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正解、とユカさんは満面の笑みで数回拍手をした。
「あなたのそれは霊感?」
どうでしょう、とわたし。
「霊感のようなもの…まあ霊感で良いです、霊を感じているわけだし。」
「霊能者なの?」
「くくりは一緒ですかね。手段は違いますけど。」
へぇ、と、ユカさんは好奇心旺盛な表情で答えた。
「どういう手段なの?」
「グイグイ来ますね。」
言ったでしょ、とユカ。
「あなたは凄く興味深いのよ、わたしにとって。」
わたしは肩をすくめて自分の仕事を説明した。
「見てみたいわ、それ―見れないかな?」
まあ、人に見せたことはないけれど、とわたし。
「依頼人が肝要な方なら、同行するのは構わないですよ…霊を見ることが出来るの?」
見えない、とユカさんは言った。見えんのかい、と思わずツッコンだ。
「いいツッコミするわね。」
あれ?つい最近同じようなことがあった気がする。わたしは記憶をクルクルと巻き戻した。
「お友達にランさんという綺麗な女性がいらっしゃる?」
彼女を知ってるの?と、ユカさんは今日一嬉しそうな顔をした。それから、あ、いや待って待って…と、どっかの名探偵みたいなポーズで記憶を巻き戻した。
「ランが温泉で会った…日向さん?」
「そうです。」
こんなことってあるのね、とユカは目をぐるぐる回しながら言った。
「あなたに連絡しなくちゃ、って言ってたわよ、彼女。でもいまは、ちょっと研究が忙しくてね…。没頭するタイプだから終わるまで忘れてるんじゃないかな。」
「研究?」
薬の研究、とユカ。
「彼女は薬の研究所のそばでずっと生きていたから、薬の知識が凄いのよ。それで、独自にいろいろな薬を作っているの。もちろん公表出来るようなものじゃないけどね。知的好奇心の塊よ。」
あの気品は知識量から来るものなのか、とわたしは納得した。
「まさかこんなところで会うなんてね…この辺に住んでるの?」
「ここから半時間くらいの街の中ですね。」
そうかー、とユカさんはニコニコしながら頷いた。なんだか朗らかな人だな、とわたしは思った。
「それで、ユカさんはどうしてここに?」
忘れてた、とユカさんは真面目な顔になった。
「住職さんに用があって。」
「今日は来客の予定はない、って仰ってましたけど。」
「いきなり行くのマズいかなぁ?」
「マズくはないと思いますが…なんなら同行しましょうか?わたし、顔パスなんで。」
「本当に何者なのよ、あなた。」
わたしは笑って、こう答えた。
「まぁ…門下生みたいなもんです。」
というわけでわたしたちは寺へと舞い戻った。電動自転車の二人乗りって違反なのかしら?
わたしたちがお寺の前に着くと、住職さんは庭を掃除しているところだった。
「どうされました?」
すみません、とわたしはまず詫びた。
「こちらの方がお寺に用があるとのことで。」
住職さんはユカさんを見て一瞬、怪訝な表情を浮かべた。でもそれは、すぐに柔和な表情の後ろに隠れた。
「どういったご用件で。」
ユカさんは丁寧に一礼して、こう言った。
「わたしはユカと申します。探偵をやっています。島田健司さんと仕事をしておりました。」
住職さんは思いもよらぬ名を聞いたという風に、目を細めた。




