獣人国の愛し子
お腹もいっぱいになり。
私達は今、色んな花が美しく咲き乱れている、綺麗な公園でのんびりと寛いでいた。
あの後、一旦借家に帰ろうかと思ったんだけど。
ガウディさんが「今、獣人国自慢の公園の花が満開に咲いていて、とても綺麗なので行って見ませんか?」
と言うので来てみたら!!
本当に凄かった……広い公園一面に色とりどりの色んなお花が咲き圧巻だ。
どこ見ても綺麗!
「……はぁ。綺麗、眼福」
「気に入って貰えてよかったです。この時期毎年訪れる大好きな場所なんです」
ガウディさんが嬉しそうに公園について語る。
『俺は初めて来たが、なかなか良いのう……』
ーー僕も初めてだよーこんな場所が獣人国にあるなんて。来てよかった。
皆も嬉しそう。
妖精さん達もこの場所には沢山いて、みんな楽しそうに飛びまわっている。
ーーあールチィ!
ーーどしたのー遊びきた?
ーー一緒に遊ぶー!
あっやばい……妖精さんが集まって来た。
「クッキーあげるから、また後で遊ぼうね。」
ーー分かったー
ーークッキーわーいー
ふぅ……危なかった。クッキーは役に立つ。
でもほんと綺麗……癒される。
ずっとこの場所でいられるよ。
私が知ってる花もあれば、初めて見る花もある。
綺麗だなぁ……。
ウットリと花を見ていたら、なんだか辺りが騒がしくなってきた。
どうしたんだろう?
まさか? 私の事じゃないよね? 妖精さんは周りにいないし……?
ーールチィ。何だか騒がしくなって来たよ。
「ねぇ白ちゃん? 私じゃないよね?」
ーーうん。それは違うね。これは……? もしや?
『ふぅむ? 妖精が騒がしく集まっておる』
シェラ様も、妖精さんたちの様子がおかしいと、何かを感じ取っているよう。
ーー獣人国の愛し子じゃないか?
ーーだよね? 黒もそう思う?
えっ!愛し子?
本当だ! 妖精をいっぱい引き連れた人が、向こうから歩いてくる。
ーーなぁ? コッチに歩いて来てないか?
「その様ですね……」
いち早く何かを察した黒ちゃんとガウディさん。
ーー変な事に巻き込まれると嫌だからな! 移動しようぜ。
「そうですね」
私達が移動しようとした時だった。
「おいっお前ら! さっさとこの場所から移動しろ! ここを愛し子様がご所望だ!」
大きな熊獣人の護衛が、大声で怒鳴る。
わかってるよ。大声で怒鳴らなくても移動するってば。
はぁ……もう、やな感じだなぁ。
なんて思っていたら、獣人族の愛し子様は目の前に居た子供達に向かって
「あら? ヤダ! 人族の子供がいるじゃない! ここはあんた達が来る所じゃないわよっ」
えっ!? そんな言い方……ひどすぎる。獣人国の愛し子様って、こんなにも性格悪いの?
「獣人国の二人いる愛し子様のひとりですね。この方は我が儘放題と噂で聞きました。拝見するのは初めてですが」
あまりにも態度が悪いので、私が動揺し驚きを隠せないでいると、ガウディさんが教えてくれた。ホント性格悪そう……。
「邪魔だ! 退けっ!」
急に護衛の熊獣人が、子供達を持ち上げ乱暴にほおり投げた!
「キャッ! なにするの?」
あまりにも酷すぎる!
私は慌てて子供達の所にかけよる。
ーーあっルチィ!
「大丈夫??」
声をかけるが、高い所から投げられて頭を打ったみたいだ。
子供は打ち所が悪かったのか、グッタリして動かない。
ーールチィ! 急に走って行ったらダメだよ!
