竜王シェラの都合
シェラ様の前で勢いよく跪くと、三人の男性はわれ先にと発言する。
「良いですか? シェラザード様がちょっと獣人国に遊びに行って来ると言って……何日経ってるかお分かりですか?」
「そうですぞ、我々は獣人国まで迎えに行ったのです!」
「そうしましたら……! 獣王様から、シェラザード様はすでに国に帰ったと言われ、竜人国に戻って来ましたら、シェラザード様はいつまで経っても帰っていない……︎」
竜人国の人達が、代わる代わる早口で捲し立てる。
『お前達、ちょっと落ち着けい……︎声もデカいしだな』
シェラ様がなだめようとするも、竜人たちの興奮はおさまらない。
「落ち着けませんぞ? 我々どれだけシェラザード様を探したか……!」
「シェラザード様の影護衛アレクとヴィクにも、なぜか連絡が取れない! こんな事今までなかったんですぞ︎?」
『ん゛……んん?』
アレクさん達の話を出され少し目が泳ぐシェラ様、まさか口止めしていたのかな。
「シェラザード様にも、魔法鳥を何度も飛ばしたのに、返事は全く帰って来ないし……我々は途方に暮れていた所に!」
「先程、獣王様から魔法鳥で連絡があり、急いで飛んで参ったのですよ!」
『なっ!? ジュドール! お主っ……いらぬ事を!』
「お前が聖獣様の事を俺にちゃんと話さなかったからな! これは、し、か、え、し、だ。」
『なっ? ぐぬう……ジュドールめ!』
「ささっ! 竜王国に帰りますよ? シェラザード様︎、仕事が山のように残ってます」
『嫌だ︎! 俺はまだ帰りたくない』
「はっ? なっ……嫌? 何を言ってるんですか! シェラザード様のお仕事が、山の様にあるのです!」
「そうです! 我らは意地でも連れて帰りますからね!」
『い、や、だ。絶対に嫌だ! 帰らない!』
三人が必死に頼んでいるけど、シェラ様が嫌だと断固として譲らない。
これにはどうしたらいいのか分からず、困っている三人。もう涙目だ。
これは帰ってあげないと、可哀想だよ……それに仕事サボるのはダメだよ?
「シェラ様? あのう……帰ってあげた方が良いと思うなぁ?」
『なっ!? ルチィまで帰れと!?』
しまった。私が帰ったらと言ったから、シェラ様は今にも泣きそうな目になっている。
『…………俺は、ルチィと離れたくない。ずっと一緒に居たいのだ』
シェラ様……その気持ちは嬉しいし、嫌じゃないけど、どう返事をしたらいいのか正直分からない。
赤くなる顔を見られるのが恥ずかしくて、つい下を向いてしまう。
そんな私の存在に、やっと気付いた竜人の人たち。下を向いた私と目があった。
「シェラザード様? あのっ膝の上に座っていらっしゃるのお方は……?」
どうやらシェラ様の事で頭がいっぱいで、今の今まで私の事など目に入って無かったらしい。
『我の愛しい番ルチアだ!』
「「「えっ!?」」」
シェラ様の言葉に、目をまん丸にして驚く三人。
『だから、俺のつがい』
「なっ!? 番様!!」
「ああーーーーっ……‼︎」
えっ?
お迎えに来た竜人の人達が、全員急に泣き出した……⁈
何で?
「うぉぉ~んっ。そうだったのですね……シェラザード様……ウグッ…すんっ良かった!」
「番様が見つかるなんて……すんっ……何とめでたい!」
「仕事より……番様です!」
号泣し、ずっと泣いている竜人の人達……。
ちょっと? どーなってるの?仕事は?
そんなに番って凄い存在なの?
竜人の人三人が私に向かって一斉に土下座した。
「番様お願いします! どうかシェラザード様と一緒に竜人国に来てくれませんか? ヒグッ…お願いします!」
全員大号泣です……。
そんな涙と鼻水でグチャグチャの顔で、足にすがり付かれてお願いされて……嫌って言える?
「…………はい。分かりました。竜人国に行きます」
この状況でノーと断れる手段があるなら、教えてください……
私は涙の訴えに負け、竜人国にシェラ様、白ちゃん、黒ちゃん達で行く事になるのだが……。
まさかこの時は、このまま竜人国に六年も居る事になるとは、思いもよらなかった。




