盛り上がってきたざまぁ
皆が静かに待っていると、適性検査の時に使ったような白い玉が運ばれて来た。
「さぁ聖女リディアよ、この宝玉に触れよ」
「はぁ……そんな事、何回したって私が聖女よ」
悪態をはきながら、義姉が玉に触ると……?
もちろん
まぁ当たり前だが、何も反応が起こらない。
「はぁ? 何よコレ? 壊れてるんじゃない? おかしいわっ!」
なにも反応がない事に怒り、義姉は貴重な宝玉をペシペシと叩く。
ちょっ……いくら反応がないからってそれはないんじゃ。身内ながら恥ずかしい。
『宝玉は壊れてなどおらぬ! お前に魔力がないだけだ! 証拠を見せてやろう』
「なっ……なんですって!?」
シェラ様に痛いところを突かれ、また地団駄を踏み金切り声で怒る。
そんな義姉の姿を、悪戯な笑みを浮かべながら見ているシェラ様。
シェラ様は私を抱っこしたまま宝玉の所にスタスタと歩いて行く。
『ルチィ? 触ってくれる?』
ええと……宝玉を触るのも抱っこされたままですか?
下ろしてくれそうな雰囲気が全くないので、私は抱っこされたまま、宝玉に触れる。
すると!?
パアアーーーーーッ
目も開けられない程の眩い光が、会場をつつむ。
その輝きはドンドン広がり会場の外にまで光があふれる。
「眩しっ……」
どれくらいの時がたったのだろう……?
やっと光が落ち着いたので、目を開けると。
会場にいた全ての人が、私に向かって手を合わせていた……いやいや神じゃないんだから! 拝まないでください。
そんな中、義姉の金切り声が響く。
「こんなのおかしい! 主役はわ・た・し! これは何かの間違いよ! ルチアにこんな魔力があるはずない!」
シンっと静まる空気の中、義姉だけがただ一人騒いでいた。
「女神を冒瀆するなんて不敬! その女を牢屋にいれよ!」
それを聞いた国王様が、義姉を牢屋にいれよと言うが、色々間違ってるからね? 私は女神じゃないよ?
『ちょっと待つのだ王よ』
「竜王様?」
牢に入れるのをシェラ様が止める、なんでだろう?
「やっぱり竜王様は私の事が……うふふ」
義姉が頬を染め、勘違いした事を言いそうになると
『五月蝿い黙れ!!』
「んんー!」
また義姉の口は引っ付いた。
『この臭い女はなぁ? ルチアから虐げられていると言っておった。ブクブクと肥え太ったこの女子をどーやったら、こんなにか細く可愛いルチアが、虐げれると言うのだ? ん? 民衆たちよ、教えて欲しいものだ』
シェラ様の言葉に、会場の人達から口々に同感の声が上がる。
『その女の姿を見よ! ギラギラの宝石をブタの首輪のように身に付け、平民上がりの男爵令嬢風情が、侯爵家のお金を湯水のように使った結果の姿よ!』
シェラ様の言葉に義姉が反応して、足を何度も踏みしめている。きっとブタと言われた事に怒ってるんだろう。
義姉と会場の温度差は凄まじく。皆が義姉の事を蔑んだ目で見ている。
そんな中、ノリに乗ってるシェラ様が話を続ける。
『ふふふ、この女にはまだ罪状があるのだよ! 連れて参れ!』
部下のヴィクさんとアレクさんが、義母と男の人を連れてきた。
義母の横にいる男の人は誰だろう?
『この女達は、洗脳と魅了の魔道具を使い、可愛いルチアを虐待に追い込んだのだ』
洗脳と魅了!?
『ルチアの父であるウィリアム・クロノス侯爵に対し、魅了と洗脳の魔道具を使い、城のお金を横領させていた』
「なっ……!?」
これには王様も、目を白黒させビックリしている。って言うか私も同じ気持ちです。
『その違法な魔道具は、その女の横に座っておる弟が作り、闇で売り捌いていた。探せば違法な魔道具を此奴らから購入した貴族もわかるだろう』
国王様は真っ青を通り越して真っ白だ。フラフラと立っているのもやっとなくらいダメージを受けている。
「なんと……恐ろしいことを……」
そうだったのか、私のお父様は洗脳と魅了までかけられていた。
だから御屋敷にも帰って来なかったし、あんな義母と再婚したんだ。
「ルチア!」
「えっ?」
名を呼ばれ、声のする方へ振り向くと……父が立っていた。
「お父様!」
「こんなに痩せ細って……すまない……ルチア! 酷い目に合わせてしまって。情けない父ですまない」
私を心配するお父様だって凄く痩せ細っている……。
「私はルチアの母マリンが亡くなってから後の記憶が、今日までないんだ。竜王様の部下の方が助けてくれ、何があったのか詳しく教えてくれた。怖い思いをさせてしまった……許しておくれ」
こんな感動の親子の再会も、私はシェラ様に抱っこされている。
国王陛下は余りの出来事に、青ざめプルプル震えたまま。これ以上ダメージ与えたら、倒れちゃうよ。
『まだあるぞ? お主の息子、第二皇子は魅了の魔道具がつけられている』
だけどシェラ様の追い込みは止まらない。
「なっ!? 今なんと……!?」
『息子を我の前に連れてこい』
シェラ様が第二皇子の前に手をやる。
パリンッ!
すると……皇子の手から黒い固まりが落ちてきた。
虚ろだった皇子の目が、正気になる。
「あれっ? 俺は、何でここに……?」
急に大勢の前で正気に戻り、訳が分からないといった様子で、キョロキョロしている。
その後皇子は、義姉と婚約していたと聞き、倒れそうになっていた。
ププッいい気味。
義母、義母の弟、義姉、は牢屋に入れられ、後で罪状を後で決める事になった。
そして私はと言うと、お父様と屋敷に帰り、今後についての話合いをする事になった。
もちろん
当たり前の様に竜王様もついてきた。