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短編集

夢見られた物

作者: 豆苗4

 ドアがかすかに開かれている。奥を覗くと、薄暗い部屋の中にスポットライトに照らされた2枚の絵が飾られているのが見える。

 左手の壁には草原を流れる小川の絵が掲げられている。羊が点々と散らばりのんびりと草をはんでいる。水面は朝日を反射してキラキラと光っている。波のゆらめきひとつひとつが魚と羊にあいさつを送っているようだ。奥に見える森林からは新緑の兆しが伺える。これ以上ないほど澄み切った青空が地平線まで続いている。欠けた月は隅っこで控えめに佇んでいる。そよ風が草花を優しく揺らしている。鳥のさえずりは眠れる木々を次々と目覚めさせる。陽の光は大地を穏やかに照らし、悠久の日々を讃えている。穏やかな月日はずっと続くのだろう。

 右手の壁には水平線を臨む海辺の砂浜の絵がある。奥から手前にかけて分厚い雲が空を覆い始め、雷鳴の轟きが遥か先の山々をも震わせる。嵐の到来を告げる冷たく湿った風が吹きつけ、容赦なく砂を散らしていく。海面はどす黒く染まっていき、つい先程の海の色などもう誰も覚えていないだろう。海には白波が立ち始め、崖の岩を削り取るかのように激しくぶつかる。鳥が大きな鳴き声をあげ先を争うかのように飛び去っていった。一寸先を見通すことのできない豪雨と地を揺るがすような轟音が迫ってくる。平穏は一瞬にして破られる。

 ドアはそっと閉じられた。2つの絵は1人の画家が同じ景色を現実と夢の中でそれぞれ描いた絵だという。果たしてどちらが夢見られた物なのだろうか。

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