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手を取れ、手を離せ。  作者: ホロウ・シカエルボク
わたしの仕事
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わたしの能力について先に話しておきたい。この能力がどういう性格のものか、理解してもらえないとずっとすっきりしない感じになってしまうような気がして。あ、その前に。


わたしは日向あゆみと言います。二十…二十代、後半です。年齢より若く見られがちです。たぶん顔と身長のせいでしょう。仕事で親しくなった人たちには決まって名前をいじられます。裏稼業感満載の仕事しながら日向をあゆむって草生える、みたいな。ほっとけ。



生まれつき、この世のものならざる方々がよく見える子供でした。母親はもの心つかないうちに死に別れ、父親が男手ひとつで頑張って育ててくれました。少し単純だけれど、真面目ないいお父さんでした。わたしの成人式の後、少し具合が悪くなったから寝る、と言って、そのまま起きてくることはありませんでした。その頃にはもう、縁あってすでにいまのお仕事を始めていたので、生活に困るどころがどんどんアップグレードする有様でした。まあ、そんな話はいいとして…あまりに淡々と語り過ぎだと思われるかもしれません。でもほら、わたし今風に言うと見える子ちゃんなので。両親ともにきちんと(死後に)お別れも出来ましたし、そもそも命とはそういうものだと思ってしまっている―そうならざるを得ない生活をしてきましたので、こんな風に話してしまうのはもう性格だとしか…。


ああ、前置きが変に長く。


よく見える子でした。最初は怯えるだけでした。引きこもった時期もありました。父親はあまり家に居ませんでしたが、理解してくれていました。お前のお母さんもよくそういうものの影響を受けてしんどそうにしていたよ、と教えてくれました。なんでも許されると人間逆にしっかりしなくちゃと考えるものです。わたしはなるべく普通に暮らすよう心掛け、ついにそうすることに成功しました。まだ小学校低学年生のころです。そんなある日、友達と遊びに行った廃神社でとんでもなく怖ろしいものを目にしたのです。


それは以前、神様としてそこで祀られていたものでした。放置されてとてもお怒りになっていて、堪忍袋の緒が切れて、誰でもいいから酷い目に遭わせてやる、と盛り上がったところにのこのことわたしがやって来てしまったのです。友達は少し離れたところにお花を摘みに行っていました。わたしはどうしていいかわからず、もうこれは駄目かもわからんねと半ば諦めてしまい、恐怖で過呼吸になってしまい、せめて落ち着こうと深呼吸を始めたところ、何度目かの吸って~、のところで、その、以前神様だった怖ろしいものを吸い込んでしまったのです。次の吐いて~、の時点でそれはすでに、わたしの中で消滅してしまっていました。友達がぱたぱたとやって来て、茫然としているわたしに、どうしたの?と可愛く訊いてきました。わたしはなんでもない、と答え、違うところで遊ぼう、と彼女を誘いそこを後にしたのです。


これは勝てる、それが、この一件でわたしが得た確信でした。



というわけで、別に人間の限界を超える修行をしたとかそういうわけでもなく、わたしはそういうことが出来る人だった、というお話。ちなみにこの能力、いわゆる霊能力というものではないので、霊格、霊力問わず、霊魂であればどんなものだって吸うことが出来る。驚きの吸引力。信頼の実績。


ちなみに、昔話をするときにですます調になるのはただの癖なので、深く考えないで欲しい。

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