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妖精の愛し子


 王城に着つくと、皆が余りにも煌びやかで……今の自分の姿は分不相応に思え、私は会場には入らず、中庭にある薔薇が綺麗に咲きほこる庭園で白ちゃん黒ちゃんと座っている。


ーールチィ? 嫌なら帰ろうよ!無理に聖女認定式に行く必要ないよ!


「白ちゃん……ありがとう」


 正直……余りにも凄すぎて帰りたい。でも帰ると義姉がキーキーうるさく後から何かしてくると思うと、その対応も面倒で……。


 あーあ……こんな大事になるなら、義姉を聖女になんかしなかったら良かったな、と少し後悔する。別の方法もあったんじゃないか……とマイナスな事ばかり考えてしまう。


ーールチィ? もうここでお花見して家に帰る?


「フフッ。黒ちゃんそれもいいね。ここの薔薇はすごく綺麗」


 妖精さん達も、キャッキャウフフと楽しそうに遊んでる。


 可愛い。癒される。


 大きく息を吸い込み深呼吸して……はぁーっ。


 よしっ! 嫌な気持ちも何処かにいっちゃった。


ーー!ルチィ!!


「えっ?」


 突然黒ちゃんが叫び、私の前に立つ! 私は何が起こったのか理解できない。


 だって……急に私の目の前に、エルフ族の超絶綺麗な人が立っていたのだ。男? 女?


 エルフ族……初めてみた。

 なんて綺麗なんだろう。腰まであるサラサラの髪の毛が煌めき眩しい。こんな髪色をプラチナブロンドっていうのかな。


 ポーっと見惚れていると、エルフ族の人が口を開く。


「聖女が現れたと聞き、面白半分で人族の国に来てみたら……何と愛し子様に会えるなんて! 私は感動です」


 美人なエルフ族の人はそう言うと、騎士のごとく私の前に跪いた。


「えっ?! ちょっ何?」


ーーおいエルフ、これ以上近づくなよ?


「もちろんです。聖獣様、あの……こちらの愛し子様は?」


ーー俺たちの主人だ!


「聖獣様を従える愛し子様!!」


 ちょっと待って!? エルフ族(この人)、白ちゃん黒ちゃんの姿が見えるの!? それに二匹と話をしてない? 声まで聞こえるの? うそでしょ……!?


「愛し子様は人族なのですね。人族から愛し子様が誕生するなんて初めてのこと! しかもこの妖精達の数……圧巻です」


 さっきからエルフ族の人は、私に向かって愛し子(いとしご)と言っている。それは何?


「あの? 白ちゃん? このエルフ族の人は、何を言ってるの? 愛し子様って何?」


ーー愛し子(・・・)ってのは、妖精に好かれる人の事! この世界は妖精に好かれないと魔法が使えないだろ? 沢山の妖精に好かれれば、それだけ強い魔法が使える。


ーーそうそう。それに妖精が沢山いる場所は、それだけで栄えるからね。愛し子となれば、何処の国も喉から手が出るほどに欲しい存在だよ。


「えっ!? そんな話今まで一度も……」


 動揺し目を白黒させる私に、さらに黒ちゃんが、追い討ちをかけるように話す。


ーーそりゃそうだろうな、人族は妖精の姿が見れる奴なんて皆無だ。だから愛し子の事も知らない。 


「そうなんだ……」


ーールチィが愛し子って事は、もう少し大きくなってからしようと思ってたんだ。


「私が、愛し子……!?」



ーールチィほど沢山の妖精に好かれている愛し子なんて中々居ないない。ヨダレが垂れるほどに美味い魔力もな。


 ちょっと……黒ちゃん? 最後の一言は何? 人を食べ物みたいに。


「そうなんです! 凄い数の妖精がこの場所に集まって居たので、気になって急いで飛んできたのです」


 エルフ族の人が、少し興奮ぎみに早口で捲し立てる。


「愛し子様に聖獣様にまで会えるなんて感動です!」


 そう涙目で話すエルフ族の人。  


 その姿をへぇーっと、どうでも良さげに見ている二匹。

 なんだろう温度差が、だいぶありますよ?


 そんな空気も読まず、グイグイと興奮気味に話を続けるエルフ族の人。




 エルフ族の人が、教えてくれた話をまとめると。

 愛し子は現在、獣人族に二人、エルフ族に一人居て、竜人族には愛し子が居ないとの事。

 人族は、今回の私の誕生が初めてらしい。

 愛し子の存在は貴重で、そこに居るだけで国が栄えるので、どの国もとても大切に大事にする。

 愛し子を怒らせて滅びた国もあるほど、だから愛し子は大切に尊重しないといけない。

 愛し子に何かしたら大問題になるとか。


 あれぇ? 私、大問題になるくらい虐げられてなかった?


 さらには、どの国でも愛し子の位は、王様と同等の立場らしい……


 愛し子……凄すぎだわ。


「普段なら、私など愛し子様と話をする事さえ皆無……今回この様な機会を偶然頂き、感動しております」


 そう言って深々と頭を下げる。

 エルフ族の人は、私を愛し子様とウットリと崇め奉るので、ちょっと恥ずかしい。


「そう言えば自己紹介がまだでしたね。私はエルフ族の宰相をしております。ガウディと申します。

あの愛し子様、お名前をお聞きしても宜しいですか?」


 このエルフ族の人、宰相なんだ! めっちゃ立場偉い人じゃん。


「ルチアです」


「愛し子様、お名前を教えて頂きありがとうございます。ルチア様とお呼びしても?」


「いいですよ」


「ありがとうございます。愛し子ルチア様、人族は愛し子様の事などわかりません。この様な国に居るのは、愛し子様の為にもなりません。我がエルフ族の国に来ませんか?」


 いきなりエルフ族の国に来いって言われても……私が少し困惑していると、黒ちゃんがエルフ族の人を睨みつけた。


ーーおいエルフ? それはルチィが決める事だ。お前が決める話ではない。この話は二度と言うな!


「はっ! これは失礼しました」


 黒ちゃん、ありがとう。急にエルフ族の国に来いって言われてもね。


 何て考えてた時!!


 急に後ろから羽交い締めされる。


『……見つけた!! 我が番……』


「えっ!?」


 私はいつの間にやらスッゴイ美男子に、抱っこされてた。


 何? 何が起こったの?

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