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第四十三話 思い出を形に

『宅急便でーす』


「はーい!」


 郊外のフランス風の一軒家。瑞希(みずき)達の家に宅急便が届いた。

 瑞希はサインするのももどかしい程ワクワクしながら受け取った。

 今日は(みやび)は仕事でいない。明日は二人とも休みだ。

 いそいそと居間へ持って入り、確認のために箱を開ける。


「いよいよ届きましたね」


 流衣(るい)がその様子を覗き見て声をかけた。


「はい!渡すのが楽しみです!」


 瑞希はにっこりした。

 付属品の確認を済ませて、説明書を開いて少し起動してみる。


 うん。大丈夫そうだ。


 高い……かなり高い買い物だった。中古ではあるが、瑞希の人生の中で一番高かった買い物かもしれない。

 それでも絶対に贈りたくて、七月からという短い期間でお金を貯めて買ったのだ。

 瑞希はお金をやりくりして貯めるのは得意だった。

 瑞希はそっとそれを箱に戻すと、自室に引っ込んで、黒いラッピングペーパーと箱を取り出した。

 中身を丸っと箱に収め直し、綺麗にラッピングして、金色のリボンを飾った。


「これでよしっと!」


 後は渡すのみ。

 ここで問題になるのが部屋に置いておいて、びっくりさせるか、手渡すか、だ。

 瑞希はとりあえず雅の部屋へ侵入しみることにした。

 寝室の前を横切って雅の部屋のドアの前に立つ。

 雅本人の部屋に入るのは初めてだ。

 瑞希はドキドキしながらドアを開けた。

 モノクロと木を基調とした部屋は整理整頓されている。

 本棚と雅が一人暮らし時代に使っていただろうソファー、文机と椅子、チェスト、サイドボードが置いてあった。

 開かれた文机には瑞希が初任給でプレゼントした、万年筆の箱が大事そうに立てかけてある。

 雅は万年筆を最初、犬が骨ガムを埋めるように、大事に大事に仕舞い込んでいた。

 だがその内、瑞希が使って欲しいと言ったことを思い出したのか、仕事でも、私生活でも、いつでも持ち歩いて使ってくれるようになった。


 箱まで大事に取ってくれているんだ。


 瑞希は嬉しくて微笑んだ。

 サイドボードの上には付き合って半年の記念日に、お互いが贈り合った小さな観葉植物が飾られている。毎日の世話を欠かさないのかいきいきとしている。

 本棚を見上げるとソファからよく見える位置の一角に、以前、雅が撮った瑞希とコジローの写真が二つ、フリスビーのとシャボン玉のと、写真立てに入れてあった。


 ここからよく眺めているのだろうか。


 瑞希はにっこりした。


 これを置くなら文机だろうか。


 少し悩んで瑞希は手渡しすることに決めた。


 サプライズもいいけど、やっぱり手渡して反応を直に見たい。


 部屋を出ようと振り返ってふと、ソファにきちんと畳まれた雅の部屋着が目に入った。思わずそっと手に取る。

 瑞希は部屋着を抱いてすぅっと匂いを嗅いだ。ほんの僅かな石鹸の香りと、お日様のように温かな安心する匂いがする。瑞希はしばし部屋着の匂いを嗅いでいた。

 はたと、自分の状況を思い出す。

 瑞希は猛烈に恥ずかしくなって、部屋着をきちんと元通りに畳んで戻すと、手足を揃えてギクシャクしながら慌てて部屋を出た。




 夕方。瑞希は流衣と共にクラッカーを持って玄関で配置についた。コジローにも小さな三角パーティー帽を頭に乗っけた。

 コジローは何が起こるのかは分かっていなさそうだが、ワクワクして期待の柴犬スマイルを浮かべた。

 玄関が開いて雅が帰ってきた。

 瑞希と流衣はクラッカーを鳴らした。コジローも一緒に「キャンッ!」っと鳴いた。

 サングラス越しの雅の目がぱちくりとする。


「「ハッピーバースデー!雅!!

