1.お姉さま、人生の転機とは何回あるのですか?
はじめまして、こんにちは。
少しずつ増やしていけたらな、と思います。
拙い部分があるかと思いますが、楽しんで読んでもらえたら嬉しいです。
人生には転機と呼ばれる出来事があると聞くが、私フィオナ・バナーにとっての最初の人生の転機は恐らくこの日だったのではないかと思う。
「異世界転生きたぁー!!」
そう、数日目を覚さなかった自分の姉がベッドの上で拳を振り上げながら高らかに笑う姿を見た瞬間だ。
「ロジーナおねえしゃまが、おかしくなった・・・」
急に聞いたことのない言葉を矢継ぎ早に話出す姉の姿に、気が触れたのかと母が倒れ、父は母を支えながら絶句。
兄が震える私を抱きしめながら、「医者を呼べ!」と的確に家令に指示を出すのを意識の端で聞きながら、高熱を出して倒れる前と今の姉の姿の差に齢3歳ながら異常さを感じた日。
この日こそ、私だけでなくバナー家の人生の転機のうちの1つだった。
***
「ローズ・オコーナー公爵令嬢、君との婚約は破棄となる。」
そして人生2回目の転機は今ここだ。
アベリア王国の首都バルクベルクにある王立学園。
王国で暮らす貴族は、11歳から誰しもが王立学園に入学し、18歳までの7年間を貴族社会の縮小社会に身を置き社交性を身につけ勉学に励む。
親元を離れ厳しかった学園生活を終え、大人と同じ貴族社会へと身を置くための記念すべき卒業式にて発せられたレオバルト・ロウ・アベリア王太子殿下の言葉にて、会場の空気は一気に緊張感を帯びて固まった。
伝統に則った格式ある卒業式を終え、誰もが華やかな礼服やドレスに身を包み迎えたパーティーの最初の一声である。
誰もが「なぜ」「どうして」と囁くなか、私は皆と違う驚きに震えていた。
「うそ・・・、お姉さまの言った通りだわ」
「ほら!ほら、言った通りでしょ!?ついにこの日が来たのよ、フィナーレなのよー!」
私の隣で興奮しながら肩をバンバン叩くお姉さまは、この際スルーである。
何故に卒業生であるお姉さまが、在校生の私のとなりにいるのですか。
婚約者のセオリオ様は、何処ですか。いつものように一緒に諌めてもらわないと1人では興奮したお姉さまを止めれないんですけど。
「なぜ、私が婚約破棄など!!まさか、あの女に何か吹き込まれたのですか!!」
「なぜ破棄されたのか理解できないことが問題なのだよ、オコーナー公爵令嬢。学園生活における下位貴族への不当な態度も目に余るが、それよりも問題なのはオコーナー公爵家の横領や違法行為だ。」
あ、あそこにセオリオ様が。
ちょっとこちらに来てお姉さまの興奮を諫めてくださらないかしら?
いやいや、違います。違います。
ニッコリ笑って手を振るんじゃありません。
お姉さまをいつもの優しい目で見て『仲がよいねぇ』じゃないんですよ。
「ローズ様!もうこれ以上はやめてください!証拠はもう出ているのです!レオ様は貴女自身を罪に問うつもりはないのです!」
「まぁ!!なぜ貴女が出てくるのです!?殿下の名前を軽々しく呼ぶだけでは飽き足らず、無礼にも私たちの会話に入ってくるなんて!」
『修羅場!これが修羅場よ、フィオナ!』
あの、お姉さま。
流石に空気を読んで声のトーンを落としてくださるのは有り難いのですが、何やら鼻息が怪しいです。
ふんすふんすと鳴らすのは淑女としては、どうかと思うのです。
兼ねてから言われていた修羅場と呼ばれる場面が見てたことは胸にくるものがありますが、ふんすふんすと鳴らすのはよくないです。
「ーーよって、これを持って陛下の名の下に婚約は破棄となる。そして・・・」
この時、私はお姉さまにばかり気をとられていたため気づかなかった。
オコーナー公爵令嬢、途中乱入されたミリアリア・タビ男爵令嬢を黙らせた殿下が静かに近づいていることを。
殿下以外の誰もが、急に動き出した殿下の行く先を見つめ目を見開いていたことを。
気づいた時には、時すでに遅し。
急に身体が前に引っ張られたと思い抱きしめられたと気づいた時には、私の頭上から落ち着いたテノールの声が会場に落とされた。
「フィオナ・バナー侯爵令嬢を新しい婚約者として、ここに宣言する!」
いや、なぜに?
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