第2話 王都へ行こう!1日目
マリー「それじゃあ、そろそろ行こっか?」
エイド「うん!」
マリーとエイドはあの後少しの休憩をしていた。
マリー「取り敢えず今からこの道を進んで、その先にある『王都ベルベジア』を目指すよ!」
マリーは地図をエイドに見せて、これからの予定を話し始めた。
エイド「おうと?」
エイドは聞き慣れない言葉に、頭の上に?を浮かべた。
マリー「王都っていうのはわかりやすく言うと、とっても大きな……街? みたいなものかな?」
王都とは本来、王宮や皇帝のいる都のことだが、マリーは幼いエイドでも理解できるよう説明をした。
エイド「うわぁ!僕、そんな所行ったことないから楽しみ!」
エイドは目を輝かせながら、これから向かう王都への期待に胸を高鳴らせた。
マリー「ただここからだとかなり遠くて、歩きだと普通は丸2日はかかっちゃいそうなんだよねぇ……歩けそう?」
一度連れて行くと決めたが、それでも心配なところは多々あり、まず王都に行くまでエイドの体力が持つのかを心配していた。
マリー(エイドの体力を考えると2日では着かないよねぇ……)
エイド「大丈夫、僕歩けるよ!」
マリー「……分かったわ、行きましょう!」
エイド「うん! それじゃあね、リスさん!」
エイドは今までずっとそばにいたリスに別れを告げ、マリーと一緒に歩き出した。
ザッ……ザッ……ザッ……
それから歩いて暫くして、周りには2人の歩いている音だけが響いていた。
マリー「エイド大丈夫? 疲れてない?」
エイド「全然平気だよ!」
マリーがエイドに疲れていないか聞くとエイドは元気な声で返事をした。
マリー(子供だけどなかなか体力があるのね……これなら思ってたより早く着けそう)
マリーはそんなことを考え、エイドの体力に関心していた。そしてさらに時間は経ち、太陽が西に傾きかけた頃……
マリー(流石に疲れて来たなぁ……エイドは……)
ずっと歩きっぱなしで疲れて来たマリーは、エイドも疲れているのではないかとエイドの方を見た、しかしそこには
エイド「♪〜」
鼻歌を歌いながらスキップで歩いているエイドの姿があった。
マリー(いや私でも疲れてるのに全く疲れてなさそう!? この子どんだけ体力あるのよ!)
マリーはエイドの全く疲れの見えない様子を見て、エイドが普通ではないことを改めて知ることになった。
マリー「ね、ねぇエイド、そろそろ暗くなってきたし、ここら辺で休まない?」
エイド「う〜ん……わかった!」
マリーはエイドが休むことを了承してくれて、やっと休めると安堵したのだった。
マリー「それじゃあまず火をつけよっか」
エイド「どうやってつけるの?」
マリー「ちょっと待ってね……これで良いかな?」
マリーは道から少し外れた所にある木の下に落ちていた枝を何本か拾ってくると、それを組んでバックパックの中から火打ち石とうちがね、そして麻紐をほぐしたものを取り出した。
マリー「これを使って火をつけるのよ」
エイド「へぇ……」
ガチッ!ガチッ!
マリーがほぐした麻紐に火をつける様子を、エイドはじっと見ていた。するとすぐに
マリー「おっ、ついた!あとは……ふぅ……ふぅ……よし!」
火花が麻紐につくと、マリーは息を吹きかけ始めた。それからすぐに火がつき、組んだ枝の中へ入れてキャンプファイヤーは完成した。
エイド「おぉ……ぱちぱちぱち」
マリー「ふふん♪ 冒険者としてはまだまだだけど、こういうのは沢山練習したんだから!」
マリー「さぁ、そろそろ食事にしましょう」
そう言ってマリーはバックパックの中から干し肉を2人分取り出した。
エイド「これは?」
エイドは干し肉を不思議な目で見ていた。
マリー「これは豚の干し肉よ。腐りづらくて長持ちするから、冒険者が遠出する時によく食べられるの」
エイド「ふーん……」
もぐもぐ
エイド「美味しい!」
マリー「ふふ、でも流石に何日も同じもの食べてると飽きちゃうのよねぇ……」
そんな話をしながら食事を済ませ、眠ろうとした2人だったが、ここでマリーがあることに気づいた。
マリー「見張りどうしよう……」
そう、寝ている間の火と周りを見張ることを全く考えていなかったのだ。
マリー(流石にこのまま寝るのはまずいよね……火が消えちゃうし、それに野盗が来ないとも限らないし……)
マリーが考えているとエイドが
エイド「僕がやろうか?」
マリー「え?」
エイドが自分が見張りをやると言い出した。
マリー「いやいや駄目だよ!子供にそんなことさせられないし、夜の間時間が来るまで起きてなきゃいけないんだよ?」
エイド「僕寝なくても大丈夫だよ?」
マリー「いやいや……」
マリーはエイドの申し出をすぐに却下した。しかし、自分が夜の間ずっと見張りをするというのも、現実的ではなかった。
マリー(背に腹はかえられない……か……)
マリー「分かったわ。ただし、眠たくなったらすぐに私を起こしなさいよ!いい?」
エイド「うん!」
マリーは不安しかなかったが、歩いた疲れもあり、横になってすぐに眠った。
日が登り始めた頃……
マリー「うーん……? はっ!」
マリーは辺りが明るくなっているのに気がつくとすぐに飛び起きた。そして周りを見ると
エイド「あっ!おはよう、マリーお姉ちゃん!」
そこには昨日と変わらない場所で火を見張っているエイドの姿があった。
マリー「え?まさか夜からずっと見張ってたの!?」
エイド「うん!言ったでしょ? 寝なくても大丈夫だって」
マリー「えぇ……」
マリーはエイドが夜からずっと見張っていたのに驚きを隠せなかった。まさかエイドが一晩中起きて見張りをしていたなんて、普通に考えれば無理だ。しかし目の前の火は消えておらず、それが何よりの証拠になっていた。
マリー「エイド……あなた本当に人間?」
冗談のつもりだった。だが、エイドから返ってきたのは予想外の答えだった。
エイド「違うよ?」
マリー「えっ?」
エイド「僕は人間じゃなくて、博士に作られたヒューマノイドだよ?」
マリー「ひゅーまのいど?」
エイド「うん。僕も詳しくは知らないけど、博士にヒューマノイドが何か教えてって聞くと『自分で考えて動ける凄いお人形』って教えてくれたよ」
マリー「ゴーレムみたいなもの?」
エイド「?」
ゴーレムとは、この世界でいう機械である。魔力を使って動かし、力仕事やモンスターの退治につかわれたりしている。しかし、ゴーレムはエイドのように自分の意思を持って喋ったり、人に似せて作られたりはしない。
マリー「……」
エイド「マリーお姉ちゃん……?」
マリー「あぁもう! 考えるのはやめ!今は王都に行くことを優先しましょ」
マリーはエイドのことは考えても答えが出ないと割りきり、考えるのをやめた。
エイド「うん……マリーお姉ちゃん……」
マリー「何?」
エイド「僕のこと、嫌いになった……?」
マリー「!」
エイドが泣き出しそうな顔をして、上目遣いでマリーを見ている。
マリー「嫌いになんてなってないよ!ただちょっと驚いたってだけだから、そんな顔しないの!」
エイド「うん……」
マリー「声が小さいぞー! もっと元気よく!」
エイド「……うん!」
マリーの言葉にエイドはまた元気な笑顔に戻っり、こうして2人は王都へ向かってまた歩き出した。
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