シェラ様の怒りがおさまらない
『クククッ……さぁ? お主らはどうやって殺されたいのだ?』
ヤバイッ! シェラ様の怒りが沸点を超えてる。このままだと大変な事になっちゃう。竜王様が暴れたらとんでもない事になるよね。
白ちゃんの方を見て助けてと合図を送るも、こりゃ無理だと首を横に振る。
えええ……白ちゃんでも止められないの? よしっいざとなったら私が。
『のう? そこの獣人よ? お主は我の可愛いルチィを侮辱したのう? これは万死に値する罪だ』
「あっ……はわわわわっ……」
熊獣人がシェラ様の殺気に震え上がってる。
「あの……? シェラ様? 私は大丈夫だから……」
『うむ? わかっておるよ。ルチィ? 安心するがいい』
シェラ様は優しく私の頭を撫でる。
本当に? 多分……絶対にわかってないよね?
「キャッ! 何て綺麗な人なの?私の専属護衛騎士として、召してあげても良いわよ?」
はぁー……空気読まないなぁ!この愛し子は! シェラ様がキレてるの分からない?
もう、怖すぎてシェラ様の顔が見れない……。
『ふぅむ? 俺を護衛だと? もう……#此奴__こやつ__#ら全て消し去ってしまうかのう?』
「!!」
ちょっ!? シェラ様何を言いだすの?!
「ちょっと待ったー!!!」
私が止めようとするより先に、新たな獣人が間に入ってきた。
「すまない! シェラザード! 頼むから許してくれ!」
大きなライオン獣人? がシェラ様に向かって頭を下げている。
『むっ? ジュドールか……!』
あれぇ? シェラ様とライオン獣人は知り合い?
★★★
何と!!
このライオン獣人さんは、獣人族の王様だった……!
獣王様は余りにも妖精さん達が騒がしいから、様子を見に来たら………この有り様だったらしい。
「なぁシェラザード! 本当に謝るから怒らないでくれ!」
さっきからずっと獣王様はシェラ様に平謝りしている。
『そこの女子達が悪いのだ……!』
「おいっファミ? お前何をしたんだ!」
獣人族の王が愛し子に尋ねる。
「別に何もして無いし……この小汚い人族の子供がムカついただけ!」
『まだ言うか! この女子! やはり……消し去るか!』
シェラ様が右手を上げ、何やら恐ろしい魔法を放とうとする。
「シェラザード! ほんとに勘弁してくれ! お前がキレたら誰も止められない。頼むから!」
『ではこのアホウな女子を、どーにかしろ? 今すぐ消しさっても良いのだか……?」
「はぁー……この、我が儘愛し子がっ! シェラザードに謝れっ」
獣王様が呆れ気味に、無理やり愛し子の頭に手をおき下げさせようとする。
「ちょっ……やめっ! 誰に向かって言ってるの? 私が居ないと、妖精達だって言う事聞かないんだからね!」
獣王様の言う事を全く聞かず、暴れだす愛し子……相手は獣王様なんだよね? その態度はありなの?
『おいブス! お前、愛し子だからって調子乗り過ぎだな?』
話を黙って聞いていた黒ちゃんが、とうとう切れた。
「なっ!? 私にそんな口聞いて良いと思ってるの? 妖精が黙ってないんだから!」
『はぁ? 妖精? 好きにしろよ! 俺には効かねーし』
「なっ!」
二人は睨み合い、今にも殴りあいをしそうな凶悪な空気に。
「ねぇ黒ちゃん。もういいよ! 私は気にしてないから」
ーールチィが気にしてなくても、俺が嫌だ!
「ちょっと?! 何? 小汚い人族の子供のくせに間に入って来ないでよ!」
『小汚い? ルチィは愛し子だ! お前よりよっぽど優れたな!』
「なっ……! 愛し子? こんな小汚い娘が?」
『まだ言うか? このブス』
黒ちゃん。口が悪いよ。気持ちは嬉しいけどね。
「私の方が、こんな小汚い娘より立場が上よ! 愛し子だってランクがあるんだから!」
「え? ランク? そんなのあるの?」
私がキョトンと驚いていると。
ーー無いよルチィ。愛し子は妖精や精霊の数で、どちらが格上かの判断はするけどな?
白ちゃんが説明してくれた。
なるほど……妖精や精霊の数か。
「私の凄さを分からせてあげるわ! 勝負よ!」
「えっ……? コレはどーしたら良いの?」
ーールチィ、愛し子同士の勝負を挑まれたな! よしっやってやれ!
ちょっと黒ちゃん? そうなるように煽ったよね?
黒ちゃんがノリノリでやっつけろと言っているけど……私たいした魔法をまだ覚えてないよ?
「戦うって魔法でとか? 決着はどうつくの?」
どちかが倒れるまでとかだったらヤダなぁ。
ーーそれは妖精達の数だな。
えっ? 妖精達の数?




