黒猫マリーの1日
何で猫が色んな事知っているかとかは、気にしないでお読みください。
猫視点で読んでもらえると、より楽しい……かもしれません。
この物語は、フィクションです。
需要あるかな?
「ふにゃああああ~~~~~~」
あら。
ごめんなさい。
つい欠伸が出てしまったわ。
人様の前で、大きくお口を開けてしまうなんて。
でも許してちょうだい。
連日の熱帯夜と、お家の周りでやっている道路工事がうるさくて、最近寝不足気味にゃのよね。
そのせいで、昨日だって12時間ぐらいしか寝れてにゃいのよ。
猫は、16時間は寝ないといけにゃいのに。
寝不足は、お肌の大敵だって、うちのご飯係りがいつも見ている四角い『テレビ』が、言っていたのをあたしは、知ってるわ。
見てよ。
あたしの御自慢の黒い毛並みが。
誰が見ても、「綺麗だね」という艶が、いつもより悪い気がするわ。
サラサラの、ツルツルを維持するのに、毎日毎日隅々まで舐めているというのに。
これは、ご飯係りが帰ってきたら、ブラッシングを念入りに頑張ってもらわにゃいといけにゃいわね。
「……ふにゃあああ~。にゃ~ん……」
…………。
にゃによ。
勝手に喋っている、自分語りをしているあたしは誰だって?
そこのあなた。
よくぞ聞いてくれたわね。
あたしは、誇り高き日本猫で世界一可愛い黒猫よ。
ご飯係りがいつも丸く握った『おにぎり』に巻いている海苔よりも漆黒の毛に、ご飯係りがいつも食べてる『トマト』と同じ色の首輪と、それにくっついてる「チリン」と鳴る、鈴をつけてる、まさしく可愛さ世界一の黒猫よ。
大事な事だから、二回言ったわ。
人間の中で、流行っているんでしょう?
流石あたし。
物知りね。
そんな可愛さ世界一のあたしの名前は、ご飯係りに勝手に『マリー』とつけられたの。
最初は嫌だって、「にゃ~ん! にゃにゃ!!」言ったんだけど、ご飯係りは、猫語が分からないみたいで、あたしが喜んでるのと勘違いしたみたい。
そんなわけで、あたしの事は、尊敬を込めてマリー様とお呼びなさい。
ちなみに、年は二歳の女の子よ。
元野良猫だったから、正確な誕生日は覚えてにゃいけど、4月が誕生月よ。
ああ。
プレゼントは、来年の3歳の時になった時に貰うわ。
分かってると思うけど、あたしが欲しいのは、煮干しや、チュールや、かつお節、銀の何ちゃらね。
間違っても、人間が喜ぶ物は贈ってくるんじゃにゃいわよ?
そんなもの貰っても、あたしはちっとも嬉しくないし、そんな物じゃ、あたしの好感度は上がんにゃいわ。
それでも、嬉しくもない物を贈ってくる人がいたら――――あたしの研ぎ澄まされたこの爪が炸裂するわ。
毎日、念入りに家の木の柱で鋭く研いているんだから。
切れ味は抜群よ。
だから、あたしには逆らわない方がいいわよ?
分かった?
「にゃ~ん」
それは、ともかく。
ご飯係りは、貧乏で滅多に高級な『テレビ』で流れる様な高級猫食材は、くれにゃいのよね。
ほんとう甲斐性にゃしで、困るわ。
どうせなら、お金持ちのお家に行きたかったわね。
あたし達猫族や、ワンワンうるさい犬族だって、どうせならお金持ちの所で住みたいもの。
でも、最近『テレビ』でも言ってたけど、動物虐待する人がいるみたいね。
何でそんな事をするのかしら?
あたし達だって、命があるのに。
「にゃにゃ~ん」
あっ。
家のご飯係りは、あたしに暴力を振るったりは絶対にしないわ。
逆に、いつもご飯係りがしつこく抱っこしてくるから、必殺の猫パンチをしているぐらいだしね。
あたしの猫パンチは、速いわよ。
まさしく、目にも止まらぬ速さだわ。
でも。
ご飯係りは、あたしがたまにご機嫌斜めな時に爪で引っ掻いちゃっても絶対に怒らにゃいのよね。
顔は『イケメン』なんかじゃなく普通で、三十代の彼女もいない甲斐性無しだけど、とても優しいわ。
買い物に行ったら、色んなオモチャを買ってきてくれたり、色んなオヤツも買ってくれるもの。
とても大事にしてくれてると思うの。
寝るときは、いつも一緒だし。
夏は暑いから、近寄ったら猫パンチだけど、冬は寒いから一緒のお布団に寝ると、とても落ち着くの。
だから。
あまり、ご飯係りの事を悪く言うと、あたしの爪が炸裂するわよ?