 お帰りなさい!!!」」


 瑞希と流衣は声を揃えて出迎えた。

 十一月十五日。今日は雅の誕生日だ。

 きょとんとする雅に、流衣が『今日はあんたが主役!!!』と書かれたタスキを掛け、瑞希は三角パーティー帽を乗せた。


「た……だいま」


 雅がやっと硬直から解けた。瑞希はまだ驚いている雅の手を引いて居間へ連れて行った。

 いつもより手が込んだ豪華な料理が並ぶ食卓に座らせる。

 瑞希はドキドキしながら雅の頬にちょこっとキスをした。雅がバッと振り向く。


「今日は雅のお誕生日パーティーですよ!

 さぁ!みんなでいただきましょう!」


 コジローに「まて」までさせて瑞希と流衣も食卓についた。


「「いただきます!」」


「いただきます。ありがとう」


 雅もようやくサングラスを外して手を合わせた。


「コジロー!食べていいよ!」


 瑞希がゴーを出すとコジローはいつもの数倍の速さでごはんに飛びついた。

 コジローのフードも今日は肉入り。ご馳走にしてある。

 薄くスライスしたパンにマッシュポテト、オイルサーディン、ミニトマト、パセリを乗せたクロスティーニ。

 緑の野菜に生ハム、モッツァレラチーズ、色鮮やかなフルーツを混ぜ合わせたフルーツサラダ。

 高く積み上げたオニオンリング、えびや貝がたっぷりのパエリア。タコとマッシュルームのアヒージョに、ポテトとベーコンのグラタン。

 メインの巨大な肉塊のローストビーフを流衣が切り分けた。

 雅はいつも通りもくもくと食べ進めるが、いつもの数倍目が輝いている。


「美味しいですか?」


 瑞希がにこにこしながら訊くと雅はコクリと頷いた。




 食後のデザートは定番のイチゴをふんだんに使った大きなホールケーキだ。スポンジから瑞希と流衣が焼いた。

 六十何年もの間生きてきた雅に、その歳通りのろうそくを立てるのは何か違う気がして、大きなものを一本だけ真ん中に立てた。

 瑞希が火を灯して流衣が電気を消した。


「「ハッピバースデートゥーユー!ハッピバースデートゥーユー……」」


 瑞希と流衣が声を揃え、手を叩いて歌う。コジローは一緒に歌うかのように遠吠えした。


「「おめでとう〜!」」


 歌い終えた瑞希と流衣が拍手した。


「さぁ!雅!火を消してください!」


 瑞希が促すと雅はちょっと気恥ずかしそうにしながらも、素直にふっと息を吹いてろうそくを消した。

 瑞希が拍手し、流衣が部屋の明かりをつけた。瑞希は台所に一旦引っ込んでプレゼントを後ろ手にして戻ってきた。


「雅、おめでとうございます!

 生まれてきてくれてありがとう!」


 と言ってプレゼントを差し出した。雅はきょとんとした。


「お誕生日プレゼントです!」


 と言って雅に渡す。雅は目を丸くして瑞希とプレゼントを交互に見つめた。


 これだけでもプレゼントを用意した価値があるというものだ。


「……ありがとう」


 雅は少し照れたように顔を赤くしてプレゼントを受け取ると、丁寧に開封し始めた。


 喜んでくれるかな。


 瑞希の心臓はドキドキでいっぱいだった。

 雅は黒い箱をそっと開けた。

 中から出てきたのは黒いカメラだ。付属のレンズが二つ付いている。

 これはただのデジタルカメラではない。

 雅の表情は驚きでいっぱいになった。続いて目が輝いた。


「これは……」


 と、言葉を詰まらせる。


「一眼レフカメラです!

