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ざまぁのスタート

『ルチィ? 俺は何の茶番劇を見せられてるんだ?』


 シェラ様がそう話すと、人々が一斉に振り向き、私たちを見る。

 シェラ様の姿を見た人達は、ギョッとし慌てて両端の壁に移動するとすぐさま跪く。

 国王陛下までの一本道が、一瞬で開けた……凄い、さすが竜王様。


『お主が今代のゲイリー国の王か? 確か前に会った時は、お主が八歳くらいだったか? 随分と見目が変わってしまったな。ハハハッ』


 国王様を軽くあしらってる……良いのそんな態度? 大丈夫なのかなと、私が困惑してると、国王様は玉座から慌てて飛び下り跪いた。


 ええー!


「りゅっ竜王様!! 私の事を覚えてくれて?! 感激です。わざわざ来城して頂けるなんて! 本当にありがとうございます」


 うわぁ……一番偉い国王様が涙目で、頭を床に擦り付けるかのごとく、土下座してる。


 ふと周りを見渡すと、国王様と同じように皆頭を下げて、土下座してる……。


 竜王様の力ってこんな凄いの? 知らなかった。


 すると……この空気を読まない義姉が、シェラ様に気付き瞳を輝かせる。


「まぁっ! んまぁ! 竜王様まで私の聖女認定のお祝いに来てくれたんですね!」


 頰を赤らめた義姉が近寄ってきた!


 まだ私に全く気付いてない。


「何て美しいお顔、こんなに綺麗な人が竜王様なんて!!」


 義姉がシェラ様にスリよって行こうとした時、やっと抱っこされている私の存在に気付いた!


「なっ……何であんたが!? 竜王様に抱っこされているのよ! 離れなさいよっ!!」


キィーッ


 義姉が地団駄を踏み癇癪を起こす。これがまた五月蝿くて仕方がない。


 いやね? 私だって離してくれるんなら離して欲しいよ? こんな登場の仕方は想定外だよ。


『五月蝿い! お前は臭くてたまらん! 近くに寄るな』


 ブッッ……急に臭いとか言われて、義姉は目をまん丸にしてビックリしてる。


「なっなっ? 何を言っているの? あっ……分かったわ、竜王様はその女に騙されているのね?」


「この嘘つき女は、聖女である私を虐げていた悪女なんです! こんな嘘つき女から離れて下さい竜王様! そうよ、良い事思いついたわ! こんな女は牢屋の囚人達にくれてやれば良いのよ!」


 おいおい義姉よ……調子にのって何を言い出すんだ。


『ルチィを囚人に? 許さぬ!』


 義姉の言葉に、私よりシェラ様の方が怒っている。


『ルチィを汚したその口、閉じよ』


 シェラ様がそう言うと、義姉の口はボンドで引っ付いた様に閉じて開かなくなってしまった。


 義姉はウンウンと必死に何か言ってるが、口が開かないので全く喋れない。


『ルチィが嘘つきだと? 嘘つきはお前であろう? おい、国王よ? こんな魔力もない妖精にも嫌われているような臭い女が、聖女だと? この国も終わったのう?』


 急に魔力もない、聖女じゃないと言われ、国王様は目を見開きビックリしてる。

 集まった人達もザワザワと騒ぎだした……。


「なっなんですと?……魔力がない? りゅっ竜王様! それはどう言う事ですか?」


 国王様が真っ青な顔で質問する。そりゃそうなりますよね。


『その女には魔力がないと言っておる! 人族には見えんだろうが、妖精に嫌われている奴に魔法は使えん』


「そそっそんな……適性検査で聖魔法と出たのですぞ?」


『ククッそれはな? 我が抱いておる、このルチアこそが妖精の愛し子であり聖女なのだ!』


「いっ……愛し子?」


 シェラ様があまりにも説明を端折るので、国王様が理解に困り首を傾げる。


 その様子を見たエルフ族のガウディさんが、色々と察して王様の前に出た。


「ここからは私が説明させて頂きますね? その女は、愛し子ルチア様と同じ屋敷に住んでいるので、たまたま適正検査の時にルチア様の魔力が反応したのかもしれませんね? ルチア様は全ての魔法適性がありますので」


 国王様はガウディさんの説明を聞き、シェラ様に抱っこされている私を、泡を食らったような顔で見る。そんなに見ないで下さい。


「人族は魔道具が無いと魔力が見えないみたいですが、我々エルフ族や竜人族は魔力が見えますので」


 たまたまでは無くワザとだけど……そこはガウディさん誤魔化してくれてる。


「でっですが……」


 国王様は信じたくないのか、まだ疑っている。そりゃそうだよね。五十年ぶりの聖女誕生だもの。


「疑うのであれば、今一度検査してみたら如何でしょう?」


 ガウディさんがそう言うと


 義姉が足をダンダンとさせ、何かを言いそうだ。


 その姿見た竜王様が、少しニヤリとしたと思ったら……。


「何言ってるのよ! ルチアが聖女?そんな訳ない! 私が聖女に決まってるでしょ? 主役はわ・た・し! そんな事も分かんないなんて、国王も馬鹿なんじゃない? あっ? えっ?」


 馬鹿な義姉が自爆していく。


「ワシが馬鹿じゃと……?」

「えっ? イヤそのっ……急に喋れるなんて、あの……っ」

「無礼な聖女め! もし竜王様達が言う様に偽物だったら……ワシを侮辱した不敬罪! 聖女偽証罪! などで牢屋行きじゃっ!!」


 二人のやり取りをニヤニヤしながら見ている竜王様。


 絶対……竜王様わざとだよね?

 ザマァ私より楽しんでない?


「聖女をもう一度、皆の前で検査するのじゃ!」


 国王様の声が、会場に響き渡った。

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