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心霊写真

「これ、見て。」


いつもの公園で日光浴をしていると、珍しく少年の方から話しかけてきた。

いつもは僕がすごいものを見せて、少年にオカルトを通じて大人の階段を昇らせているので、こちらから話しかけることが多いのだ。


この前なんか大変だった。

英霊にテレビのヒーロー物が入るのかと聞かれたので、わざわざテレビ局へと連絡をとった。

向こうの担当者に、えーと、なんだっけな、名前は忘れたが、ヒーローが本当に英雄だと信じている少年がいるので、護国神社へとなにか奉納させてくれないかと話をしたのだ。


オカルトに大切なものはリアリティだ。

信じる気持ちがUFOを呼び、幽霊を呼ぶ。

妖精も見えるし、かめはめ波だって撃てる様になるのだ。


サンタクロースを信じているかの様な純真さを守りたいと思ったのだ。

もし数年後その気持ちを大人と同じ様に忘れてしまっても構わないが、僕のせいでそうなるのは嫌だ。


今回少年が見せてくれたのは、所謂心霊写真だ。


遠足か何かだろうか、少年ともう一人男の子がベンチに座りながらお弁当を広げている途中でカメラを向けられて、ピースサインをしながら笑っている良い写真だ。


生え替わりの途中で抜けた前歯の黒い穴が眩しい。


「何処だい?ここは。」


「動物園。」


成程。

そこに設置されている東屋のような屋根付きのベンチで、後ろは生垣なのか緑が見える。


その東屋の屋根を支えている柱に、確かに女の人の様な雰囲気を感じる。


シュミラクラ現象という有名な、点が3つ目と口のあたりに配置されているだけで人はそれを人の顔だと認知するという様なものが、心霊写真の正体だと言われる事がある。


事実それが多数なのだろうが、この写真は不思議と女の人だという気がするのだ。


「この写真でクラスは戦争になってる。

俺たちは幽霊に見える。


でも委員長達は全然見えないって。

脅かすのは悪いって言ってる。」


「委員長たちはどんな子?」


「うるさい女子たち。」


ますます不思議だな。

こういうオカルティックな事は、どちらかというと逆に男性は否定気味で、女性の方が好む傾向にあるのに。


占いなどで普段からの触れやすさも違うのだろうが、個人の好みはあれど、傾向として確かにそういうものがある。


「分かった。僕が調べてみようか。

その写真を預かっても良いかい?

あとこの東屋の場所を教えて欲しい。」


「いいよ。

場所は…鳥が沢山いるところの近く。」



次の日の昼ごろ、動物園へと赴いた僕は他の動物には目もくれずに、真っ直ぐ奥にある鳥園の方へと向かっていた。

もう少し遅い時間の方がこういうのには趣があるかもしれないが、なるべく写真を撮った時間も合わせるべきだろうと考えた。


鳥園の手前にはいくつも東屋が並び、休憩スペースの様になっている。


時間も時間なのでちらほらと休憩している人がいるが、平日なのでそこまで多くはない。


好奇心が勝って失念していたが、今日が他の学校の遠足じゃ無くて良かった。


少年はあまり僕のことを気にしないが、子供の周りをウロウロするのは余り好まれないし、東屋の柱を調べているなんて意味不明なことを言えば通報待ったなしだ。


写真と見比べながら一つ一つ東屋を見ていく。


7つ並んだ中のおそらく右端二つのどちらかだろうと、後ろの生垣から推測は出来るが、なにも感じないし近くに寄ってみても、凹凸のある木の柱に人の顔になりそうな凹みは見当たらない。


別の東屋も念の為見てみたが、どれも「女の人」に見える様なものは無かった。


「本当に幽霊が映り込んだのかもしれないな。」


僕は嬉しくなってもう少しここにいる事にした。

売店でサンドウィッチとコーヒーを購入して右端の東屋で食べているが、少しも不気味な感じはしなかった。


…ショタコン幽霊かなにかなのか?

根性なしめ。


そう思いながらそこそこの長い時間ぼーっとしていると、日差しが目に入ってきた。

日が傾くと屋根から太陽が外れ、中の影が侵されるのだ。


きちんと調査もしたし、少年には幽霊が通りがかったのだろうと伝えようと立ち上がったとき、驚愕の事実に気がついた。


日が入って始めて分かる。

そういうこともあるものだ。


木の柱の影が伸びた先には強調された凹凸がはっきりと写っていた。


つまり、なんだ、その、膨らみがあった。

慎まやかだが、確かに…女性だ。


大人の女性の丁度、うん、胸部辺りが薄っすらと二つ膨らんでいるのだ。

そうか、小学生とはいえナメてたな。

彼らは男だ。

そう、男なのだ。


口うるさい女子の委員長達には分からないはずである。


目と口のシュミラクラ現象ではなかったが、確かに錯覚するものがそこにはあった。


僕はなんと少年に伝えたものかと考えて、気が滅入っていた。


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