聖獣様!?
「ルチア殿、今回勝負した愛し子ファミールについてだが……感謝する! あやつは我が儘が酷く、我らは手に負えなかったのだ」
「いやっそんな……私は特に何も、お礼なら妖精さんたちに」
だって妖精さんのおかげで、勝負に勝てた訳で……実際私は何もしてないしね。
「愛し子ゆえに誰も注意出来ない。それがルチア殿が勝負に勝った事により、調子にのったファミを少し抑える事が出来るようになった。なんだか獣人国の揉め事に付き合わせたようで、申し訳ないのだか……」
獣王様がもう1人の愛し子さんについて話してくれる。
あの愛し子さんは、確かにムカついたけど……
「すみません……ルチィ様。私から少し話をさせて貰っても良いですか?」
「はい、なんですか?」
可愛いミミィさんが、ウサ耳を左右に揺らして話しだす。
「今回の事は、私の責任でもあるのです……。愛し子ファミール様はとても我が儘で、何かある度妖精を使って我が儘を通す。私は妖精の力を私欲に利用してはいけない! といつも注意していたのですが……」
あー……っ。
確かにそんな感じだよね。
今回だって私欲に妖精の力を使おうとしていたし。
「でも……それが気に入らなかったみたいで、私は勝負を挑まれ負けたのです」
なるほど、ミミィさんと先に対決してたのね。
「私が勝負に負けたせいで……ファミール様は調子にのり、我が儘が増長し……誰も注意出来ないので、とうとう手に負えなくなったのです」
「それをルチィ様が勝負に勝ち、ファミール様の調子のった鼻を折って頂き……! 本当にありがとうございます!」
ミミィさんと獣王様が揃って頭を下げた。
『うむ。ルチィは素晴らしい女神の様な愛し子だからな! その気持ちわかる、わかるぞ』
シェラ様? なんでそんな自分の事の様に嬉しそうなんですか。ちょっと恥ずかしいです。
でもまぁ、これもクッキー好きの妖精さん達のおかげ。
あの我が儘な愛し子を大人しくさせる事が出来たんなら、勝負して良かった。
愛し子の勝負で負けた者は、勝った愛し子に絶対に逆らえないんだとか……。
こわっ!
後から知って、本当勝ってよかったと思ったよ。
「だが、ルチア殿の力は凄いのだな。あんな圧倒的に勝つなんて!」
「本当に! 私が勝負に負けた時も、妖精の数にそんな差はなかったのです。それが殆どの妖精達がルチィ様の所に集まって本当凄かったです!」
興奮気味に二人は私の事をスゴいと話してるけど、きっと食いしん坊な妖精さんたちを、クッキーで餌付けしちゃったからなんじゃないのかな?
これはミミィさんにも教えてあげよう。
なんて考えていると。
『それは当たり前なのだ! ルチィは聖獣様と契約しておるのだから、その時点でどの愛し子よりも格上だ』
「えっ? 聖獣様?! シェラザード! どう言う事だ!」
ジュドール様とミミィさんがソファから立ち上がり驚愕している。二人ともプルプルと体を震わせて。
『ふぅむ? ずっとルチィの側に聖獣様が居たであろう?』
「??」
あっ二人がキョトンって顔してる……
そりゃそうだ! 白ちゃんと黒ちゃんは聖獣って事を隠す為に、獣人の姿になってるんだから。
シェラ様! 説明が少ないよ。
「あのう……私の横に白い髪と黒い髪の獣人が居たでしょう?
その二人が聖獣様です。」
「なっ、?! あの二人が! 何と!? 聖獣様……!」
ん? 獣王様顔が真っ青だ。
「シェラザード! 何で其れを早く言わん! 私達は聖獣様を放ったらかして……! ああ何て無礼な事を……くうっ」
獣王様とミミィさんは今にも泣きそうだ。
そんな大袈裟な、白ちゃん黒ちゃんは挨拶とかそんな事は、全く気にしないと思うけどなぁ……。
あの愛し子ファミールさんには、かなり怒ってたけどね。
「それで今、聖獣様達は何処に?」
「あっ! 隣の部屋に行った見たいです」
「挨拶に行かないと! ミミィ行くぞ!」
「はい!」
二人はバタバタと、白ちゃん黒ちゃんが寝ている部屋に走って行った。
慌てる二人を不思議そうな顔で見ていたら、シェラ様が教えてくれた。
『獣人やエルフは、我ら竜人と違い、信仰心がもの凄く強いのだ。神にもっとも近いとされる聖獣様に会えると言う事は、奴等にはもの凄く貴重で有難い事なのだよ』
なるほど……。
白ちゃん黒ちゃんって、神に近い存在なんだ……私は改めて二匹の凄さを実感する。




