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聖女様


 朝から、お屋敷はバタバタして大変だ!

 急遽決まった義姉の聖女認定式が、今日のお昼頃にお城であるんだって。


 お屋敷は、魔力検査(あの日)義母たちが帰って来てからもう大騒動だ。

 私が浄化魔法で、ピカピカにし過ぎたお屋敷に目もくれない程に。


 どうやら三日前にあった魔力検査の時に、私が教会を去った後、義姉を聖女様だと教皇様が認め、教会が大騒ぎになったらしい。


 なので急遽、聖女認定式が今日お城で行われる事となった。


 この式は、国王様が貴方の事を聖女として認めましたよ! と言う、晴れて国に認められた聖女様になったと、国民にも知らしめる日。


 何故こんなにも、国を挙げて凄い事になっているかと思ってたら……。

 聖女の力を持つ者が、ここ五十年も現れなかったらしい。マジか……その情報は知らなかったよ。


 今の聖女様は大分お歳を召しているので、若い聖女の誕生に、国が大騒ぎになっているのだ。


 ここまで#大事__おおごと__#になっちゃうとは、やりすぎたかな? 義姉は聖魔法どころか魔力無しなのに。

 後からバレたら、とんでもない事になりそうだけど……そうなると義姉大丈夫かな?


 まぁ……皇子と上手く婚約解消できたら私は良いし、散々私の事をイジメてくれたんだ、義姉の先の事までは知らない。などと義姉の事を考えていたせいなのか……。


「あら? ルチア? 相変わらずず鈍臭い顔ねっ」


 準備で忙しい筈の義姉が、いきなり部屋に入って来た。


「私は今日、聖女様に認定されるのよ! 聖女様なのよ! 貴女とは立場がもう違うの」


 そう言って、手に持っていたグラスに入った水を、私にかけてきた。



「あーあ濡れちゃったわね……ふふふ、聖女様の聖水を浴びれたんだもの。有り難く思ってね」


 義姉は少し悦に浸りながら去っていった。もう聖女様になりきってますね。


 はぁー……めんどくさ。

 魔力を体に纏わせているから、私は濡れていない。濡れてるように見せているだけ。

 濡れた床も、妖精さん達が一瞬で綺麗にしてくれた。ありがとう。


 いっそビショ濡れ姿でいて、済むのなら、そうしたんだけど……きっと義姉は計算通りとニヤつき、濡れた私をわざとお城に連れて行くだろう。

 そして、いけしゃあしゃあと言うんだ「お城に着いてから興奮して水をこぼして……もうマヌケな妹でぇ……」と。私を公衆の面前でバカにしたいんだろう。

 ……予想だけど。義姉ならやりかねない。


 本当、義姉の性格のクズ具合には怒りを通り越して呆れる……まぁ、貴方の思惑通りにはいきませんよ?

 この後濡れてない姿の私を見て、なぜ? と驚き顔を歪めるだろうね。


 それにしても、五十年ぶりの聖女様の誕生に国中が湧いている!  

 その聖女様があの義姉……なんかすみません。


「失礼します。奥様がお呼びです」


 侍女が顔を歪めバカにしたような顔で私を呼びに来た。そんな顔するくらいなら呼びに来てくれなくて良いですが?


 どうせ私にドレスを自慢し、送り出させたいのだろう。濡れてたら無理やりお城に連れて行かされたかもね。

 

 着飾った義母や義姉が、私を見ていやらしく微笑む。


 義姉は濡れてない私を見て少し驚いている。ざまぁ。

 だが直ぐに顔色をもどし、とんでもない事を言い出した。


「ルチアにも私の素晴らしさを見て貰いたいから、一緒にお城に来て欲しい」


 などと言い出し、もちろん断れる訳もなく、王城に着て行くには微妙なドレスしか持って無い私まで行く事になった。

 別に行かなくていいんだけど。

 義姉が何か企らんでそうで嫌だ。


 微妙なドレスを着て、義母たちとは別の貧相な馬車に揺られて、一人王城に向かう……正直帰りたい。


ーールチィ?大丈夫?

「……ん? 白ちゃん心配かけちゃった?」


 私の両隣に座ってる二匹が、心配そうに見てる。不安な顔をしていたから、心配かけちゃったみたい。

 ごめんね。


「大丈夫だよ、ただ面倒だなって思って……」


ーー本当だよ!! 何であんな聖女でもない偽物の聖女認定式に、ルチィまで行かないとダメなんだよっ!!


 黒ちゃんがプンプン怒ってくれる。

 ふふっ……ありがとうね。

 私は2匹の頭を撫でる。はぁ癒される。


ーー今日は色んな奴らが集まる見たいだし、用心した方がいいな。妖精達がそう言ってる。


「えっ? そうなの?」


 私が不思議そうに驚くと


ーそうだよー! いっぱいくるよ。

ーー色んな人がいるよー。


 妖精達が各々で喋り出す


ーーこの国に興味なんて示した事もない。竜人族やエルフ族の奴らが、聖女を見に来るみたいだな。


「エルフ族? 竜人族? そんな人達この国に滅多に来ないんじゃ……」


 確か私が生まれてから見た事がない。


ーーああ、五十年ぶりに遊びに来るみたいだな!


「五十年!」


ーー竜人族やエルフ族は特に寿命が長いから、五十年なんて彼奴らの感覚からしたら、一ヶ月くらいの感覚じゃね? ふぁあ。


 黒ちゃんがアイツらは変わってるからなぁと、少し欠伸をしながら教えてくれる。


「五十年が一ヶ月くらいって……どんだけ長寿なのよ。全く人間と感覚が違うんだね」


ーーまぁな。どの国も人族の事は、寿命も短く弱い国と興味がないみたいだな。


「竜人族が一番強いんだよね? 確か、地図で見た時に国の大きさだって、とてつもなく広大で半端なかった」


ーーそうそう。竜人族(アイツら)は普段は人族の事なんて、どーでも良い感じなんだけど。


ーー聖女様誕生? って事で面白半分で見に来るみたいだなぁ!


 白ちゃん黒ちゃんが、どうでも良さげに話すけれど、それって聖女様の事よりパニック案件じゃ……。


 今頃王城は、大変な騒ぎになってるんじゃ……? そんな時にわざわざ行きたくないなぁ。はぁぁ。

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