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それがですね、とわたしは現在の状況を説明した。
「…ということで、少し面倒な仕事が入りそうなんですよ。」
「面倒って?手伝い欲しいならあたしたち行くよ?」
「お気持ちは有難いのですが、用心棒的な人を求めているのですよ。」
「だから、あたしたちならうってつけよ。」
「ランさんたち、強いの?」
ハンッ、っとランさんは外人みたいな笑い方をする。
「ユカなんて、その筋の事務所を一人で壊滅させたことあるのよ。そしてわたしにも、おなじくらいの能力があるわ…隠してることがあるって、言ったでしょ?実際見たら腰抜かすかもよ?」
特にユカは、絵的なインパクトにもこだわり強いし、とランさんは付け足したが、わたしにはどうにもよく理解出来なかった。まあでも、そういうことなら、もしあの店長さんの物件が仕事になってももうなにも心配することは無いか。
「じゃあ、もし仕事することになったら手伝ってもらってもいいですか?」
「もちろん。」
「じゃあ、決まったら電話しますね。」
「おっけー。」
ユカさんが一人で事務所を壊滅…?いったいあの人たちはなにを隠しているというのだろう―その時わたしは思い出した。ユカさんと別れた時、一瞬のうちに姿が見えなくなっていたことを。
数日後、店長さんから電話があり、半グレたちはまだホテルを基地にしているようだ、とのこと。はっきりとは確認出来ないが、十人以上の人間の出入りを確認した。
「大所帯ですね…。」
「わたしとしてもこんなことをお願いすることは出来ません…彼らが出て行くのをとりあえず待つとしますよ。」
いえ、とわたしは店長の申し出を制止した。
「腕のいい、信頼出来る用心棒を雇うツテが出来たので、お受け出来ますよ?」
本当ですか?と、店長さんは不安そうな声になった。
「もし怪我とか…もっと酷いことになったらと思うと…。」
大丈夫です、とわたし。
「もの凄く強い人たちです。わたしは傷ひとつつかずに自分の仕事をすることが出来ます。」
国家権力とかですか、と店長さんは言った。思いもよらない話になって動揺しているのかもしれない。いいえ、とわたしは答えた。
「なんて言うか…裏の世界に凄く関わりの深い人たちです。
「ちぃっと怖いですね、それ。」
店長さんはどうやらわたしの心配をしてくれているようだった。
「怖くないんですよ、実はわたしの友達なんです。だから人となりの心配はありません。」
店長さんはしばらく唸っていたが、最終的にわたしを信じて任せる、と言ってくれた。仕事の性質上どう転ぶかわたしにもまるで見えないので、料金はすべて成功報酬でということにした。店長さんの電話を切った後、すぐランさんに電話した。
「例の仕事、やることになりました。明日とかどうですか?」
ユカさんも居るのだろう、なにやら相談していた。
「今夜パッパッと片付けちゃわない?」
わたしは予想もしてなかった返事にポカンとした。移動のことなら大丈夫よ、とランさんは言った。
「わたしたち、新幹線よりも速いから。」
「えーと、ちょっと何言ってるかわからない…。」
百聞は一見に如かず、とランさんは叫んだ。
「とりあえず住所教えて。電話切って支度してて。すぐにわたしの言ってることがわかるから。いろいろなことを見てもらうけど驚かないでね。」
わかりました、とわたしは答えて電話を切った。それから半信半疑で外出の支度を整えた。




