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パッキングされた保存食一食分を分けてもらいました。

 小麦粉、卵、砂糖、酒、蜂蜜、植物油を仕入れました。

 

 まずはザラメを錬成しましょう。

 素材はカラメルと砂糖です。

 カラメルは予め鍋で砂糖を煮立てて作ります。

 カラメルと砂糖を錬金釜に投入し、かき混ぜます。

 大して魔力を注ぐ必要もなく、ザラメが出来上がりました。

 一旦ザラメを錬金釜から取り出しておきます。

 

 そうしたら小麦粉、卵、砂糖、酒、蜂蜜、植物油を錬金釜に投入し、かき混ぜます。

 魔力を注ぎ、混ぜること小一時間。

 香ばしい香りがしてきたらザラメを投入します。

 そして軽く混ぜ、完成です。

 

 新しいお菓子はカステラです。

 

 スタンダードというかシンプルなカステラなので、これでシルビーナが満足してくれるかは分かりません。

 ウチはお菓子屋さんじゃないので、ライバル認定なんてしなくてもいいのにね。

 ひとまず味見をした結果、問題ないので商品ラインナップに加えることにしました。

 

 カステラは砂糖を含むため素材費がかかりますけど、〈加速の魔法陣〉が必要な天然酵母が不要なため、銀貨一枚で売ることができます。

 クッキーとカステラで人気が分散してくれれば、魔法陣を描く時間を節約して読書に当てられるので、新しいお菓子は意外と有益なのではないかと思いました。

 

 * * *

 

 クッキーを買いに来たお客さんにカステラもオススメしてみたところ、あれよあれよという間に新作お菓子の情報が拡散していきます。

 女性の甘味に関する興味関心は凄いですねえ。

 

 私はクッキーもカステラも美味しく食べられますけど、実は素朴な水飴や金平糖、ベッコー飴や麦チョコなどの駄菓子が好きなのです。

 錬金術で作ろうとすると逆に手間がかかって難しいんですよね、駄菓子。

 迷宮都市の市場にも駄菓子屋さんがあるので、ちびちび〈ストレージ〉に補充してあります。

 もちろん王都にいた頃に溜め込んでいた分もあるので、私の駄菓子ライフは充実しているので何も問題はありません。

 

 さあ、今日はもうお店を閉めて読書の時間を楽しみましょうかね。

 

 そう思って表に出ると、数人の冒険者たちが店の前にやって来たところでした。

 

「評判の錬金術師とは、お前のことか?」

 

「はい、この工房の錬金術師のフーレリアと申します」

 

「俺様はアルベリク。この迷宮都市の中では最強の冒険者だ」

 

「はあ」

 

 仲間たちはアルベリクを一旦引っ込めて、申し訳無さそうに口を開きました。

 

「すみません。こいつ、こんな性格なんですが悪い奴じゃないんです。今日はお願い……依頼があって来たんです」

 

「冒険者が私に依頼ですか?」

 

 ポーションなどは薬屋で買えばいいし、お菓子を買いに来たようにも見えません。

 冒険者が錬金術師に直接、依頼をしにくるとは一体?

 

 仲間たちを押しのけてアルベリクが身を乗り出しました。

 

「俺様たちのために美味しい保存食を作れ」

 

「保存食、ですか。ちなみに今はどんなものを召し上がっているのですか?」

 

「干し肉とドライフルーツ、後は硬パンだ」

 

「なるほど。実物があるならサンプルとしていただきたいのですが」

 

「そうだな。味が分かった方が良いだろう。……これだ」

 

 パッキングされた保存食一食分を分けてもらいました。

 

「依頼の報酬の相場が分からん。どのくらいの時間がかかって、どのくらいの金が必要になるのだ?」

 

「そうですねえ……新規商品の開発ということで、出来上がった商品を購入していただければそれで構いませんよ。できればご同業の方々に宣伝もしていただければありがたいです」

 

「そんなことでいいのか。良かろう。では依頼したぞ」

 

「出来上がったらどこに連絡しましょう」

 

「冒険者ギルドの受付に伝言しろ。俺様宛てに伝言すればそれで伝わる」

 

「アルベリクさんでしたね。分かりました、美味しい保存食を作ってみせますよ」

 

「ふん。期待はしておこう」

 

 ふんぞり返るアルベリクを、再び仲間たちが引っ込めました。

 

「すみません。口が悪いんですけど、ウチのパーティのリーダーでもあるので……。依頼の件、よろしくお願いします」

 

「はい。承りましたよ」

 

 立ち去る冒険者たちを見送り、私は手元に残った保存食をためつすがめつします。

 

 どんな味がするんでしょうね?

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