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地元の神社

いつも僕らが会っている公園は、厳密には公園というわけではなく、護国神社内にある境内の一部だ。


かなり広く、中央部にはボートも乗ることの出来る池があり、休日はカップルや家族連れがそれに乗っている姿を見ることが出来る。


少し歩くと寂れかけた繁華街があり、もう少し歩くと駅がある。


そんな立地だ。


「護国神社ってさ、神様を祀る為に作られたんじゃなくって、英霊を祀る為に作られた神社なんだよ。」


「ふぅん。」


英霊、つまり公務殉職者や戦争で亡くなった人達を鎮めているという訳だ。

神様が元々そこにいたり、御神体があるという他の神社とは成立から違う。

国のために働いた人達を死後に祀るので、御利益としては長寿、厄除けとされていることが多い。


「えいれいって何。」


もちろん当時の俺が知る由もなく、率直な疑問を先生へ向けた。

先生はなるべく子供にもわかりやすく説明しようとしてくれてはいたが、それが余計な誤解が生まれる一因だったと今になって思う。


「英霊はね…えーと例えば、戦争へ行った兵隊さんが沢山亡くなったり、警察や消防士や、地域によっては屯田兵っていう開拓に従事…えーと、そうだな、町を作った人が亡くなったとするだろう?」


「うん。」


「そういう国や沢山の人を守ったり、助けたりした人は神様になるんだって。

その人たちを祀るのがここなんだ。


あそこの拝殿…木の扉の中にその人たちが使っていた刀が納められてたりするよ。」


「そっか。

じゃあさ、グレンカイジャーもここにいるの?」


「…グレンカイジャー?」


「うん。

グレンカイジャー。」


グレンカイジャーは当時日曜日の朝に放送されていたヒーローの特撮番組だった。

そういう番組は卒業しかけていたが、なんとなく惰性で見た最後のヒーローが最終回で死ぬという、子供の俺には衝撃的な終わりで、それもヒーロー番組離れに繋がっていた。


グレンカイジャーは日本侵略を目論む秘密結社をやっつけるという、古来からある分かりやすいストーリーだ。

当時はギリギリまだ、フィクションとノンフィクションの境目が曖昧だったので、当然自分のヒーローも英霊に入ると思ったのだった。


「…ちょっと待ってね…?

…ははぁん、なるほど…子供番組か…。


…うーん、そうだね。

グレンカイジャーも居ると思うよ。」


「じゃああの扉の中にグレンブレードがあるんだ!

すげー。」


「グレンブレード…?

あぁ!グレンカイジャーの武器か!

どうだろうね、あるかもしれないね。」


「すげー。

見てみたい。」


のらりくらりとかわされて、当たり前だが関係者でも何でもない俺たちが拝殿の中を覗くなんて事はなかった。

しかしその何ヶ月か後に、一人で公園に居る際に、本物の住職を見つけた俺は、グレンカイジャーのグレンブレードを見せて欲しいとお願いした事があった。


そうすると何故かウキウキで拝殿を開けてくれて、奥に飾られているグレンブレードを見せてくれたのをよく覚えている。


今になって不思議に思う。

流石に拝殿に入っては居ないので、遠目で見ただけなのだが、架空の、しかも1クールしか放送されていないヒーローの剣がそこには確かにあった。


普通はある訳がないし、護国神社とグレンカイジャーを繋げた事は俺と先生しか知らない。

なので先生が住職にお願いしたのではないだろうか。

勢いで覗いた子供ががっかりしない様に。


当時の記憶が蘇り真相を知りたくなった俺は、その神社の事を少し調べてみた。

すると地方新聞の記事にその際の出来事が載っており、なんと公式が関わっている事が分かった。


先生は律儀に問い合わせて、熱心な子供がいるし、護国神社とはこういうものだから、英霊と呼べるのではないかと説得した結果公式が受け入れて、実際に撮影に使われたグレンブレードを奉納したのだそうだ。


その地方記事に写っている先生は、おそらく記者から注目されたであろうグレンカイジャーのポーズを取らされて苦笑いしていた。


調べながらしどろもどろ答えていた事から、決して詳しくないのに、特撮マニアだと思われたのだろう。


しかし、やはりよく知らなかった彼のポーズは左右逆だったので、特撮マニアからはニワカだと言われ、少しだけ叩かれていた。

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