼそりと呟いた。
毎朝早起きして会社に行く準備をし、満員電車に揺られて1時間。
会社で働いて、帰って寝るだけ。そんな"作業化した人生"を、もう10年も続けている。
ろくな大学を出られなかった俺は、気づけばブラック企業に拾われ、雑務と残業に追われる毎日。
このまま定年まで、何十年もこんなサイクルが続くと思うと――
そりゃメンタルも壊れるわけだ。
「……流石にこのままだと、俺の心が死ぬ。」
そう思った瞬間、頭がフル回転していた。
考えろ、考えろ、俺……!
――もう決めた。今月中に辞めさせていただきます。
心の中でそう決意したところで、昼休憩が終わるアラームが鳴った。
慌てて弁当箱を片づけ、俺はデスクに腰を下ろした。
辞めると決心したせいか、なぜか仕事に妙に集中できた。
気づけば定時(仮)になっていた。……が。
「茂夫くん、その資料、明日が締切だから今日中に作っちゃってね〜」
「えっ!? この仕事、昨日振られたばっかですけど……」
「そんなの関係ないよ。締切は明日。だから“今日”終わらせようね〜」
「……はい」
こういう理不尽は、もう日常茶飯事。でも今回は――量が桁違いだ。
「……今日、絶対終電コースじゃん……」
そんな愚痴をこぼしながら、俺は机に向かい続けた。
……はずだったのだが。
「おいおいおい……ここ、どこだよ……」
目の前に広がっていたのは、仕事の資料でもなく、パソコンの画面でもなく――巨大な教会だった。
状況が意味不明すぎて混乱していると、背後から声がした。
「久しぶりに異世界人が来たわね」
「うわぁっ!? ……誰!?」
驚いて振り返ると、そこには長い金髪をなびかせた美少女が立っていた。
「自己紹介がまだだったわね。私はティア・ソフィエル。この教会の女神をやってるわ」
「えっと……藤本茂夫です」
名前からして俺の世界じゃない感が満載だし、女神って名乗ってるし……まさかとは思ったが、聞いてみた。
「もしかして俺って……異世界転生した?」
「ん〜あなたの世界ではそう呼ぶのかしらね」
「……マジかよ」
どうやら俺は過労で倒れたのだろう。
だが思ってたよりあっさり異世界転生してて、逆に驚きだ。
「じゃ、じゃあ……俺、魔王とか討伐する使命を背負わされたりするの!? 伝説の勇者的なやつ!?」
「ないわ。安心して。あんた、弱そうだし」
……最後の一言、聞き捨てならない。
ティアの説明によると、本来は魔王討伐の“試練”を受けるらしいのだが、俺のように適性も潜在能力もまるでない人間は、その時点で対象外になるとのこと。
「……そんなに俺、弱いのか……」
でもその代わり、女神の加護をもらえたり、ピンチのときにティアを呼び出せる特典がついてくるらしい。
「ティアって、俺のガイドとかしてくれるの?」
「もちろん。異世界人が来るなんて滅多にないし、いつも暇なのよ」
……女神、ヒマなのか。
異世界人の来訪は、数十年に一度レベル。そりゃレアだ。
「じゃ、次は世界に行く前に、いくつか注意事項を伝えるわよ。ちゃんと聞いておいてね」
「はい」
ティアが口にしたのは、以下の3つのルールだった。
野生の生物とはなるべく接触しないこと
世界で犯罪を犯さないこと
危険な目に遭ったら、ひとりで解決せずティアを呼ぶこと
これさえ守れば、とりあえず命の危険はないらしい。
「準備はできた? ちゃんとルールは守りなさいよ?」
「ああ、準備もできてるし、ルールも把握した」
「なら問題ないわ。それじゃあ――出発!」
眩い光に包まれながら、俺は扉の向こうへと足を踏み出した。
こうして――
俺、藤本茂夫(34)は、ついにブラック企業から異世界に転職(?)した。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます!
今回は自分にとってちょっと挑戦な内容だったので、書いていてとても楽しかったです。
ティアちゃんは、あえて淑やかにせず、元気な性格で描いてみました(笑)
次回は、異世界での初めての村。まったり生活編になる予定です。
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