獣人国のもう一人の愛し子様
私達は、あの変な勝負の後。あのまま公園にいたら、目立って収拾がつかないので、一旦獣王様の宿泊先にシェラ様の魔法で転移して来た。
獣王様は愛し子さんが「公園の花が見たい」とワガママを言うので、チャハロの街に愛し子さん達を連れて来ていたらしい。
「先ほどは獣人国の愛し子が迷惑をかけた、すまない。ルチア殿」
獣王様が大きな体躯を縮めて頭を下げる。
「あっやっ大丈夫ですから! 頭を上げて下さい!!」
獣王様だってどちらかというと、愛し子ファミさんに振り回され、一番の被害者なのに!
『うむ。迷惑だの! せっかくルチィと花を見ておったのに……最悪だ!』
「だからスマンって!」
私を膝の上に抱っこしたシェラ様が、プリプリと文句を言いながら、私の頭を撫でる。
そんなシェラ様の様子を、獣王様が少し困惑したように見ている。
「シェラザードよ? ルチア殿に余りにもくっつき過ぎではないか? 何に対しても冷静沈着なお前が、今日は一体どうしたと言うのだ? 変だぞ?」
幼女を愛でるシェラ様の姿が、余りにも知っている姿と違い過ぎて、ビックリしているようだ。
そりゃそうですよね。
私も思います。
人前では恥ずかしいので、抱っこはやめて欲しいですよ。
『何がおかしいと言うのだ? ジュドールよ?』
「何がってお前の態度全てだよ! 何百年もの付き合いだが、お前のそんな姿は初めて見たぞ!」
『ふぅむ? ジュドールよ。確かお主はまだ番と出会えておらんかったの? ククッ……』
シェラ様がニヤリと口角を上げて笑う。獣王様に対してマウントをとるかのように。
「なっ……!? なんだよ、それが何だって言うんだよ? それはお前もだろうが」
番が見つかっていないと言われ、不服そうに返事を返す獣王様。
『ふふふ、このルチアは我の番! 唯一無二だ!』
ドャァーって効果音が聞こえそう。
シェラ様が、もの凄いドヤ顔で自慢してる。
何ですかこの恥ずかしい状況。
「なっ!? お前! 番が見つかったのか? クソっ何だと!」
悔しがる獣王様を見て、ニヤニヤとシェラ様のドヤ顔が止まらない。
「くそう……! 番が見つからない同士だと思ってたのに。俺より先に……しかも、その相手が愛し子殿とは、どこまでも羨ましい奴め!」
獣王様が悔しそうに机を叩く。
『そうであろう。そうであろう……ククッ』
悔しがる獣王様の姿を見て、シェラ様のニヤニヤが止まらない。
何の茶番劇を見せられてるんですか私たち。
白ちゃん黒ちゃんは飽きたのか、別の部屋に昼寝しに行っちゃった。
あれ? さっきから獣王様の隣に座っている獣人の女の人、周りに妖精がいっぱい集まってる……もしかして?
獣人国には二人愛し子さんが居るって言ってた。
もしかして……もう一人の愛し子さん?
ピンク色したウサギの耳がついて、うわぁ胸も大きくって……何かエロ可愛いい。
「あの獣王様、横に居る方はもしかして愛し子さんですか?」
「ん? ルチア殿、ジュドールと呼んでくれ!」
「愛し子様に獣王様と言われると、なんだかむず痒くてな」
獣王様はガハハと笑うと、横に座っていた獣人族の女の人を抱きしめた。
「そうさ! 愛し子のミミルだ。俺の嫁でもあるぞ!」
なっ!? お嫁さん! このエロ可愛い人が?
「ルチア様、よろしくお願いします。ミミルです。仲良くして貰えたら嬉しいです」
愛し子ミミルさんは、ウサミミをぴこぴこと動かし、頬をピンク色にそめてくしゃりと笑う。
えーっ! なにこの可愛い人! やばい、可愛い過ぎる……ぴこぴこ動くウサミミ触りたい。
「よろしくお願いします。ミミル様! 私の事はルチアでもルチィとでも呼んでくださいね」
ウサミミがぴこぴこが激しく動いて、ミミルさんがモジモジしてる……。
なんですかその仕草、誘ってるんですか私を! その耳触っちゃいますよ!
「ではルチィ様とお呼びしても? 私の事はミミィと呼んで下さいね」
「はい。ミミィさん仲良くして下さい」
私たちはギュッと握手を交わす。
可愛いお友達が初めて出来そうで、私はワクワクしていた。




