蜜月の後
『ルチィ……』
チュッ。
シェラ様の優しいキスがまぶたに落ちてきた。
「……んっ?」
目が覚めると、シェラ様に腕枕されぎゅっと抱きしめられていた。
ふと顔を上げると、シェラ様がくしゃりと目を細め私を見ている。
いつのまにか寝ちゃってたのか……。
私はこの長い一カ月で蜜月の意味を十分に知ってしまった。
そしてマリーさんが言っていた、番だけが甘くて特別の意味も、たっぷり分かってしまった。
シェラ様がやんわりと心地よい速度で、頭を撫でてくれている。
その瞳は私を愛おしそうに見る……。
キュウゥ……っと胸が苦しい。
いっぱい恥ずかしい事を蜜月でしたのに、未だになれない。
毎回くるしい……。
『寂しいがもうこの部屋を出なければならぬ……』
この後シェラ様に抱っこされ、私達は蜜月の部屋を後にした。
この部屋での時間は、一ヵ月とは思えない程に長く濃密な時間だった……。
『寂しいの……もうルチィを独占出来ぬのか…』
ぷぷっ、部屋を出てからシェラ様はそればっかりだ。
何百年も生きて来たシェラ様からしたら、あの部屋での一ヵ月なんて一瞬なのかな。
子供のように、少し駄々をこねるシェラ様に抱っこされながら、自分の部屋に帰って来た。
部屋に入ると白ちゃんに黒ちゃん、それと小さくなったウリ坊が丸くなって寝ていた。
一ヵ月会わなかっただけなのに、もう何年もずっと会ってないような不思議な感覚。
私を見つけた三匹は、飛び起き私の前に走って来る!
ーールチィーっやっと魔力がちゃんと感じとれた。
ーー本当だよ! シェラばっかり独占しやがって!
ーーオイラだってルチィ魔力をいっぱい食べたいのだ!
三匹は文句をプリプリ言いながらも、私に撫でてと我先に擦り寄ってくる。
どうやら蜜月の部屋は、魔力も閉じ込めてしまうらしく。
この一ヵ月の間三匹は、わずかに漏れる魔力で凌いでいたのだとか……何かゴメンね。
私は三匹を纏めて抱きしめて、交互にヨシヨシっと体中をこれでもかと撫でた。
その間三匹が、シッポをずっとプリプリしてて可愛いかった……
ーーシェラは一ヵ月独占してたんだから! 当分は俺達のルチィだからな!
ーーそうそう! シェラはおあずけだ! わかったな!
白ちゃんと黒ちゃんが、キッとシェラ様を睨む。
『ぐっくぬう……それだけは勘弁してほしいのう』
ーーダメなのだ! ルチィはオイラのなのだ!
今度はウリ坊が私の胸に顔をつけてスリスリし、シェラ様を挑発している。
『なっ何をしておるのだ! ダメじゃ!』
ーー嫌だねーっだ!
白ちゃんが私の顔をペロッと舐める
『はうぅ……顔を舐めるのは許さぬ!』
ーーお前の許可何か知らねーよっ!
今度は黒ちゃんまで頬をペロッと舐めて来た。
『ふっ! ふぬぅ! ルチィは我のだ!』
白ちゃん達は、一ヵ月の間私の魔力がちゃんと貰えなかった腹いせに、どうやらシェラ様に八つ当たりし、鬱憤をはらしているもよう。
シェラ様はと言うと、マンガ見たいに頭から湯気を出してプンプン怒ってる。
「アハッ……アハハハハッ!」
『ルチィ! 笑い事ではないのだ! さぁ我の所に来るのだ!』
ーーシェラの所になんか行かないよーっだ!
私の膝の上に居座る黒ちゃんがべぇーっと舌をだす。
『ふっふぬう!!!』
「アハハハハッ」
いつもと変わらない皆とのやりとり。
何だかホッとした。




