最弱
俺は神崎東也。最弱の能力者だ。この世には能力者と無能力者が存在する。俺は能力者の中でも最弱として知られている。能力はありとあらゆる結果を見る能力だからだ。この能力は現状のまま進めば訪れる結果を見ることができる。俺が行動すれば結果は変わる。聞くだけなら強く感じるかもしれない。だが結果を変えられるのは俺経由で結果を知った者か俺自身なのだ。他人に話しても裏切られれば結果は変わらないし、俺自身で行動する場合は自分の身体能力でできる範囲になってしまうのだ。大きく結果を変えることもできない。そのため俺は最弱と言われている。この物語はそんな最弱の能力者と最強の無能力者が描く物語だ。
……
「はあ、また学校か…」
「どうしたのよ。元気ないわね。」
「凛か。」
俺に話しかけてきた女は上沢凛。能力は等価交換を行う能力だ。例えば記憶と運命を交換することができるような能力だ。ただし交換するものが同等の価値でなければ交換が行えない。価値は凛本人がどれくらい大切にしているかで決まるらしい。そんな使い方によってはかなり強い能力だ。
「東也、あんた、またいじめられてるでしょ?」
「…」
「私が解決するわよ?」
「いいよ。凛は巻き込みたくない。」
「はあ、あんたねぇ、私はあんたがやつれていくのを見たくないのよ。」
「…」
「まあいいわ。さっさと学校行くわよ。」
「…ああ」
そして俺と凛は学校に向かう。
……
俺が通っている学校は聖堂学園。聖堂学園は昔存在していた聖凛能力学園を改装したものらしく設備はかなり充実している。そして聖堂学園は実力主義である。実力の低いものは高いものに奴隷のように扱われる。俺もその一人だ。そして放課後俺は校舎裏に呼び出されていた。
「おい、ごみクズ。」
「は…はい。」
「お前さ、今日無能力者区域に行ってこいや。」
「な…そこは能力者は立ち入り禁止ですよ?」
「それがなんだ?俺に逆らうのかよ。」
俺が言い返すと相手は拳を作り殴る構えに入る。
「…わかりました…」
俺にはそう言うことしかできなかった。
俺は一度家に帰り無能力者区域に入る。無能力者区域は無能力者が集まっている地区で能力者が入ることは禁止されている。だがたまに勝手に入る能力者もいる。そしてそういう奴らは死体で発見されたり、行方不明になっている。そのため無能力者区域に入る能力者は今ではもういない。そんな中に俺は今から入ろうとしている。俺はそこに足を踏む入れていく。そして奥に奥に進んでいく。すると目の前から女性が歩いてくる。髪はロングで白髪、細い身体だが栄養は十分に取れている健康的な身体つきをしている。そしてかなり可愛い。俺はそんな女性に一瞬見惚れるもののすぐに正気を取り戻し警戒する。そんな中、女性が口を開く。
「君は能力者かい?」
その声は男性の声で目の前の女性が発した声とは思えなかった。俺はそれの驚きで一瞬固まる。
「おーい、聞こえてるかい?」
女性はそう聞いてくる。俺はいらない情報を除き平然を装う。
「ああ、俺は能力者だ。」
「なんでここに入って来たんだい?」
「学校の奴らから行って来いと言われた。」
俺は正直に答える。嘘をついても自分にいい方向に進むとは限らない。それなら本当のことを言った方がいいと判断したからだ。すると女性は再び質問を投げかけてくる。
「なんで断らなかったんだい?」
「それは俺の能力が弱いから…あいつらには勝てないから。」
俺がそう答えると女性は不思議そうにこちらを見てくる。
「なんで勝てないって思っているんだい?」
「なんでって、俺の能力が弱いから…」
「僕にはそれが分からない。この無能力者区域ではもし能力者が来たら無能力者が倒さなければならない。今まで僕は両手じゃ数えきれないほどの能力者を殺してきた。その中にはきっと君より強い能力者もいた。無能力者の僕でも勝てた相手を能力者の君が勝てないのかい?」
僕はその言葉に驚いた。こんな華奢そうに見える女性?が能力者を何人も殺しているということに。
「君は甘えているんだよ。今の環境に。この無能力者区域では弱いとすぐに殺され奪われる。君たちのことろじゃ殺しはご法度だろうけどね。ここではそれをしないと生きていけない、そんな環境だ。そんな環境に置かれれば君も勝てないなんて言えなくなる。死ぬ気で勝ちに行く。それが君はできていないんだよ。」
俺はその言葉に心を打たれた。死ぬ気で勝ちに行く…今までそんなことを考えたことはなかった。そんなこと考えなくても普通に過ごせたから…
「それで君はどうするんだい?ここで僕に殺されるのか。それとも家に帰るのか。ここはまだ入り口。今引き返せば怪我もせずに帰れるよ。」
そんな言葉に俺はこう返す。
俺を鍛えてください。」