最終話 未来を残す
大変長らくお待たせ致しました。少し短いかもしれませんが楽しんでいただけると幸せます。
あとがきと活動報告にてお知らせがあります。そちらにも目を通していただきますようお願いいたします。
雅の誕生日から一週間が過ぎた。
二人が休日の今日は出来上がった写真を納められる雑貨のある店に足を運んだ。並んでガラス製の透き通った美しい額や細い金属が繊細に枠を縁取る写真立てなどを見ていく。
しゃがんで下の段の写真立てを見ていた瑞希は隣に立ってマジマジとさまざまな装飾の施されたアルバムを吟味する雅をちらりと見上げた。
誕生日以来、雅は外でもサングラスをかけなくなった。
大きな金色の瞳が輝いて興味津々にそれぞれに趣向が凝らされたアルバムを開いては閉じていく。その様子は正に興奮に目を輝かせ尻尾をちぎれんばかりに振るコジローを連想させて瑞希はふふ、と小さく笑いを漏らした。
「ねえ、雅」
瑞希はアルバムを夢中になっている雅に呼びかけた。雅が黙って視線を寄越す。
「これからも、この先も、皆で写った写真を沢山撮って、いっぱい残していきましょうね」
瑞希がにっこりすると雅も目元を緩緩ませ口角を上げて微かに微笑んだ。
瑞希は手元の木の枠で出来た温かみのある小さな写真立てに視線を落とすと再び口を開いた
「いつか……バックカーディナルと決着が着いて、魔女との戦いも終わって、平和に暮らせるようになったら……」
訥々と零すように言葉を紡いでカタリ、と写真立てを棚に戻すと今度は立ち上がって雅の目を真っ直ぐ見た。
「思い出ともまた違う……未来を残してみたいな、って……思うんです」
雅は棚にアルバムを戻して向き直り軽く首を傾げた。
「その、要するにですね」
遠回しな言い方をして上手く伝えられなかった瑞希は恥じらうように顔を赤くしてごにょごにょと言い淀んだ。雅が困惑したように眉を下げて視線で先を促す。
「あの、私と、雅の……子供が欲しいんです」
瑞稀が胸元で指をこねくり回しながらやっと伝えると、雅の目がまん丸になった。瑞希は少し照れたようにはにかむと言葉を続けた
「私も、雅も……血の繋がりのある人がもう居ないじゃないですか?それで……その、雅と私に子供が出来たら、血の繋がった家族が――」
言い終えるのを待たず、雅は瑞希を強く抱き込んだ。
「いいのか。俺と、未来を約束してくれるのか」
雅にすっぽり包まれて、雅の温もりを感じながら瑞希はしっかりと頷いた。
「雅と約束したいです。
雅と血の繋がりを作りたいんです。
雅と私とその子……親子三人と、流衣と、コジローと……確かな繋がりのある温かい家族が欲しいんです」
瑞希は雅の背に手を回すとぎゅっと抱きついた。
「……ありがとう。俺も、家族が欲しい」
雅は瑞希の頭に顔を埋めると心做しか少し涙ぐんでいるような声で応えた。
「みんなで……みんなでずっとずっと一緒に暮らしましょう?
そして一緒の写真を沢山沢山残して、家中に飾って、アルバムも抱え切れない程作っていきましょう?」
瑞希が語りかけると雅は顔を埋めたまましっかりと頷き返してぐりぐりと擦り付けた。瑞希のさらさらな髪が揺れて少し乱れる。少しくすぐったさを感じながら瑞希も雅の胸に頬を擦り寄せた。トクトクトク、と少し早目の心音が聞こえてくる。
瑞希も雅も血の繋がりはもう途切れてしまった。でもこれから作ることはできる。瑞希は雅と本当の意味でも家族になりたかった。
ややもするとどちらともなく体を離して見つめ合い自然と二人とも笑顔になった。
すると瑞希の背後に何気なく目を向けた雅が突然、まるで叶芽のお仕置きを食らったたかのように硬直した。顔もかなり強張っている。
瑞希は何事かと少し焦りながら首だけ振り向いて後ろを見ると棚を整理していた店員がこちらをガン見していた。それだけではない。通路の端にはこちらを瞬きもせずガン見している軽い人集りが出来ていた。
二人はあっという間に抱擁を解き何事も無かったように再び写真立てやアルバムの並ぶ棚に向き直ったが顔は真っ赤だった。雅に至っては眉が下がり切っていた。
どうやら相当な人数にあの現場を見られていたらしく、会計のお姉さにまで生温い微笑みを返されて瑞希の顔は家に帰り着いてもまだ火が噴き出しそうな程真っ赤だった。
__Fin
最後までお読みくださり誠にありがとうございました。
突然の最終話に驚かれる方もいらっしゃるかと思われます。
活動報告にて詳しい説明をさせていただいているので括約させて頂きますと、三章を書いている内に一章のあちこちで矛盾が出てきてそれを修正いている内にストーリーや設定、果ては登場人物達の心情描写にまで影響が出てきてしまった為丸ごと作り替えることに致しました。
現投稿作は3月1日まで公開致します。その後、非公開へと設定し下げさせて頂きます。
そしてその一週間後位から新作として瑞希達と新しいスタートを切っていけるようにしたいと思っております。
登場人物達、世界観、ストーリーの要所要所は変わらずにより読みやすく、より楽しく読めるよう執筆していく所存です。
瑞希達の物語は新しく生まれ変わってまだまだ続きます。これからまた見守っていただけると幸せます。
最後に、ここまで読んでいただいた皆様、ブックマークに入れてくださった皆様、評価をくださった皆様、そしてこの作品に関わってくださった皆様に多大なる感謝を。
本当にありがとうございました。
活動報告(ちょっと長いですが)の最後にも皆様に宛てて少しラブレターを書いていますのでもしお時間があればそちらも見てくださると嬉しいです٩( ᐛ )و♪