私を心配した白ちゃんが、後を追いかけてきた。
「白ちゃん、この子たちを助けてあげて。何もして無いのにこんなの酷すぎるよ」
涙目で必死に訴えると
ーーはぁ……わかったよ。
《癒しの光》
眩い光が子供たちを包み込む。
ーーもうコレで子供たちは大丈夫だよ! 安心して。
「おい! お前らさっきから何をしている。愛し子様の邪魔だ、さっさと退け!」
なかなか移動しない私たちに、業を煮やしたのか、熊獣人がうるさく騒ぐ。
はぁ……いい加減腹が立ってきたよ。
「もー! うるさい! たとえ愛し子様だろうと、何もしていない子供たちを、傷つけて良い訳ない! この子供たちに謝れっ」
「なっ……この……人族の小汚いガキが、愛し子様に向かって偉そうにっ」
ーー何だこいつら? ムカつくな。
『我の可愛いルチィを小汚いガキとは……許せぬ、コヤツはどうやら死にたいらしい』
あっヤバイ!
熊獣人の発した言葉に、シェラ様と黒ちゃんがキレる
今にも何かしそうな勢いだ。
これはマズイ、絶対にヤバい。
腹が立つけども、ここは退散しよう。
そそくさと逃げようとした時。
「ちょっと待ちなさいよ! 人族の小汚い子供! 今のセリフは私に言ったのかしら?」
はぁ……もう嫌な予感しかしない。
「……そうですよ! 子供たちに謝って下さい」
「ふっ……何を? 人族の子供なんてすぐ死ぬのに、そんな命どーでもいいでしょ?」
何この人……見た目は猫耳が付いた、コスプレの人みたいな姿の愛し子様。
可愛いのは見た目だけで、中身は最悪だわ。
「あら? 貴方が抱いているのは竜の子供? 珍しいわね、それを寄越しなさいよ!」
何言ってるの? この愛し子。ワガママ言い放題だ。
「嫌です。この子は物じゃありませんから!」
「なっ……何をっ? 私に逆らうの? 人族如きが!」
私の言葉に、ワナワナと震え怒りを露わにする愛し子様。
もう気を使ってられないよ!
ケンカならうけてたつ!
「逆らってません。貴方の事が嫌なだけです」
「はぁぁ?! 何だって? この糞ガキが」
愛し子様が、地団駄を踏みキレる。なんか良く似た人が身近にいたような……。
「愛し子様に対して偉そうに……このクソガキが!」
「ふんっ。いいわっ私に偉そうに言った事、後悔させてあげる!」
えっ? 何する気? この愛し子。
ーールチィ? 何かされたら俺はやり返すからな! 手を出したのは向こうが先だ!
『俺もだ』
……ケンカっぱやい二人が今にもキレそう。
すると。
獣人族の愛し子が両手を天に翳して何かを祈っている。
「妖精達よ私に力を貸して! この愚かな者に天罰を……」
ーーえ~……
ーー嫌ー何で?
ーーヤダよー
「はっはぁぁ??!!」
妖精さんたちが全く言う事を聞かない。
獣人族の愛し子が、人前で見せたら絶対ダメな顔で驚いている。鼻水たれてるよ?
「なっ……何でよ? 今まで嫌なんて言った事なかったじゃない? ねっ、早く力を貸して!」
ーーだってー
ーー嫌だもんー
ーーねーやだやだー。
そう言って妖精さんたちは、何処かに飛んで行った。
「はぇ? なんで?」
「あははっ」
もうダメっ我慢出来ないっ
なに? あの間抜けな顔っ
「ギリッ……何笑ってんのよ?」
あっしまった! 笑ってんのバレちゃった。
ムキーッ!!
再び地団駄を踏む獣人族の愛し子。
「ちょっと! あの子供から早く竜を取ってきて!」
今度は妖精さんではなく、横の大きな熊獣人に命令した。
熊獣人が近くに来たっ!
と思った時……私は人型になったシェラ様に抱っこされてた。
「あれっ?」
『我を怒らせたな? 覚悟は出来ておるの?』
「「「「りゅっ竜人族⁉︎」」」」
いきなり現れたシェラ様に、周りの人達までビックリしている。
そりゃそうだよね。




