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自分のイメージのとらえ方についての良いサンプルになる気がして、わたしは始めに自分の職業を打ち明けた。
「霊は感じるんですけど、霊能力じゃなくて体質で解決している…みたいな、そんな感じの仕事です。」
あら、面白い、と女ーランと名乗った。偽名臭いなと思ったけれど、流石にそこまで突っ込む気にはならなかった。
「面白いわ。そういう、カテゴライズ出来ない人、大好きよ。わたしの親友もそういう人なの。」
類は友を呼ぶ、って言いますよね、とわたしが言うと、ランさんはきゃはは、と無邪気に笑った。これはわたしも洗いざらいぶちまけないとね、と悪戯好きそうな顔をした。読まれてるなー、と、わたしは内心ひるんだ。そして、彼女の打ち明け話は、わたしの想像を遥かに超えたものだった。ここからの話は、敢えて、わたしの忙しい相槌を割愛したものをお届けする。
「わたしはね、もともと蜘蛛なのよ。とある薬の研究所の窓の外にたまたま巣を張った女郎蜘蛛だったんだけど、かなり昔の話だから薬の管理とかもいい加減で、窓から捨てたりしてたのね。その薬を好奇心で口にして、色々と変化してしまって…かいつまんで言うと人間的になったのね。で、結構長生きした後に今の親友に出会って、まずは彼女の身体を借りたの。で、その中で人間の身体の構造を学んで、鹿肉を使って自分の身体を作って、そっちに移ったの。だから凄く驚いたのよ?あなたがわたしを見て鹿って呟いたときには。」
ランさんはそこまで話すと、じっとわたしの顔を見た。どう、こんな話信じられる?というような顔をして。わたしは、かなり予想を超えた話でしたけど、と率直な感想を口にした。
「でも、そういう話ほど、わたし信じちゃうんですよね。なんせ、自分が霊を吸い込んでる人間なもので。」
いいわ~、とランさんはどこかのママみたいな言い回しをした。
「あなたきっと、わたしたちと同類だわ。いつか三人で会いましょう。あとで連作先交換しましょうね。」
望むところです、とわたしは答えた。決闘でもすんのか、とするどいツッコミ。ううん、タダモノじゃないわ、この人。
折角なのでこのまま喫茶店にでも行きましょう、ということになった。望むところだ、とわたしはテンドンをした。ランさんは喜んだ。
お互いアイスコーヒーを飲みながら、誤差についての話を色々とした。自分と他者との誤差。仕事との誤差、社会との誤差、等々。あなたのような仕事ならその辺は気にする必要ないんじゃない?とランさんは言った。やっぱそうですかね、とわたしは答えた。
「実はね、わたしまだあなたに話してない秘密があるのよ。でもそれは今はまだ見せられない。わたしの親友もそろそろ帰ってくるだろうから、その時に見せてあげる…それは、わたしの仕事にも関係することよ。」
楽しみにしてます、とわたしは答えた。その時はきっと来るんだろうな、という感じがした。それは職業病のようなものではなく、ただ、人と人との繋がりの感触のようなものだ。そういうのって、きっとわたし以外の人たちにもあるはずだ。あるでしょう…?ないの?
親友が帰って来たらわたしから連絡を入れるわ。気長に待っててね、と、ランさんは言った。お願いします、とわたしも答えた。その時までお互いに連絡は取らないことにした。部屋に戻って、珍しくウキウキした。そして、未来が楽しみなんて、初めてのことかもしれないな、なんて考えた。その後、いままで考えたこともなかったけれど寂しい人間なのだろうかと思って。
※ランさんとはいったい何者なのか?詳しく知りたい方は、わたしの、「百虫少女」を読もう!