監視
次の日、俺は雪さんと過ごしていた。行方不明者が未だに増えているため学園は休みとなっている。そんな中俺と雪さんは能力者区域で事件の調査に動いていた。
「これ、警察に任せた方がいいんじゃ…」
「ダメだよ。警察は事件発生から1週間以上経っても誘拐された人たちを見つけられていない。可能性としては認識阻害系の能力者かな。そんなのが敵の中警察は一部誘拐されていた人たちを救助したと大々的に発表した。相手もその情報を手に入れて一層注意しているはず。でも逆に警察以外の人物には注意しなくなっている可能性が高い。これを狙うべきだ。」
「わかりました。でも具体的にはどうやって探すんですか?」
「五感を使う。」
「五感を使う?」
「東也君もできるようになった方がいい。まずは集中する。そして五感の一つに全ての集中力を回す。感覚がなくなって立つことすら難しくなるレベルで。」
「そんなこと可能なんですか?」
「まあ見ててよ。」
そう言うと雪さんは目を閉じる。そして数分後雪さんは再び目を開く。
「こっちに来て。」
「はい。」
俺は雪さんに連れられて人のいない場所に連れていかれた。
「東也君、つけられてたね。」
「え?」
「もう姿を現したら?」
雪さんがそう言うと後ろの電柱の影から見覚えのある女性が現れた。
「優香さん…」
「あら、覚えててくれたんだね。忘れられてると思ってたよ。」
「なんで貴方がここに…」
「そこの子が言ったでしょ?あなたをつけていたのよ。」
「なんでそんなことを…」
「あなたが私たちの計画の邪魔になる可能性のある能力を持っているからかしらね。昔存在していた能力者に運命を操る能力を持っていた人物が居たらしいわ。その人物は最強になった。まあ乱堂美咲を抜いてだけどね。あなたの能力はそれに類する力があると私たちは判断した。だからあなたを潰すことになったのよ。」
俺は何も言えなくなっていた。
(俺の能力が最強になる可能性がある?あり得ない…でも…)
そんな思考が俺の頭の中を埋め尽くす。
「僕のことを忘れないでよ。」
「君にも興味はあるけど無能力者は無能力者、私たちの敵ではないと判断したわ。」
「そう。で、ここから逃げられるとでも?」
「逃げる?違うわね。ここであなたたちを殺すのよ。」
優香さんがそう言った瞬間周りから10人程度の男女が現れる。覆面をつけているため顔は見えない。
「やりなさい!」
優香さんが合図を出した瞬間全員が襲い掛かってくる。俺は敵の攻撃を防ごうとするが防いだ瞬間別の敵から攻撃される。
「クソ…が…」
俺は始まって数分で虫の息だった。意識がもう持たなくなってきた瞬間。
「弟子への攻撃はそこまでにしてもらおうかな。」
という声が聞こえてくる。声の主はもちろん雪さんだ。雪さんはそう言った瞬間全員を順番になぎ倒していく。
「ここは一旦逃げた方が良さそうですね。」
「さっきも言ったけど、ここから逃げられるとでも?」
「逃げさせてもらいますよ。」
雪さんは蹴りを放つ。優香さんは紙一重でそれを避ける。どんな人間にも攻撃後には隙が開く。だがそれはかなりの高難易度、普通のカウンターとはわけが違う。戦闘経験が多い人間であればあるほどその隙は短い。雪さんともなればそれは0に等しい。そう思っていた。優香さんはわざと紙一重で回避して攻撃を放った。雪さんはそれをもろに食らいその場に倒れる。
「それではまた会いましょう。」
そう言って優香さんは逃げていった。俺はすぐに雪さんに駆け寄る。
「雪さん!」
「うん?何?」
雪さんは何もなかったように立ち上がる。
「え?大丈夫なんですか?」
「まあ、あの程度の攻撃じゃそんなダメージ受けないよ。」
「でも、さっきまで倒れてて…」
「演技だよ。相手を逃がすための。」
「え?最初から逃がすつもりだったんですか?」
「うん。さっき蹴りに行ったときに発信機つけたし、逃がして相手の拠点を見つけた方が後々楽になると思ったからね。」
「あの一瞬で…」
「じゃあ追いかけようか。」
そう言って雪さんは優香さんが逃げた方に歩いて行った。