 初心者にも優しい物を選びました。

 標準のと、望遠のレンズが付いていて、携帯端末にも送れるし、携帯端末からシャッターを切ることもできて……」


 瑞希はポイントを説明していった。


「以前、雅が私とコジローの写真を撮ってくれた時に思ったんです。

 雅の写真がとても好きだなって。

 だからプレゼントにカメラを選びました」


 雅はパッと瑞希を見た。

 そして初めて無邪気な笑顔を見せた。


「ありがとう」


 雅はカメラをそっとテーブルに置いて立ち上がり、瑞希を抱きしめた。


「どういたしまして」


 瑞希も雅の腕の中でにっこりした。


 初めて見た雅の綻ぶような笑顔に大満足だった。


 雅は瑞希を抱いたまま顔を上げて流衣、コジロー、瑞希の三人を順に見た。


「こんなに誕生日を祝われたのは初めてだ。

 どう表現していいのか、分からない程、嬉しい。ありがとう」


 そう言った雅の大きな金色の瞳は心なしか潤んでいた。




 翌朝、昨日の夕食の残りであるちょっと豪華な朝食を摂った後、雅は三人を招集した。

 瑞希の膝にコジローを乗せて瑞希と流衣をソファーにギュッと寄せて座らせる。

 雅は瑞希の隣に腰掛け長い腕を伸ばして液晶をこちらに向けたカメラを構えた。


「笑え」


 とニヤリと不気味な笑顔を浮かべる。

 瑞希は雅の棒読みの命令口調がなんだかおかしくて吹き出した。コジローが楽しそうな雰囲気に柴犬スマイルを浮かべる。流衣がその様子を見て上品に微笑んだ。

 その瞬間に雅は素早くタッチパネルを操作してシャッターを切った。何枚か連写する。

 瑞希は目を見張った。

 昨日熱心に説明書と携帯端末を見ていたと思ったら、もう使い方をマスターしたのか。

 雅は満足そうに口角をちょっと上げると、カメラを手元に戻した。操作して瑞希達に見せる。

 背景が上手い具合にぼやけて、人物が引き立っている。雅以外カメラ目線ではないが今にも動き出しそうな写真だ。


 やっぱり雅の写真のセンスはとてもいい。


「記念すべき一枚目だ」


 雅は嬉しそうに皆んなを見つめた。


 やっぱり雅にカメラを贈ってよかった。


 瑞希は心からそう思って微笑んだ。




 集合写真の後、準備をして瑞希と雅、コジローの三人で都内の公園に紅葉ピクニックに出かけた。

 雅は電車に乗っている時からコジロー並みにウズウズしていた。

 遅い瑞希の足に合わせて駅からゆっくり歩いて公園に向かう。平日でも紅葉を楽しむためか人が何人も同じ方向に歩いていた。

 駅でコジローをお出かけバッグから出してリードに繋いで、黄色く色づいたイチョウが作る、美しいトンネルを三人でゆっくり散歩した。


「綺麗ですね」


「ああ」


 瑞希が呟くと雅は短く頷いた。イチョウの葉が一枚、ひらひらと瑞希の頭に落ちてきた。

 瑞希は立ち止まって葉を手に取ると、しゃがんでコジローに見せた。


「ほら、コジロー。これがイチョウだよ。綺麗な形だね」


 コジローはフンフンとイチョウの葉の匂いを嗅いだ。シャッター音が聞こえた。

 目を上げると、雅が少し先の方からカメラを構えていた。

 瑞希はコジローを雅の方を見るように促して自分も雅に向かって手を振った。雅がまたシャッターを切る。

 大きなイチョウの木の下にはテーブルと椅子が幾つも設置してあって、人が腰掛けて本を読んだり、お弁当を広げたりしていた。

 瑞希たちもその一つに陣取ることにした。


「ワンッ!」


 コジローが一声鳴いて注意を促した。側へ寄ると誰かが作ったのか、イチョウの葉の花束が落ちていた。


「わぁ……素敵!

 コジロー、よく見つけたね」


 花束を拾ってコジローを撫でる。


「雅!見てください!

