愛し子の格差
あーーっ! 何でこんな事に?
私は獣人族の愛し子さんと、勝負する事になってしまった。
しかも勝負の内容もよくわからない……! なんなら戦い方も。
そもそも何をするの?
『ルチィ? 嫌だったらこんなアホウな勝負に付き合う必要などないぞ?』
「シェラ様ありがとう。でも勝負しないと、次会う時に毎回言われても嫌だし……」
ーー僕は愛し子の対決を見るのは2回目だけど。負けたら対等な愛し子同士の関係は変わるね。
「そうなの?」
ーーそもそも、妖精の愛し子は皆平等だし、格差なんて無いんだ。でも稀に自分が一番とか言い出す、バカな愛し子が現れるんだよな! 獣人国の愛し子みたいにな?
白ちゃんがバカにしたように、愛し子ファミさん? だっけかを見る。
「なるほど……」
ーー五百年くらい前に、勝負しようとか言い出した奴も、「全ての愛し子の中で自分が一番上だ」とか言い出して。対決になったな。
五百年前……白ちゃんたちっていったい何歳なんだろう? 聖獣だから何歳とかないのかな?
「あの……そもそも対決って何をするの? 妖精さんの数って? 私魔法とか……まだそんな使えないし?」
少し困惑し、どうしたらいいか困っていると。
ーー妖精に聞くんだよ! どっちの魔力が好きか! 好きの多い方が勝ち! 自分にどれだけの妖精が集まるかで、愛し子の実力をはかるんだよ!
黒ちゃんが、そんな事は簡単だと言わんばかりに、教えてくれる。
「えーっっ! 勝負は妖精さん次第なの?」
それって私の実力とか、全く関係ないじゃん……魔力次第? 何その変な対決。
「ちょっと!? 何をごちゃごちゃ話してんのよ? さっさと勝負しなさいよ!」
え……? この場所で? 目立ちすぎませんか?
移動とかしないの? この騒ぎに、獣人族の人とかいっぱい集まって来てるよ?
もの凄く目立つよ?
「あの? 獣王様、この場所で対決するのですか? この騒ぎでドンドン人が集まって来ていますけど……」
こんな場所では嫌です~オーラを必死に出す。
「まぁ……? 移動した方が良いんだが、アレはあーなったら言う事を聞かんだろう。すまないが付き合ってくれ。」
ふぅ……! ダメか。
すっごいギャラリーで、目立つし恥ずかしいんだけど、私は獣人の愛し子が立ってる、公園の中央広場に歩いて行こうとするが……?
「あの? シェラ様、下ろして下さい。自分で歩いて行きます」
『ダメだ。俺の可愛いルチィにもし何かあったら! その時近くに俺がいないと守ってやれないだろう?』
いやいや。こんなにギャラリーがいて、妖精もどんどん集まってきてる状況で、何が起こるんですか?
「シェラ様?」
『ダメだ』
「・・・」
結局、私はシェラ様に抱っこされたまま中央広場に行く。
「やっと来たわね? じゃあ勝負よ!」
そう愛し子が言うと、獣王様が手を挙げる。
「妖精達よ! 好きな魔力を持つ愛し子の方に集まれ! お気に入りの愛し子を決めるのだ」
獣王様が空に向かって叫ぶと、妖精さん達がザワザワと騒ぎだした。
ーーえっ!決めて言いの?
ーーどっち?ー
ーー好きー
ーーわーい
ーー好きー決める?
ーー好きー決まってるー好きー
「さぁ、愛し子様。魔力を出して妖精たちにアピールして下さい」
獣王様が魔力を……と言ってきた。
えっ。魔力を出してアピール? そんな出し方知らないけど……。
どうしようかと困惑していたら『ルチィはそんな事せずとも大丈夫だ』と言って頭を撫でてくれる。
本当に? 私、何もしなくて大丈夫なの? だって一応勝負でしょう?
獣王国の愛し子さんは両手を上げて何かしてるよ?
ーー妖精達よ! 良く聞くがいい! 選ばなかった愛し子の方には、もう二度と近づく事も話す事も許されないからな! 心して選べ。
黒ちゃんが妖精さん達に説明を付け足した。
ーー!! ーえっ!
ーー二度と?会えない!
ーーにどと?ー
ーーうーん……迷う
ーー二度? ーうん!
ーー決めたー!
妖精さん達が、二度と近づけ無いって言う黒ちゃんの言葉に反応しザワザワしだすもさすがは妖精。
ーーまっいっかーねー!
ーー決めたーねー!
ーーだよねー! きめたー!
ーー決定ー
妖精さんたちは切り替えが早い。すぐに決まる。
「えっ? そんな簡単なの?」
ーーククッ妖精達は無邪気な子供だ。深く考えない。
黒ちゃんが悪い顔して笑う。
ーー決まった様だな? じゃあ好きな魔力を放っている愛し子に集まって!!
白ちゃんがそう言うと、眩い光が動き眩しくて目が開けれない! うわっ……眩しっ
目を開けたら、私の周りには殆どの妖精さん達がいた。
目の前でワナワナと身体を震わせ、顔が真っ青な獣人族の愛し子さん。
「なっ……そんな人族などに……この私が?」
ーーこれは、圧巻! 圧倒的だな!
「勝者! 愛し子ルチア様!」
オオー!!ルチア様!
愛し子ルチア様!
凄い声援が公園に響く……
ーーくくっこれであの愛し子はルチィには逆らえない。格下になったからな!
ーーまぁ勝負する前から分かってた事だけどね。クスッ
良く分からないけど、私は勝負に勝ったらしい……
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