あれでも、ご飯係りは優しくて撫でかたも上手だし、喉元を撫でられると、つい「ゴロゴロ……」と、無意識に鳴っちゃうのよね。
「…………ふにゃふにゃ。にゃ~む」
さーて。
自己紹介も済んだことだし、これからどうするかしらね。
ご飯係りは、朝7時過ぎにお家を出て、お日様が落ちてから帰ってくるの。
だから、それまではあたし一匹にゃのよ。
朝ご飯も、もう食べたし。
お昼寝する前に、少し運動でもするかしらね。
よく猫は、だらけていると言う人達がいるけど。
食っちゃ寝ばかりしていたら、ブクブクお腹にお肉がついちゃう。
だから、こうしてお家の中を走り回ったり、カーテン登りをしたり、猫タワーを最速で駆け昇る。
そんな運動をしているの。
え?
外に出て、他の猫達と遊べばいいって?
それは出来ないわ。
ご飯係りは、お外には出してくれにゃいのよね。
鍵がかかってて、出れにゃいの。
あっ。
これは、別に動物虐待って訳ではにゃいわよ。
お外には、車もビュンビュン走って危ないからってご飯係りが言っていたわ。
あたしも……正直言っちゃうと、お外は怖いの。
車に弾かれちゃうかもしれにゃいし、何たって、お外にはあたしと同じ黒色で「カアッカアッ」と鳴く意地悪で、大嫌いなカラスもいるから、別にお外に出れなくてもいいの。
でも、お外を眺めるのは好きよ。
毎日、窓台にジャンプして、お外を見ているの。
たまに、野良猫が通りかかって、お話もするけど、他のお家の猫事情も大変みたいね。
最近は、『コロナ』だかのせいで、他の家のご飯係りが、お家に居ることが多くなって、猫達は、ストレスを溜めてしまっていると言っていたわ。
我が家のご飯係りは、お家で出来るご飯代稼ぎは出来ないから、毎日、毎日出掛けて、『会社』とかに行っているけど。
「……にゃーん。にゃーん」
別に、寂しくはにゃいのよ?
ほんとうよ?
「ふにゃああ~あああん……」
あなたとお話ししていたら、また眠たくなってきたわ。
それじゃあ。
あたしは、お昼寝するから。
あなたは、あたしのプリティな寝顔を見ているか、『スマホ』で遊ぶなり、して寛いでいてちょうだい。
(ФωФ)(ФωФ)(ФωФ)
「ふにゃあああ~。…………にゃむ。にゃ~」
あら。
夕陽が、差し込んでるわ。
もう、夕方ね。
本当に、毎日1日が経つのは早いわ。
あなたも、まだいたのね。
1人で暇だったでしょう?
え?
あたしの寝顔が可愛すぎて、見ていても飽きなかったって?
あら。
あなた分かっているわね。
あたしの隠している煮干しをあげようかしら。
そう言えば、夢の中に、ご飯係りが出てきたわ。
手には、めったにくれにゃい、シーマーだかを持っていたわ。
これは、もしかして、正夢というやつにゃのかも!
もし、本当に買ってきたら、ご飯係りのポイント高くなるわ。
あたしのご機嫌も良くなるってもんよ。
つい、スリスリしちゃうわね。
そんなあたし想いなご飯係りを迎える前に、お顔を洗おうかしら。
あたしは器用だから、両手を使えるのよ。
凄いでしょう?
あたしも女の子だから、いつでも綺麗でいたいのよね。
「にゃにゃ!」
よし。
完璧ね。
あとは、ご飯係りが帰ってくるのを待つのみよ。
今日は、どうやって遊んであげようかしら。
あたしが猫ジャラシで遊んであげると、喜ぶのよね。
ご飯係りが投げた毛色の玉を咥えて持ってくると、それはもう大喜びなのよ。
この毛色の玉は、あたしの大好きなオモチャの一つなのよね。
そうね。
今日の予定は決まったわ。
「…………にゃん」
早く帰って来ないかしらね。
あまり、レディを待たせるものではないんだから。
「…………ふにゃああああ~ん」
シーン
「…………にゃん……」
静かね。
あたししかいないお家は、静まりかえっている。
ご飯係りもいないし、いつもうるさくてお昼寝を邪魔する道路工事は今日はお休み。
「…………」
いつも1人っきりでも、どうってことないのに。
今日は何でか、寂しいわね。
早く帰って来ないかしら。
レディーを待たせるなんて、どうしようもないご飯係りなんだから。
でも。
家の中も暗くなってきたし、そろそろしたら。
ガチャッ!!
あたしの予想通り。
ピクリッと。
あたしの耳が、ご飯係りがいつも出ていく玄関から物音をするのを察知したわ。
そして、あたしの大好きな声が聞こえた。
「マリー。帰ったよー」
この声は、ご飯係りの声だわ。
仕事だか、何だかしらないけど、いつも疲れた声ばかりだけど。
その中にも、温かさを含んだ大好きな声。
「にゃ~ん♪」
こんなにあたしを待たせるなんて。
一匹にするなんて。
本当にしょうがにゃい人にゃんだから。
今日も、スリスリとゴロゴロの刑ね。
覚悟しなさい!
「にゃ~ん♪ にゃにゃ♪」
あたしは玄関に向けて歩き出した。
お読み頂き、ありがとうございます。