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手を取れ、手を離せ。  作者: ホロウ・シカエルボク
たましい
10/31

2

目覚めると、辺りはもう暗くなっていた。昔墓地だった場所は、もうただの穴ぼこがたくさんあるだけの土地と化していた。目覚めて最初にやって来た感情は巨大な哀しみだった。わたしは地面に突っ伏してしばらくの間泣き続けていた。あの魂たちはみんな、もう終われるならなんだっていい、終わらせてくれるなら輪廻などどうでもいいという気持ちになっていた。もしもわたしが、吸って殺すだけのいい加減な力以外にもきちんとしたものを持っていたら、例えば彼らの思いをきちんと聞いて、あの世へと送ってやることも出来たのではあるまいか。初めて自分を無力だと思った。わたし以外の誰か、きちんとした霊能者なら、彼らの存在を感じ取ることが出来たのか、彼らをきちんと上げてやることが出来たのか?そんなことはわからないけれど、もしも自分が今ここでその力を持っていたなら、こんな無情な方法以外になにか、彼らの魂の為に出来ることがあったかもしれない。そのことが無性に悲しかった。繊細な職業じゃない、そんな言葉で割り切っていいカッコをしていただけだった。わたしは自分の仕事としてきちんとやっているという自負以上のことをなにも考えなかった。ひとしきり泣いて、地面に右のストレートを一発打ち込んだ。


「クソッ」


途中まで暗い中を歩いて降りて、古い公衆トイレを見つけ、そこの手洗いで顔や手を洗った。服に着いた土も出来るだけ落とした。それからタクシーを呼んで、駅までと告げると寝たふりをして会話を避けた。今日はどうしたって誰とも話をしたくなかった。自分の頭の中を整理するだけでいっぱいいっぱいだった。タクシーを降りるときに初めて気が付いたが、運転手は別のご職業を思わせる不機嫌な顔つきの方だった。それでも、ありがとうございましたという声は優しかった。もしかしたらある程度お察ししてくれたのかもしれない。それがどういう方向かはわからないけれど。


駅のそばの小さなレストランで眉間に皺を寄せたままハンバーグのセットを食べて、コーヒーを飲んだ。お会計をしてくれた女の子は少し怯えているみたいだった。ちょっと悪いことしたな、と思ったけれどもう後の祭りだった。駅で切符を買い、改札をさっさと済ませてホームの椅子で電車を待っている間に気持ちは少し落ち着いた。やがて電車がやって来た。滅多に来ない、もしかしたらもう二度と来ることがないかもしれない、そんな駅で電車に乗る時、なぜかわたしは人生というものの重さを強く感じてしまう。遠く、馴染みのない、知らない駅。わたしが来ても来なくてもここには当り前の毎日があって、わたしに関係なくそれは続いていく。気が付けば自分がいつもそんな場所に居るような気がする。そんな場所は傷ついたはぐれ能力者などに優しくしてくれはしない。おかげで電車に乗る頃にはわたしは自分をほとんど取り戻していた。


ずっとこの仕事を続けるのなら、もっといろんなことに対応出来るようにならなければならない。自前の力だけじゃ限界は必ず来る。キャリアを積めば積むほど、新しい局面は増えるだろう。その時にはもう二度と、今日みたいな思いはしたくない。わたしは思わずお茶のペッボトルを握り潰した。残っていたお茶が少し零れてしまった。靴の底でさっさっとやって、なかったことにした。そうそう、こういう対応力よ。

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