 こんなところに花束が……」


 瑞希が振り返ると雅はまたカメラを構えていた。

 ちょっと口角を上げてカメラを下ろす。


「綺麗だな」


 と寄ってきた。瑞希の手を取って花束を繁々と眺める。その横顔に瑞希はドキドキした。




 コジローにごはんと水をあげて二人でお弁当を広げた。雅は珍しく瑞希の正面ではなく、すぐ隣に腰掛けた。瑞希の心臓がまたドキドキと高鳴る。


 一体このドキドキはいつ治るんだろう。叶芽はいずれ慣れると言っていたけれど、慣れる気配が全くない。


 程よく暖かい日差しが差し込む木の下で、美しいイチョウを見ながら一緒に食べるお弁当は一段と美味しかった。

 デザートに昨日のケーキの残りを食べた後、二人で寄り添ってイチョウを眺めていると、雅が静かに口を開いた。


「俺は物心つく前から両親がいなかった」


 瑞希は雅を見上げた。


「当然、施設に入れられた。

 そこでは瞳の色のせいか、職員にも、周りの子供からも気味悪がられて、避けられていた」


 瑞希は以前、健二が狼人間の孤独さについて話していたことを思い出した。


「メガネで瞳の色を隠して、小学に上がっても、中学に上がっても、高校に上がっても、俺は常に孤独だった」


 雅は前を向いたまま訥々と話す。


「十八になり、社会に出た。

 そこそこいい会社に勤めはしたが、そこでも遠巻きにされていた。

 俺は人との繋がりを求めて、口説かれるままに誘いに乗ったりもした。

 何年か経って仕事で海外に出た時も、同じことを繰り返しいた」


 瑞希は黙って聴いていた。


「海外で諍いに巻き込まれた。

 その時、弾丸を受け、激しい怒りに駆られ、初めて狼に変身して人を咬み殺した。

 自分が人外であることを知り、戸惑った。

 人間の姿に戻る術が分からないまま人に見つかり、更に銃で撃たれ、俺は彼らを殺戮してしまった」


 瑞希はじっと雅を見つめた。


「精神が混乱するまま、俺は自分に向かい来る者を蹂躙した。気がつけば人間の姿に戻り、辺りは血の海だった。

 狼から人の姿へ戻る所を人に見られていた。俺は追われた。追い詰められては狼に変身して大勢の怪我人を出した。

 そうして俺はネクストドアネイバースの討伐対象になった」


 瑞希はハッと息を飲んだ。


「ネクストドアネイバースと何度か交戦した。

 そして当時海外の支部にいた叶芽に捕獲された。

 尋問を受け、ネクストドアネイバースと俺は取引をすることになった。

 俺が引き起こした事件の後始末をする代わりに、契約書を交わし、魔女と戦うこと、ネクストドアネイバースで働くことで罪を償うように、と。

 俺はその条件を飲むことにした」


 雅は思いを馳せるように少し視線を上げた。


「俺はそこで初めて自分以外の隣人と触れ、自分の種族のことや、隣人の世界について学んだ。

 共に戦い、仲間として受け入れられ、契約書も外れ、少し孤独が和らいだ。

 だが、俺は大分すれていた。物事を斜めに構えて受け取り、仲間とも少し、距離を置いていた」


 そこで雅はサングラスを外して瑞希を見つめた。


「そうしている内に俺はお前に出会った。

 お前に出会って俺の全てが変わった。

 物事を素直に受け入れられるようになった。

 仲間が俺のことを思ってくれていたことにも気が付いた。

 人に……お前に心を激しく動かされるようになった。

 俺の毎日に色が付いた。

 瑞希、お前が俺を変えたんだ」


 瑞希の視線を捉える雅の瞳が熱を帯びた。


「昨日、生まれて初めて、心の底から誕生日が嬉しいと思えた。

 生まれてきたことを感謝されたのも、初めてだった。

 ありがとう。瑞希。お前は俺の全てだ」


 そう言って雅は瑞希の頬を優しく両手で包んで、そっと引き寄せて優しくキスをした。一度離れる。

 瑞希は高鳴る胸の鼓動を抑えながら、雅の手に手を添えると今度は自分から雅にキスをした。


 雅が初めて自分から、自分のことを打ち明けてくれた。


 瑞希はそれがたまらなく嬉しかった。

 雅は瑞希の頭の後ろに片手を回すと優しく何度もキスを重ねた。瑞希の唇を舐める。

 瑞希は心臓をドキドキ飛び跳ねさせながらも雅に身を委ね、唇を開いて受け入れた。

 互いの舌が触れ合い、絡まる。瑞希はくすぐったさを感じた。

 雅は頬に添えた手をそっと滑らせて耳に触れた。耳の後ろを撫でる。

 瑞希はゾクリとして小さく身を震わせた。

 雅の舌が歯茎や上顎を撫でる。瑞希はくすぐったいやらゾクゾクするやらでヘナヘナと力が抜けていった。

 雅はその後も情熱的なキスをして、最後にもう一度優しく唇を重ねて離れた。

 瑞希を真っ直ぐ見つめる大きな金色の瞳は潤んでいた。


「お前が俺に愛をくれた。

 お前が俺に居場所をくれた。

 思い出を形に残す術を与えてくれた。

 愛している、瑞希。ありがとう」


 そう言って雅はなんとも優しい微笑みを浮かべて瑞希を抱きしめた。

 瑞希は体から力が抜けきってくてんくてんだったが、抱きしめられ、雅の鼓動を聴いていた。

 雅の心臓はトクトクトクと早く鳴っている。

 瑞希は目を閉じて微笑んでゆっくりと頷いた。




 数日後、雅はプリンターを買ってきた。パソコンに繋いで何やら操作をする。

 すると、プリンターから写真が印刷されて出てきた。

 雅は写真の表面に触らないように瑞希に差し出した。瑞希もそのように注意して受け取った。流衣と共に覗き込む。

 記念すべき最初の一枚目の写真だ。口に手を当てて横向きで笑う瑞希、柴犬スマイルで瑞希を見上げるコジロー、その様子を見て微笑む流衣、そして手前で一人、カメラ越しにこの場面を見たのだろうか、優しい表情を浮かべる雅。


 ほっこりする写真だ。


 写真を返すと雅は次の写真を印刷した。

 瑞希が頭に落ちてきたイチョウの葉を手に取っているアップの写真だ。


 いつの間に撮ったんだろう。


「映画のワンシーンみたいですね」


 流衣が微笑みながらそう言った。瑞希は頷いた。雅が更に印刷する。

 瑞希がしゃがみ込んでコジローにイチョウの葉を見せている。コジローがそれに顔を寄せている写真だ。ぼやけた背景のイチョウのトンネルが美しい。


 カメラ目線ではない自然体な姿に惹かれる一枚。


 次は瑞希とコジローがこちらを向いていた。コジローの柴犬スマイルと笑顔で手を振る瑞希が今にも動き出しそうだ。

 雅は最後に、笑顔の瑞希がイチョウの花束を手に取り、コジローを撫でている写真を出した。

 木陰で少し暗くなったイチョウの木が手前なのに、自然と瑞希とコジローに視線が誘導される。

 瑞希はこの後雅を振り返ったこと、雅がすぐ側へ寄ってきて一緒に花束を見てドキドキしたこと、その後、雅が自分のことを打ち明けてくれたことを思い出した。

 雅はいつの間に買ってきていたのか木製のクリップで写真の余白を挟むと麻ヒモに通して居間に吊るした。


「素敵な写真ですね。見てるだけで私も体験したような気になります」


 並んだ写真を見て流衣が感想を漏らした。


「思い出を形に……」


 瑞希は思わず呟いた。雅と流衣の視線が集まる。

 瑞希はちょっと赤くなった。


「思い出は胸の中にずっとありますけど、雅の写真を見てると、その時の気持ちやその後のことまで全部思い出せて……。

 思い出を形に残せることって幸せだなぁって思いました」


 瑞希は頬を染めながらにっこり微笑んだ。

第二章が終わりました。

少し書き溜めします。


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